脱社畜サロン騒動 サロン運営陣から見た景色
広告とまったく関係のない領域に踏み込んでしまっていて、フォロワーの方々にはご迷惑をおかけしています。
ですが、色々な意味ですごく重要なイベントだと思うので斬り込んでいこうかと。
現状Twitterを観察する限り、イケハヤさんに対する反感が優勢になっているように見えます。かくいうぼくもその立場なのですが、一方でサロン運営陣の対応も全く理解できないわけではない。
渦中のイケハヤさんも正田さんもビジネス歴は長い方々なので、完全に的外れな態度はとりません。彼らには、彼らなりの大義があるのです。イケハヤさんはなぜ、色々な人を敵に回してもなお主張を固持するのか。
こういった炎上騒動は劣勢側の意見が耳に入らなくなってしまうことが多いと思うので、本記事では見過ごされている彼らの主張を、当事者の発信を引用しつつまとめていきたいと思います。
ことの経緯をまとめると以下の通りです。
2つの問題が同時並行的に進行している点にご注意ください。
問題1:正田圭さんのプロフィール虚偽疑惑
えらいてんちょうさん(Twitter)が、サロン運営者である正田圭さん(Twitter)の「2〜3桁億円をメインとしたM&Aコンサル会社」というプロフィールに虚偽があり、実際にそのような実績は事実無根なのではないのではないかと主張。
これに対し正田さんはTwitter上で回答。その内容は、「実績はないが現在同額程度で取り扱っている案件はある」と主張。正田さんの会社の監査役である山田真哉さん(Twitter)もこの主張を支持する証言をしており、取り扱い案件の存在自体は信頼できるものだと考えられます。
この回答に対するえらいてんちょうさんの主張は「『2~3桁億円をメインとしたM&Aコンサル会社』という表示は、すでにそのような額の実績を複数持っているような印象を与えるものであり、権威性をアピールするための誇大広告なのではないか」というもの。正田さんの「決めたとは言ってない」という回答に食ってかかる内容ですね。(回答を踏まえて主張がやや弱まっています。ここポイントです)
この後正田さんは、経緯を観察する限り一時はプロフィールの修正を検討しているようですが、最終的には「開き直り」の路線に舵を切ります。具体的には、アカウント名を「正田圭 / プロフ盛ってます」に変更。「盛って何が悪いんだ」と煽っていくスタイルです。
一見、常識を欠いたありえない対応に見えますが、文脈を見ればこれもわからないことはない。後ほど解説します。
問題2:イケハヤさんのサロンメンバー除名対応
上記のプロフィール虚偽疑惑に対して疑問を抱いた脱社畜サロンのメンバーが一人。これがいしかわさん(Twitter)でした。彼はサロンの交流の場であるFacebookの会員制グループ内に投稿し、この疑惑について運営陣に説明を求めます。彼が提示した論点は2つ。①「正田さんが2-3桁億円のM&Aを行った証拠はどこにあるのか」と②「サロンの創設者であるイケハヤさん(Twitter)はなぜ正田さんの経歴を信頼しサロン運営に招き入れたのか」です。時間軸でいえば、正田さんの一度目の回答以前のことです。
イケハヤさんの回答は「そもそも疑う理由がない。怪しい人とはそもそも仕事をしない。それ以上の説明はない」というもの。(まあ正直、これはかなり苦しいですね…)
①の質問を無視していますが、企業の守秘義務もあり回答できる内容も限定されるため、一次対応としては妥当なものといえるでしょう。
回答に納得できないいしかわさんは、自身のTwitterアカウントでこのやりとりを公開。脱社畜サロンを糾弾する立場を取ります。
これを受けてイケハヤさんは、いしかわさんをサロンから除名。Twitterもブロックします。
その後、田端信太郎さん(Twitter)がこの対応を不当であると訴えます。
また、脱社畜サロンの主要メンバーであるけんすうさん(Twitter)もこの件に言及。対応に不備があったのではと呼びかけます。
一方のイケハヤさんは対応の見直しを拒否。意見を跳ねのけつつ、サロンを通常運用に戻す意向を固めています。
1/13 10:00現在、客観的に見て、正田さん・イケハヤさんの立場はかなり弱まってきているように見えます。状況が継続する場合、サロンの集客や運営進行に支障をきたし破綻してもおかしくない。
正田さんはなぜ不遜な対応をとったのか。また、イケハヤさんはなぜこのような状況になってもなお頑なに意見を変えないのか。
その理由をいくつかの論点から探っていきます。
まず、正田さんのプロフィール問題について。
論点1-1:グレーゾーンな経歴詐称
ひとつめの論点は、正田さんのプロフィールは本当に詐称といえるのか、という点です。
以下、えらいてんちょうさんがTwitter上で行ったアンケートの結果です。
嘘つきである(詐称といえる)という回答が9割近くを占め、世の中の総意は「詐称である」という見方に傾いているように見えます。
