播磨陰陽師の独り言・第三百三十八話「ホラー映画のこと」
夏が来れば思い出す……ホラー映画。
私の故郷では、夏の時期になると、普段はポルノばかりやっているアングラ映画館が、一斉にホラー映画を上映しました。お盆にお祭りを見に行くと、通り道に看板をかけるのです。その看板の怖さと言ったら、どんなものよりも怖かったような気がします。子供の頃は看板を避けて歩いたものです。不幸にしてか、幸いにしてか、一度もそれらのホラー映画を観たことはありません。
しかし、最近、昔の日本のホラー映画を見ることがしばしばあります。夏の時期だからか、YouTubeで配信されているのです。
昔、看板で見ただけの『怪談蛇女』だとか『怪猫呪いの沼』や『怪猫からくり天井』など、中川信夫監督などのホラー作品が配信されています。
この頃のホラー映画と、最近流行りのホラー映画の違いは演出にあると思います。昔のものの方が、大袈裟で怖そうな雰囲気があるので好きです。
死体なんかを描く時、昔の作品に出てくる死人は青白いメイクで苦悶の表情をして横たわっています。しかし、最近の作品の死体は、肌色のまま無表情で寝ている感じしかしません。へたをすると息をしているのが見えたりして、
——これは死体の役なのだろうか?
と首を捻りたくなります。
死んでいる人が肌色のままなど、おかしな話です。
また、照明もリアルに自然に当てているため、暗すぎて見えないことも多々あります。昔の作品だと、突然、青いライトを当てて、死後の世界の雰囲気を表したりしています。
霊に悩まされる方も癖のある役者さんを揃えていて、なかなか見応えがあります。
最近のは、事務所の力関係でしょうか?
A○B48とかに代表される演技力の乏しい女の子ばかりがキャーキャー騒ぐだけで、何だか興醒めな気がします。出てくる怨霊も同じような雰囲気ですし、本物とも違う感じがします。多くは白塗りの、舞踏家のような動きをする役者さんで、見ていると、霊的な何かと言うより、友人の舞踏家さんたちのことを思い出します。
昔のものは、くどいメイクで怖さ満点な感じです。もちろん、本物とは違う雰囲気ですが、本物よりも怖そうな演出で出てきます。
子供の頃は『四谷怪談』とか最高に怖かった思いがあります。本物の亡霊より怖かったなぁ。
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