Side Kicks! ―プレイレポート
不要不急の外出禁止期間中ですね。皆様いかがお過ごしでしょうか。
いい機会なので積みゲーを倒そうと躍起になっているものの、振り返る時間が減ってきたのでこれはまずいと筆を執りました。カリンと申します。
先日、バスタフェが面白かったので、バスタフェスタッフさんが手掛けていたというサイドキックスで遊んでいました。
このノートは、プレイ当時にこんなことを思いながら遊んでいたんだなっていうのを後日読み返すことを目的とした備忘録です。
★ Side Kicks!(サイドキックス)
2017年3月23日にeXtendから発売されたPS Vitaのソフトです。
また、この機会にサイドキックス!のアートブックも開けていますので、本編以外の話もちょいちょい混じっています。
※これ以降のノートは、ゲーム本編のネタバレを多く含んでいる内容となっています。ゲーム本編未プレイの方、未クリアの方が読む際は、予めご了承ください。
★ 全体的な所感
*物語の全体を通して「サイドキックス」というキズナの深さが伺える。新人のイノリちゃんの視点から、サイドキックスというチームにユーザーも自然と馴染むことができる。そしてサイドキックスの一員にならなければ決して味わえない物語だった。
*キャラクターたちが活躍する「サクラダ」という緻密な世界観が楽しめる。行きつけの店や人気の番組等、イノリちゃんの周囲を形成する描写が丁寧なので、「サクラダ」という街のリアリティを感じることができる。そうだ、飛行機に乗ろう。
*ヒロインの「イノリ」ちゃん、イントネーションは「みかん」とか「からす」ではなく「りんご」とか「つばめ」と同じなんですけど、どのキャラクターも同じイントネーションで統一されていたところが個人的に好感度がとても高い……。
*ごはんが……ごはんがすごく、おいしそう……
*総評すると、バスタフェと同じくサイドキックスは「スタッフさんの愛とこだわりがこれでもかと詰まった」ゲーム。最高ですありがとうございました。
★ チカルートについて
出会い頭の一言が「なんなんだ、こいつ。頭大丈夫か」。
最近、ヒロインちゃんのファーストインプレッションが悪いキャラほど、あとは評価がうなぎのぼりになるだけなんだという法則に気づきはじめました。
余談ですが、バスタフェを先にプレイした自分が初めてチカを見たのはバスタフェのSS「間違い電話」だったことになるのですが、どちらも印象がよくないという意味では全く同じ……。
イノリに対してぶっきらぼうだったチカが、対人スキルが不得手なキャラクターなんだなと思う頃には、だいたいチカルートのチカの行動に予測ができるようになりましたとも!
チカルートは作中で最も好きなシーンがありまして。
記憶喪失のチカがイノリに予知夢の能力に関して「君はどうして笑っていられるの?」に対して答え合わせをする場面で
「怖いの。怖くて仕方ないの」
というイノリに対して
「本当は怖くて仕方ないんだ」
と、お互い同じ怖さを抱えていると分かった瞬間でして!!
二人とも、望んでいるのは平穏な日常で、それでも二人とも怖いと思いながら理想を追い続ける者同士なのが……一番近い場所にいるなと思った瞬間でした……すき。「ずっと隣にいてほしい」っていうのが、同じ場所を一緒に歩いていく未来が最高にかわいい。
あと、サクラダフェアを読み返していて気付いたんですけど、記憶喪失のチカが、記憶があるチカとは対人のコミュニケーション方法が異なるだけで、実は中身がまったく変わっていないっていうところが、実に「うまい」なと。
記憶があるときもないときも、サイドキックスのメンバーから一歩引いて「馴染めない」と思っていたチカと、だからこそ一人暴走列車して単独で解決しようとするチカに対して、イノリがそれでもしつこく傍にいることが絶対必須条件だったんだなぁ……。
イノリちゃんが尻込みすると、バッドエンドで再び同じトラウマを味わうことになるっていうのもとてもやばかったです。
最後に。これはサイドキックスとは関係ないのですが、
人が人を殺して許される理由ってあると思う?
