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不幸のすべて・第四十一話「祭礼をいたしましょう」
節句の由来が書いてある『金烏玉兎』と呼ばれる古い陰陽師文書の続きです。その文章の最後の部分には、
——総じて、神祭り、仏事、法例、皆、ことごとくこれ、この祭礼を学ぶものなり。憎みても憎むべし巨旦が邪気残族。信じても信じずべし牛頭天王の部類。
と書かれ、八王子の各々の名前が並べ立てられます。そして、
——ならびに蘇民将来が子孫なり。
で、この文章が終わります。
厄除けには良く〈蘇民将来の子孫なり〉と書かれています。それはこの古い陰陽師文書に基づいたものです。
五節句以外の祭礼としては六月三十日の〈夏越の祓い〉が有名です。これは毎年、六月の晦に大祓祝詞をあげて祈る祭礼です。
一般では神社の鳥居付近に〈茅の輪〉を作り、それを潜ります。
また、神社によっては人形《ひとがた》に息を吹きかけたり、体を撫《な》でたりして厄を祓う儀式を行います。古くは世界の中心とされる場所で朝日と共に大祓祝詞を唱えたようです。その祝詞が終わる頃には周囲の神社で唱え出し、順番に周囲に大祓祝詞が広がって行き、日が沈む頃には日本全国で祝詞をあげ終わっていたようです。今はそのような風習はありません。
ここで意味する世界の中心とは、いったい、どこでなのでしょうか?
播磨陰陽師に伝わる伝承では、
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