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第1回座談会-前半-
NO PROGRESS プロジェクトの進めかたについて
山本ジャスティン伊等(以下:かれら):では始めたいと思います。山本伊等(かれら)と申します。今回作演出と、出演もします。他に出演をするのが、ロビン、安瀬雅俊さん、山本浩貴さん。音楽が森健太朗さん、記録映像が富澤豊さん、制作が小野寺里穂さんです。まず最初に、このプロジェクトの概要を僕の方から説明します。
かれら:このプロジェクトには「NO PROGRESS 進捗なし」という名前をつけました。というのも、このメンバーが揃ったのは今年の2月のことで、本来であれば6月に公演を行う予定でしたが、コロナウイルスの影響で公演が中止になり、日程の目処が立たないまま今に至っています。だから半分皮肉というか、ふざけた感じでつけたタイトルですね(笑)
かれら:このプロジェクトは、僕らが演劇を作る過程を、可能な限り見ていただこうというものです。だから僕が戯曲を書いて、皆さんの意見をもらって、修正する過程をリアルタイムでできるだけ公開していく。戯曲だけじゃなくて、音楽とかチラシとか舞台美術とかも。
このプロジェクトを始めようと思ったのは、前回行った『配置された落下』の時に感じたことがもとになっています。たとえば稽古場では、僕たちは結構笑いながら作ってたわけです。『配置』は俳優が、ダンスとも言いがたい、おかしな動きをしながら発話していく。例えば滝腰さんには、「虫みたいな動きがいいです」って言って、毎回彼に動いてもらう中で、動きをフィックスしていった。稽古中はふざけてるわけじゃないけど、笑いながら作っていたわけです。虫みたいな動きをしながら、恋人を探す男、おかしいじゃないですか。でも実際の公演では、観客には真面目なものとして、批評的な解釈の対象になってしまう。もちろんそういう側面を考えていないわけじゃないんだけど、本番だけを見てる観客と、稽古とか制作プロセスを踏まえて本番にのぞむ作り手では、作品に対する厚み、見るという経験の厚みの違いが出てきてしまう。
でも僕は、何かができつつある瞬間に立ち会うのがおもしろい、と思うわけです。小説は基本的に一人で書くものだから、どうやって書いたのかというプロセスは、なかなか分からない。でも演劇なら、稽古で演出家が考えることを言語化して、それを俳優がやって、という、リアルタイムで制作の思考が少しは垣間見えるわけですよね。
制作プロセスを見せるというのは、アーカイブとかワークインプログレスとか、既存のものもあると思いますが、あれはあれで、ひとつ発表になっているというか、恥部を晒す、という感じを受けるものは思いの外少ない。
それを経て本番を見るのでは、全然違う鑑賞体験になるだろう。だから今回は、制作プロセスを可能な限り見てもらうことで、本番を見るだけとは違う観劇体験を作りあげたい、というふうに思っています。
かれら:で、初回ということで、僕が今回の戯曲の冒頭を書いてきました。このテクストをベースにみんなで色々話し合っていこうというわけですが、その前にまず相談したいのは、戯曲を僕が書いて見せて、というだけだと、僕だけで閉じちゃうじゃないですか。だから、なにかその、他にコンテンツを作ってやっていくのがいいかなと思うんですが……。
(長い間)
安瀬雅俊(以下:安瀬):他のコンテンツって何?
かれら:例えば、僕が書いた戯曲の、テーマでもいいしシーンでもいいし、そこから何か考えたこと、それに沿ったことを絵に描くとか……。
安瀬:あ、話脱線するけどさ、昨日もらった戯曲読んでさ。そしたら、絵が進むんだよね。情景が浮かぶとかじゃないんだけど、絵が描けた……。
かれら:(笑)
森健太朗(以下:森):あれで描けるんだ(笑)
安瀬:犬を描くとかじゃないんだけどね。あとでお渡ししまーす。(11月掲載予定)
富澤豊(以下:富澤):前回(『配置された落下』)のときも言ったけど、神代(辰巳)をかれら君に見せなきゃいけないなと。昨日読んだんだけど、やっぱり神代だなってすごい思ってるから。
森:みんなすごいな、あの1ページだけで(笑)
かれら:神代辰巳、みたことないな……。やまぴー知ってます?