という問いに答える選択肢がチカルート中にありまして。
この選択肢は正解は存在しない選択肢だったわけですが、この問に関して明確に自分の意見を述べるキャラクターがバスタフェに存在するんですよね。
もちろん、それぞれのキャラクターごとにこの問いに関する答えがあるはずなので、バスタフェの答えが正解というわけではないと思います。
ただ、バスタフェのキャラクターと同じように、チカにはチカの正義があり、チカルートはそれを改めて見つめ直す良いルートだなと思いました。好きなんですよ。
★ シシバルートについて
過去に有名ハッカーとして活動していたことや、サイドキックスのメンバーにそっけない態度をとっていたことから、ブラックヒーロー的なポジションに落ち着くのだろうかと思って心配していましたが、蓋を開けてみればまごうことなく信頼できる癒し枠でした。よかった!
他の誰でもなく自分を愛して欲しいという欲求に、他の誰でもなくあなたでなければならないという答え合わせをし合う二人最高にかわくないですか?
おかげさまで、お互いに「好きあっている」という気持ちを確信できないまま、お互いに告白の言い逃げみたいになっていたもどかしい状態が微笑ましいですね。「好かれている。だから、好き」ではなくて「他の誰でも代わりはきかない、けれど君が好き」。熱烈な想いがこもっているのに、自信がないせいで逃げ腰の告白になっているのころ、そういうところがかわいい。
シシバにとって、イノリがいなくなったら探すよっていうのは比喩表現でもなんでもなく、才能とあとサイドキックスのキズナで取り戻してくれるところが、シシバの魅力だと思うんだ。
★ リコルートについて
あまりにも眩しくてあまりにもサイドキックスの太陽で、バッドエンドだったり諦めてしまうことがないようにひたすら祈り続けていたのがリコです。
サイドキックスのことが大好きだと言っているリコが、「だけど、イノリはみんなより特別に好き」という表現で愛を告げるところがずるいと想います。
リコルート中でもっとも印象に残っているのが
「僕を一人にしないでね」
のセリフで、賑やかな様子が好きで兄のリツが大好きなリコだからこそ、今度こそ置いていかれたくないという執着が強いのでは?? などと考え泣きそうになったものです。これに対するイノリちゃんの答えが「ずっと傍にいる」だったのが、
あとこれは余談ですがリコルートだと、作中で
「ヒバリが女の子の家に行くときは手土産にワインかシャンパンを持っていくのが常識って言っていた」
とか
「女の子が大事な話をするときはだいたいはバイバイするとかだってヒバリが言ってた」
と、チラチラとリコからヒバリさんの影を感じることがあり、ヒバリさん何してるんですか?? ……と、ずっと思っていたら、まさかの『ヒバリに【大人の男の嗜み】を教わっている』というプロフィールを見かけて愕然としました……大人の男の嗜みとは……。
★ ヒバリルートについて
ルート中、何度かVitaを投げ出しそうになったヒバリルートです。
スチル取得だったりエクストラ取得だったりのために何度か周回しましたが、バッドエンドの条件を確認した瞬間は本当に投げました。
特に理由なく、好きな飲物をルートをやり直す度に順番に変えていたら、「イノリちゃんはミルクティーが好きなんだね」と急にフラグを回収してきた繊細さにびっくりだし、またあるところでは「イノリちゃんは紅茶が好きだからハーブティーも好きかと思って」と、実はコーヒーも好きですとは言えないように追い詰めてくるところも、芸が細かすぎて戦慄しました。
でも一番ずるかったのが「Note」の留守番電話だと思うんですよね。実は本編に夢中になっていてまったく気付かなかったのですが、こういうところがずるい人だと思います。
