不幸のすべて・第三話「長生きと家」

　長生きをすると言うことは、簡単に言うと、長く息をすることです。
「そんなことは言われなくても分かっている」
　と、おっしゃるかも知れません。しかしそれは、長い年月を生きて、ずっと息をして来たことなのです。これは長寿と繁栄を意味しています。長生きの人は、それだけで尊敬されました。長い年月を、苦難を乗り越えて生きて来たのですから、やはり、尊敬に値すると思います。
　また、長生きは、ひとつの息そのものが長いことも意味しています。息が長いと心は落ち着いて体調が整います。心が落ち着かなければ、長生き出来るものではありません。
　長く長く息が出来ると言うことは、長い時間、息をし続け、この世界に存在し続けることです。その長い間に子供時代を過ごし、成長し、大人になり、やがて結婚して子を成し、その子がさらに成長して、かわいい孫が産まれる人生を送ることでしょう。そのサイクルを、ずっと体験することが（幸福〉なのです。
　一方、息が浅いと心は落ち着きません。悩んだり困っている人の息は浅い傾向を持ちます。運命が悪く寿命の短い人は、やはり息も浅くなります。そして息が短くなり続け、やがて息の根は止まるのです。息の根が止まる……嫌な言い方ですね。これは死を意味する言葉です。