一方で注意したいのは、このアンケートには強いバイアスがかかっているという点です。
まず、このアンケートがえらいてんちょうさんのアカウント上で行われていること。加えて、それ以前に「このプロフィールは虚偽なのではないか」というえらいてんちょうさんの一連のツイートがあったこと。
これらは、「詐称である」という回答に聴衆を導くものであるといえそうです。
正田さんのプロフィールを見て「嘘というほどではない」という見方も散見されます。(かくいうぼくも、感覚的には糾弾されるほどの嘘ではないと思っています)
サロン運営陣の認識はどうか。
正田さんは、自身では判断がつかず一度は客観的な見識をあおいでいますが、最終的に自身で「嘘とはいえない」という判断を下しています。
イケハヤさんも、この件については「嘘ではない」という認識です。
ぼく自身の判断軸をもって「このプロフィールは嘘とはいえない」と断じるつもりはありませんが、少なくとも、嘘かどうかのグレーゾーンに位置しており、運営陣は「嘘とはいえない」という認識をもっていることは留意すべきと考えます。
なお、彼らが謝罪を拒むもう1つの理由に「教義が揺らぐから」というものもあります。指導者としての立場上、気軽に意見を変えることはできないのでしょう。
論点1-2:「ツイッタープロレス」の文脈
「指摘があった時点で正田さんは真摯に対応すべきだった」という見方がありますが、正田さんがこの件について謝罪しなかった理由の1つに、えらいてんちょうさんの指摘がプロレス的(挑発的)であったことが挙げられます。
一方の正田さんは炎上商法でおなじみのイケハヤさん陣営。「炎上の波を乗りこなして名を売ってみたい」という意向はあったようです。
こういった経緯が「売り言葉に買い言葉」の状況を生み出していました。
ちなみに、「えらいてんちょうさんはもっと穏便に問題点を指摘するべきだったのでは」という考え方もあるのでしょうが、これは一理ある反面、若干ピントがずれています。後述しますが、えらいてんちょうさんには大義があって、あえて事態がおおごとになるような挑発的な言い方をしているのです。(もちろん、彼自身の芸風によるところもありますが)
論点1-3:えらいてんちょうさんの指摘内容の変化
先述の「問題1」で述べたとおり、えらいてんちょうさんの指摘は「正田さんの経歴は事実無根なのではないか」から「正田さんのプロフィールは誇大広告なのではないか」に変化しています(厳密にいえば他にも細かい指摘があるのですが、単純化すると)。
イケハヤさんは、この指摘の変化をあまりはっきりと認識できていないように思います。
断言しますが、後半のえらてんさんの主張はデマではありません。そう言い切れる理由は、「決定済みのM&A実績が存在しない」ということを正田さん自身が認めているからです。
前にも述べましたが、この事実は「正田さんのプロフィールは嘘である」と主張する根拠として少し弱いと思います。しかし、少なくともデマではない。
イケハヤさんの視点から見れば、イケハヤさんを糾弾している人々は「デマに踊らされている」ように見えるようですが、実際には彼らは具体的な事実を根拠として批判しています。
ここに、認識の食い違いがありそうです。
つづいて、サロンメンバーの除名問題について。
論点2-1:サロンメンバーの除名理由
この点、イケハヤさんの主張があまり広まっていないように思います。
イケハヤさんの主張として、除名の理由は「運営陣に逆らったから」ではなく「サロン内情報をスクショして外部公開したから」とのことです。
無論、この行為が除名理由として妥当なものなのかについては議論の余地があります。また、「実際にサロン内が多様な意見を生み出せる環境ではない」という内部の声もあります。
それらについては問題点を指摘することも有意義と思いますが、単純に「運営陣に異を唱えたサロンメンバーを除名した」という事実だけを切り取ってイケハヤさんを糾弾してしまうと、彼から見れば「デマに踊らされたアンチ」に映ってしまうわけです。
論点2-2:えらいてんちょうさんの行動原理に対する誤解
サロン運営陣から見ると、えらいてんちょうさんが「他人の足を引っ張るため」もしくは「自分の書籍を宣伝するため」にこのような騒動を起こした、という見方をしそうですが、そうではありません。彼には彼の大義があります。
私はインターネット有名人の友達がいません。イケハヤさんとかにすぐ噛み付いてしまうからです。喧嘩をしてしまうのです。地道に仕事をしてるひとを馬鹿にすんなよ、と。
落合さんや堀江さん、堀江さんと西野さんとかが共著なんか出してますが、一切そういったつながりはありません。すぐ「地道に働くひとをバカとかいうなよ」という気持ちになってしまうからです。たぶんおかしいやつ扱いなんだと思います。
彼は2つの風潮を批判しています。
①会社員として真面目に働く人を否定することで成り立つマーケティング
②過剰演出により権威性を大きく見せることで成り立つマーケティング
