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祈りのカタログ・第八話「神国の誤解を解く」

 前回は、
——わが国は神国である。
 と書きました。
 誤解があるといけませんので、神国のことを、もう少し書いてみようと思います。
 われわれの国のことを〈神国〉と呼ぶと、傲慢な感じを受ける人もいるかと思います。戦時中の〈自国を称した言葉〉としてしか、認識しない人もいるかも知れません。しかし、そうではありません。
 この〈神国〉の本当の意味は、
——神が開き守護してくれている国土。
 と言う意味なのです。
 国開きの神々が、わが国の国土を開き、人の住める土地にしてくれました。国を守る神々が国土そのものを守ってくれているのです。
 国土をいじる時には、必ず〈地鎮祭〉と呼ぶ挨拶の儀式が行われます。
 国土は、元々、神々のものです。個人が所有して勝手なことをするなど、とんでもないことです。その理由によって、あちこちに祠《ほこら》があり、様々な神が祭られているのです。
 山の神や川の神などの様々な神がいるのだから、
「失礼があっても許しておくれ」
 と、気持ちを込めて、
「山の神さん、のいとくれ。川の神さん、のいとくれ」
 と、子供達が祈るのです。

 祠や木々の中には祟りのあるものも多く、道路の方でそれらを避けることがあります。
 大阪の神山町には、道の端に木が残されています。昔は、道路の方がくねっていて、道が木を避ける形で作られていました。何度か区画整理がありました。今は道路の周りの建物も整理され、道路が避けるよに、まっすぐになった道が伸びて、その端に祠と木が残されています。
 玉造には道の真ん中に木があって、道路がその両側に、くねくねと避けたように、作られているところがあります。
 普通の都市計画では、設計上の問題によって道路や建物の位置関係が決められます。しかし、そんなことは神々には無関係なのです。
 古い祠を壊したり、移動したり出来なかった場合、祠は新しく出来た建物の上に残ります。多くのビルの上に祠があるのは、そのためです。
 どこか高いビルの上に登って町並みを眺めてみると……特に関西では……ビルの屋上のあちこちに古い祠が残されています。祠の種類は多岐に渡ります。それこそ狐から狸、道祖神から家神まであります。そして、まだまだ意味の分からない神たちが、各々、幾重にも祭られています。これらは種類も種別も違いますので、それぞれ祈り方も違ってきます。
 祠に多い道祖神は〈いちきしま姫〉と呼ばれる女神のことです。この女神は九州の宗像神社に祭られている神です。別名を〈道の塞《さえ》の神〉と言い、邪悪の侵入を防いだり、旅の安全を守ってくれる神となりました。この神は縁結びの神としても知られています。

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