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播磨陰陽師の独り言・462話「兎の気持ち」

 一月の十一日でペットの兎が一歳になりました。生後二ヶ月で飼いはじめたので、家に来てからも、すでに一年になります。この一年間で一番値段が高く、しかも、買って良かったものが兎です。
 時々、家で眺めていると、兎の気持ちを考えることがあります。
——果たして、兎に、人のような心はあるのだろうか?
 とか、思うこともあります。
 甘えて来て、手にすがり、足にすがって来る時は、
——人と同じだな。
 とも思いました。
 呼ぶと、無視しているのか、じっとこちらを見て動かなくなります。
 兎は全力で走ると、時速65キロに達するそうです。まさしく〈脱兎のごとく〉と言う感じです。しかし、速く走れるのに、普段は全力で風景に溶け込んでいると言います。
 それを聞いて、
——だから、動かないのか。
 とも思いました。まったく動く姿を見せない時があるのです。まさしく〈微動だにしない〉感じです。
 そんな時でも手を近づけると、すぐに寄って来て、
——頭を撫でろ。
 と言わんばかり。
 乾かしたリンゴの皮を与えると、とても喜んで噛みつきます。その瞬間だけ、野生の生き物のような素速い動きになるのです。
 前に飼っていた兎は、バナナが好きでした。バナナをあげると、お尻を振って喜びます。しかし、今の兎はバナナには反応しません。何か食べ物ではないものを与えられたように無視するのです。

 北海道の実家の隣りには親戚が住んでいました。この家は外で兎を飼っていました。小屋のサイズは測ってはいませんが、確か二十畳くらいの広さだと思います。元々大工さんの作業場だった場所の半分を兎小屋にしたので、そのくらいの広さでした。ここでは十羽以上の兎を飼っていました。夕方になると、伯母が餌をあげていました。その頃は、兎の顔の見分けがつかなかったため、
——たくさんの兎だなぁ。
 くらいにしか思っていませんでしたけど。

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