これ、インフルエンサーサイドから見ると「誤解されてるな」と感じる部分とやましく感じる部分の両面があるのではないかと思います。
とはいえです。
イケハヤさんは「ネットの当たり屋」と揶揄しましたが、えらいてんちょうさんは決してインフルエンサーの失脚を嘲笑いたい愉快犯ではありません。
今回の一件も、前向きにサロンビジネスの健全化を求めた活動だったわけです。
(それを踏まえてやり口が適切だったかといえば、議論の余地がありますが…)
論点2-3:イケハヤさんの炎上商法と決め打ち発信論
(わかりきってるとは思いますが…)イケハヤさんが態度を変えない最大の理由がこれ。彼は「自分の主張を曲げない」ことで生き抜いてきたという成功体験があるのです。
「時代の先駆者は旧い価値観の人間から叩かれて当然」という見方。これ自体は、多くの人が納得できるんじゃないでしょうか。言い換えれば、「今は叩いている人も時代の移り変わりとともに自分が正しいと理解してくれる」と言っているわけです。
ただしこの考え方は、彼の描く未来が「人々が向かいたい未来」と一致して初めて成立するものです。
今回の一件、どうなんでしょうか。
言っていることはわかる。そういうトレンドは確かにある。
でも、彼の言う「社会がクラスター化し、『わかる』人同士で付き合う未来」、ちょっと気持ち悪いですよね。自分と意見が合わない人は全てシャットダウンする世界。ドラえもんの「どくさいスイッチ」を彷彿とさせます。
本当にこんな未来が来ると確信していいんだろうか? もし来ようとしているのなら、運命を捻じ曲げてでも全力で食い止めるべきなんじゃないだろうか?
もう一点。
わかる。確かにその通りだ。
これに近い話が、彼の2013年の著書『武器としての書く技術』に登場します。
※ アフィリエイトは貼ってません。さすがに。
優れた物書きは、世の中の割り切れなさに延々と向き合い、自分なりの答えを見つけつつも、断定的に語ってしまう自分に違和感を抱き続ける人です。
これ読んだとき、かなりグッときたんですよね。
つまり、行動を決断するためにあえて断定的なことを言っているだけで、心の内では悩み続けているってことなんですよ。
このことは、イケハヤさんを叩く人たちにぜひ知っておいてもらいたいことでもあるし、イケハヤさん自身に再度思い返してほしいことでもあります。
他人の意見をブロックして関係性を断絶していく未来が、本当にぼくらの目指す先なんだろうか?
この問題の答えを、この記事で断定することはしません。読んだ人一人ひとりが、自分で考えて結論を出す。そして、出した後も悩み続ける。そういう発信だって、あっていいと思います。
おわりに
ぼくがこの記事を書いた理由の根底には、「関係性の断絶を目指すイケハヤさんの思想を広めたくない」という思いがあります。
アンチをブロックすること自体を批判するつもりはありません。不当な有名税も確かに存在するのでしょう。
でも、自分に向いた反対意見を全て「アンチの妄言」と切り捨ててしまうような考え方にはどうしても納得がいかない。
人間は色々な思想をぶつけ合うことで考え方を洗練させてきたし、これからもそうあるべきだと思います。
今回の一件についても、話し合うための土壌をつくるために「事態を理解していないただのアンチ」を排除できないかと思い、この記事を書きあげました。
何かを解決するための一助となれば幸いです。
(誤解のないように述べておくと、ぼくはイケハヤさんの著書やYouTubeチャンネルには非常にお世話になっていますし、イケハヤさんは優秀で社会貢献意識の強い方だと思っています。ただし、今回の騒動については出来事として切り離して批判したいという思いです)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
追記
そうこう言ってるうちに、当事者のえらてんさんと正田さんが、小学生のごとき後腐れのなさで仲直りしました。
なんだこの肩透かし感…。
でも、よかったね。
さらに追記
今回の対応について意見が対立していたサロン主要メンバーであるけんすうさんが、脱社畜サロンへのコンテンツ提供中止を発表。
これに対するイケハヤさんの反応は。
両者とも、この離脱は今回の意見対立とは関係がないと述べています。
が、それであれば、騒乱の最中であるこのタイミングで離脱を表明する必要性はあったのか。
意図を断言することはできないので、読者の方々の判断にお任せします。
なお、これに先立ってイケハヤさんは、別途対応に異を唱えていた田端さんをTwitterでブロックしているので、本件で意見が対立した人全員と関係性を断絶したことになります。
これが脱社畜サロンの運営にどのような影響を与えるのかについては、長期的に見ないと判断できません。
意見交換が進展する余地はなくなったので、この騒動はいったん終結したと見ていいでしょう。
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