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播磨陰陽師の独り言・第二百八十四話「ミジンコの卵」
そろそろ壺池の季節となりました。ここ数年、庭に放置していた壺池は、落ち葉が積もって水中で土になりかけ、そのため、メダカも水草も死に絶えてしまいました。生き物が死に絶える主な原因は、酸素不足です。水草すら光が当たらず分解してしまいました。
そこで、水を入れ替え、新たに水草を入れて作り直しました。これからミジンコを入れて水を浄化する訳ですが、今年は卵を入れることにしました。いつもなら、生体をネットで購入して水槽に入れています。卵の方が保存もきいて、扱いやすいです。
ミジンコは不思議な生き物です。普通の状態ではクローンしか産みません。メスが単体でメスを産みます。オスも産まれますが、単にいるだけです。産まれてから七日で大人になり、また自分のクローンを産むのです。七日ごとに七倍も増える計算になります。
そして、増えすぎて環境が悪くなると、突然、全滅します。その時、雄と交配して卵を産みます。これを保存卵と呼びます。保存卵は水の底に隠れて、環境が良くなるまで保存されています。時には、水がなくなって、乾燥した状態でも何年も保存され続けます。今回、買うのはこの保存卵です。
さっそく注文すると、お弁当に入っている醤油入れのような入れ物に入った液体の中に、保存卵が見えました。保存卵を水の中にふりかけると、あら不思議。じわじわとミジンコが湧いて出ると言う訳です。そしてミジンコたちは、日光を浴びて水を浄化し、どんどん増えて、水槽の環境を整えてくれます。ただし、横からの光に弱いので、透明な水槽では活躍出来ません。メダカの餌にもなりますが、メダカは貪欲でないので、絶滅するほど食べません。わが国の小川や池は、ミジンコが住んでいるから良い環境になっています。ほとんど目に見えない小さなミジンコが大きな働きをして、国全体の環境すら整えてくれている。そう思うと不思議でしかありませんね。
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