信じることに臆病になって、自分のスキルを必要以上に信じて、上辺だけのキレイなお付き合いしかしてこなかったヒバリが、イノリちゃんの真っ直ぐさに触れていくうちに、心から笑えるようになったところが、ずるいんですよね。
★ ノラルートについて
記者なのに嘘が嫌いで、家柄が良いのに誰も信じずに用心深いという、深く知れば知るほどパーソナリティーが不思議なキャラクターでした。
イノリちゃんがサイドキックスに馴染んだ頃合いに攻略できるようになり、初めてイノリちゃんがサイドキックスメンバーに後ろ暗い気持ちを持ちながら恋愛を進めていくというのが衝撃的でした。これはたしかに、この順番じゃなきゃいけないなと。
嘘が嫌いなノラが本当に欲しかった「本当」を、イノリちゃんの中に見つけたいっていう告白だったり、嘘が嫌いなノラが吐いた嘘がイノリちゃんを助けるためだったりする、そういうところにノラの誠実さとか愛とかを感じます。
あとこれは余談なのですが、イノリちゃんというサイドキックスの仲間を守るためにノラに刃を向けるチカが大変好きでして。
自ルート以外でも、こういう一面を発揮してくれる仲間は最高だなぁ……。
★ タテワキルートについて
年の差(※鳴き声)。
恋愛どころではないルートでしたが、しかしそれでもサイドキックスで一番の新人で、つい先日まで普通の女の子でしかなかったイノリちゃんの真っ直ぐさに、タテワキがメロメロ(※死語かもしれない)になっていくところが本当にかわいかったですね。
イノリちゃんはイノリちゃんで、ずっと大事に持っていた「休日にやりたい10のこと」を忘れず手元に持っていて、実践しようとするまっすぐさが大変かわいらしいです……エクストラストーリーのイノリちゃんが、いつもよりちょっと背伸びした格好でいたのが大変大変微笑ましい……。
最後のスチル、イノリちゃんの歓迎会の集合写真でしたが、プレイ当時は全員勢揃いの写真はスチルが欲しい!! と思っていたので、この爆弾付きの演出でスチルを載せてくれたことに感謝するやらボロボロ泣いてしまうやらでしたね……。
★ クルミちゃんが好きだという話
初見からかなりタイプなクルミちゃんだったんですけれども、作中に惚れ直したところがいくつもありまして。
最初、クルミちゃんとイノリちゃんはまだ仲がいいとは言い難い関係だったのにも関わらずイノリちゃんの代わりに誘拐されたときに、クルミちゃんは「どうして私がアンタの代わりにならなくちゃいけないの」という子じゃないんですよね……。 むしろアートブックを見る限りでは、「どうしてイノリちゃんのような覚悟を決められなかった一般人が誘拐されなければならないんだ」という気持ちがあって。
ああ、これがクルミちゃんの根幹で、紛れもない警察官なんだなと思い知らされるわけです。
そもそもクルミちゃんが警察官を志すようになったのは、誘拐ではないけれど「行方不明」になった友人の件が切っ掛けですものね。
アートブックを読むと、生まれがサクラダでサクラダ署にお勤めしているのが作中だとイノリちゃんとチカ、そしてクルミちゃんの三名だけだそうなので、やりたいことがきっととてもはっきりしている子に間違いないと思っています。そういうところが最高にかわいい……。
★ 「サイドキックス」が好きだという話
罪悪感を抱えながら生きているチカと、人付き合いの経験が人よりも多くはないシシバ、一人ぼっちになることを怖がっているリコと、人を信じることに臆病になっているヒバリ。それにおそらく一生、自分を許していないであろうタテワキ。
それぞれみんな瑕を抱えた者同士で、おそらく個々人のみで能力を発揮させようとしたらここまでのパフォーマンスは生まれていなかった彼らが、サイドキックスという場所に特別な想いを抱いているというところがですね……この作品で、一番好きなところです。
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