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播磨陰陽師の独り言・第三百四十八話「お盆と言えば」
お盆と言えば、その昔、テレビで『あなたの知らない世界』が流行っていたなぁ。まだ、ブラウン管のテレビしかなく、あの、端っこが歪んだガラスの画面の中に、怖い物語が展開していました。
最近のフラットな液晶テレビより、ブラウン管の方が怖い話に適していると思います。見ていると、怖いシーンで自分の顔が反射し、ドキッして幽霊と勘違いしたりもしました。
貞子さんもブラウン管のテレビから出て来るから怖い感じがするのであって、液晶のハイビジョンから出て来たら、何だか間抜けに感じます。
今更ですが、『あなたの知らない世界』のオープニングは、京都化野念仏寺だそうです。はじめて京都へ旅行した時は、まず化野へ行きました。
あちらこちらに、
——写真撮影はご遠慮ください。不審なものが写っても責任は負いません。
と言うような張り紙がたくさん貼ってありました。不用意に撮影すると、心霊写真になるそうです。本当かどうかは知りません。しかし、何か怪しげなものが写りそうな雰囲気でした。わざわざ試して不幸になりたい方は、ここで写真を撮ってください。あくまでも自己責任で……。
さて、テレビの『あなたの知らない世界』は現実の霊現象よりも怖い感じがしました。演出が効果的なのでしょうか? 現実の霊現象は、それほど恐ろしい出来事ではありません。むしろ、つまらないことの方が多いです。
怪談話はお盆に似合っています。しかし、実際は、冬でもいるところにはいるんですよ。何も暑苦しい真夏に限らなくても、いつでもいるところにはいます。ただ不活性化していて……つまりは寝ていたりすることも多いです。
そう言えば、ホラー映画に登場する貞子さんも怖いですね。あの映画が流行ってから、世の中の亡霊は貞子さんスタイルばかりになってしまいました。亡霊は、人間が見て怖いと思う姿に化けるので、皆、貞子さんのようになってしまった訳です。昔は、もっと様々な姿がありました。どの姿の亡霊も種類はさほど変わりません。事故で亡くなったり、誰かに殺されたりして亡くなった人が、いわゆる地縛霊となって、現場近くをさまようのです。しかし、これらの全てがさまよう訳ではありません。この世に思い残すことがある場合のみ、亡霊の一種である地縛霊として、姿を見せるのです。
強い恨みがあると、亡霊のひとつ上の位である〈悪霊〉となります。怨霊は、もうひとつ上の位です。さらに上の位は御霊と呼ばれます。しかし、普通の肝試しなどで出会う霊は、せいぜい悪霊止まりです。普通の暮らしをしている者が怨霊に出会う確率は極めて低くなります。それよむしろ〈魔物〉の類に出会う方が多いですが……。
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