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だから私はメイク道具で絵を描いてゆくよ

その日、Sりんの顔は少しだけ曇ってました

理由は、お目当ての作品に会えなかったから
彫刻家、田島たかおきさんの展覧会に行ったけれど、そこに「歩く桜」は無かったから

↓ちなみにこれです

困った顔、寂しそうな顔、残念そうな顔
誰かの曇った顔は、私の行動のスイッチになる
それが友達の顔ならなおさらね
しかもけっこう強めのスイッチ

だからその後、私はず〜っと考えてた
Sりんが笑顔になること、何か無いかなって

展覧会場にいたときも
そのあと本屋さんをぶらぶらしたときも
一緒に食事したときも
ホテルに戻る電車の中でも

で、ひょいと浮かんできたの
ホテルのベッドに腰掛けてほっとした途端に

「歩く桜」を絵にして渡すってどう?

緊張しているときより、気持ちがゆるりとしている時の方が、アイデアって浮かぶね

じゃあ今から描こう
描いてSりんに渡そう
ところで...何に絵を描く?
紙、紙、紙...

この部屋にはメモ用紙が無いのね
私のバッグに紙なんて入ってないし
紙、紙、紙...

あったー!お財布の中に大きめレシートがある
レシートの裏に描けるわ~

プレゼント用に描くのにレシートの裏ってどうなの?
とは1ミリも思わず、いそいそ描き始めた私

黒ボールペンで輪郭を描いて
ちょっと言葉も添えたりして...
我ながらいい感じ

ん~、色が付いてないのはサビシイな
色、色、色...

あったー!口紅とアイブロウが使えそう
紙も皮膚も似たようなものだしね(ん?)

実際、絵の上に口紅やアイブロウを置いてみると
顔にメイクしているような気分

普段使いのメイク用品だから落ち着いた色合いで
優しい印象の一枚が出来上がり

こちらでございます↓

お、おん...
という声が聞こえてきそうだけど
描いた本人は嬉しくて嬉しくて
明日、Sりんは、この絵を見たとたんニコっと笑ってる
そんな姿を思い浮かべながら、私は深い眠りについたのです

翌日のSりん
期待通りの微笑みを返してくれました
めでたし、めでたし


...ではなく、むしろこれからが始まり

翌日、友達のBからこんな申し出が
「ねぇ紫乃、仕事で使ってたアイシャドウのサンプルがあるんだけど、良かったら絵に使わない?」
「古くなったら捨てるしかないの」

え?昨日の私をどこかで見てたの?
アイシャドウ!
絵具でも色鉛筆でもなく、アイシャドウで絵を描くのって面白そう~
前の晩、メイク用品で絵を描く楽しさを知ってしまった私の返事は、もちろん「使う!」

見てるだけで楽しくなる色とりどりのアイシャドウと口紅をたくさんもらいました

で、使ってみて分かったこと
アイシャドウも口紅も、紙の上に塗ると色は淡い
特にアイシャドウは「ふんわりと色づく」くらいの濃さ
色の種類は限られていて、ビビッドに色づくものはほとんどない

それじゃあ描ける絵は限られる?

答えはNO

この色が無ければこの絵は成立しない
なんてことはなくて
使える色やトーンが限られているから
作者の想像を超えた絵が生まれる

メイク用品を使って描く絵は制限があって楽しい!

これをコスメアートって呼んで、もっと描いてみよう

というわけで、これからぼちぼち描きます
描いてここに載せます

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