ベルという犬
ベルという犬を飼っていた
保育園を卒園する間近
ベルは現れた
ちっこい真っ白な雑種で
保育園に紛れ込んできた
園児達は勝手にポコだのブチだの名前をつけて
戯れていた
けど
誰もベルの面倒はみなかった
まあ紛れ込んだ野良犬
当たり前なんだけど
誰がこの犬を飼う?
というかこの犬どうする?
って話になって
当時、同じ園で働いてた母親に
白羽の矢がたった
当時家では
チョコって名前の猫を飼ってた
この子も
俺が茂みの中に捨てられてたところを見つけて拾ってきたかわいそうな猫
チョコは全然ひとになつかなくて
いっつも家の外にいた
名前を呼んでも来た試しがなかった
でも
ベルを飼うことになって
チョコは手放そうという結論になった
めちゃくちゃ悲しかった
初めてのペットだったし
譲り渡したんだけど
悲しすぎて嗚咽した
そんなこんなで
小学1年になる手前にベルはうちにきた
元々家の中で飼ってたけど
俺と戯れまくって
暴れすぎて毛も抜けるわ歯が折れるわ
庭で飼うことになった
ベルはマジで落ち着きがなくて
しょっちゅう失踪した
どっかの牛農家で見つかったりもした
ベルは最強だと思ってた
いうこと聞かないし怪我させるし
かわいいっていうか弟みたいだった
家は転勤族で
やたら引っ越しをした
そのたんびにベルは新しい土地で
多分嫌だったと思う
元々福岡のど田舎に住んでたから
庭もデカかった
でも急に横浜に引っ越すことになって
その時の10分の1くらいの狭い犬小屋で生活せざるを得なくなった
ストレスも溜まってた
で、俺は調子乗った小学校高学年
めっちゃ嫌われた
散歩行こうとするとぐるるるってめっちゃ威嚇してくる
そんな時期を過ごして
また新しい土地に引っ越すことになった
今度は少し広い庭があった
それでも福岡出身のベルには
なんて自由のない場所だろう、って感じだったと思う
中学2年の時また横浜に引っ越した
また狭いとこにいっちゃってさ
ふざけんなって思ってただろうな
高2の時
今の実家がある町田に引っ越した
もうその時にはおばあちゃんで
おとなーしくいつもの定位置で頬杖をついてる
でも、俺や家族が帰ってくると
嬉しそうに尻尾を振ってた
19歳の時
ベルは死んだ
突然だった
痙攣しだしてその時脳みそに傷がついちゃったらしく
寝たきりになった
その後間もなく
息を引き取った
今、凄い後悔してるのは
俺は出先でその連絡がきたから
死に際に会えなかったこと
ちっこい威勢のいい迷い犬が
ひょんなことから家に来て
喧嘩して
嫌われて
小さい島国の
小さな町を連れ回されて
死んでいった
何を思ってたんだろう
悔いはないのかな
いい人生だったのかな
もっと可愛がってあげればよかったな
可愛がるってなんなのか
分かんないけどさ
触られるのも嫌だったかもしれないし
でも
散歩行くよって言うと
舌を出して
口角が上がったように見えるんだ
笑ってるような
会いたいな
いつかね
そっちで
また会えたら
嫌がられても愛でるよ
って
何気なく来てみた
昔住んでた横浜に来て
思い出したから書いてみた
ベル
ps まだ首輪で散歩してる人へ、それ良くないらしいから肩輪?ひたいなのにしてあげて
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