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祈りのカタログ・第十七話「難しくはありませんよ」
最近は〈場〉のことをフィールドと呼ぶようです。〈場〉について辞書で引くと、
——ゲシュタルト心理学における基本的な概念のひとつ。各部分が相互につながりを持った全体構造として動物や人間に作用し、その知覚や行動の仕方・様式などを規定している力として考えられた状況。
と書いてあります。
ゲシュタルト心理学……うわぁっ聞いているだけで難しそうですねぇ。
こちらの言葉をやはり辞書で引くと、
——精神現象を個々の感覚の要素的集まりとする要素心理学に反対し、精神や意識を単なる要素の総和に解消されない形態(ゲシュタルト)として見る立場の心理学。形態心理学と言う。
と書いてあります。これも何だか小難しい表現ですね。
——辞書の表現は、どうしてこんなに小難しいのだろう?
とか、辞書を引く度に常々思ってしまいます。
さて、
——各部分が相互につながりを持った全体構造として動物や人間に作用し、その知覚や行動の仕方・様式などを規定している力として考えられた状況。
とは、どのような状況なのでしょう?
この日本語はかなり難しいかも知れません。
最初の、
——各部分が相互につながりを持った全体構造として……。
とは、そうですねぇ、たとえば、
「何人かの演奏者が音楽を奏でるような状況だ」
と思って下さい。
そこでは何人かの人々が……五人にしましょうか……おのおの楽器を手に持って、
「さぁ、演奏だぁ」
とばかりに勢い付けて……この時のこの五人の楽器は各々の演奏者と一体になり、まるで自分の体の一部のように使えるのです。仲間たちと気が合いますので、いつ誰が音楽を鳴らしはじめても全体が演奏し出すのです。
——各部分が相互につながりを持った全体構造として……。
とはこのような状態です。
次に、
——動物や人間に作用し……。
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