山本浩貴(以下:浩貴):地獄。
富澤:『地獄』ね。
かれら:話戻りますけど、どうしましょうか。
安瀬:おれらが作るのはさ、組み合わさっててもいいの? 絵と文章とか、音楽とか…。
かれら:それは全然いいと思いますよ。
浩貴:作品の中に還元されていくものとして考えるのかな。
かれら:それは戯曲を僕だけが書いて、みんなで話し合うけど、そこから出てきた問題を持って帰って書くのは最終的に僕だけなのかにもよりますよね。あるいは、自分が発話するセリフは俳優が書いてくるというのもアリだと思うし。
富澤:今回のプロジェクトは、あくまでかれらが主体ではあるけど、それぞれが作品を持ち寄ってまとめていくっていうイメージなのかな。
かれら:前回の『配置された落下』のときは、すくなくともテクストは完全に僕だけが書いて、それを俳優のひとに演じてもらうっていうオーソドックスなやり方だったわけです。僕はそこで、自分が演出家という暴力的な立ち位置は引き受けようと思ったんですよね。俳優は僕が言っていることと違うふうに演技したいかもしれない。でも僕はそこで、「こういうふうに見えるのだから僕のいうとおりにしてください」と捻じ曲げる。それってすごく暴力的じゃないですか。でも今回の場合は、皆さんの創作物が舞台上に直接的に反映されるか、それともあくまで作品の構成要素になるかもしれない、という程度なのかが問題なわけですよね。
安瀬:要はさ、おれたちが作ったり、映画を紹介したりっていう、かれら君に対する応答が、わかりやすく反映されるかっていうことだよね。表面的にはわからなかったとしても、過程を見せていく中で、遠くで絶対に繋がってるっていうことはわかると思う。とおれは今思った。そこで、おれたちから出てくるものをかれら君が応答するやり方と、かれら君のテクストに対しておれたちが応答するやり方とふたつあるとは思うけど。
かれら:そうですね。さっきの暴力性の話でいくと、ただみんなに応答してもらって、それはnoteのコンテンツとしては出てくるけど、作品に反映される可能性がかなり低いということになると、本当に搾取になっちゃう。
浩貴:じゃあ往復書簡みたいな感じでやればいんじゃないかな。つまり、かれら君の負担が大きくなる話かもしれないけど(笑)、まずは発端となるテクストをかれら君が書いてくれたわけですよね。で、次回は全員が思ったことを書いたり、音楽を作ったり、日記を書いたりする。かれら君はそれを引き受けて、つぎのテクストを書く……と。お互いに応答しあわないといけないという制限を大枠として作っておくけど、戯曲を書くのはあくまでかれら君ではある。その過程で、劇中に使う音楽とか、演技の素地ができていく。
結局戯曲はかれら君が書いたものになるんじゃん、というのはあるかもしれないけど、そこはかれら君が、今言った暴力性、として、引き受ける。
かれら:これは、これから実際に書いたり作ってみたりしないとわからないと思うんだけど、山本さんがやっている「いぬのせなか座」のWSとかだと、一個ルールというか制限があって、そこの制限がないと出てこないようなものを見る。山本さんはそういうの好きだと思ってるんですけど(笑)。
浩貴:たしかに、いま言ったのは僕がやってることと近いかもしれない(笑)
かれら:いいんですよ、それはそれで(笑)。僕が気になるのは、WSだと、一回きりじゃないですか。NO PROGRESSでそれを継続してひとつの戯曲として完成させるときに、どうするかということで。
僕が書いたAというシーンの次に、Bというシーンを書く。そこではテクストが要請してくる、Cというシーンがある。しかしみんなの創作物への応答をしなければならないとしたときにどうするか……。でもそこをたのしむ、ということになるのかな。
浩貴:でもそれは、劇作家が書いた戯曲を俳優が読むときにも起こりうることだからね。今回は作品を往復させるということだけど、だからこそやれることもあるのかなと。俳優が持ってきたものに対して演出家がただ意見を言ってねじまげるということじゃなくて、メンバーそれぞれのズレを使って書くことができるんじゃないかなっていう気がした。
かれら:じゃ、そういうふうにしましょうか(笑)
小野寺里穂(以下:小野寺):かれら君の中では、今日もらったテクスト以降の展開は考えてるの?
安瀬:ないんじゃない?(笑)
浩貴:ぼくはこのあいだかれら君から「カッパの役です」って言われたけど(笑)
小野寺:そういうのがあるなら、提示してくれたほうが、みんなもやりやすいと思う。
かれら:考えてることはあるけど、メンバーの創作物を見て、そのとおりにいかなくてもいいからね。物語の枠組みは考えてるよ。でもその枠組みさえあれば、逆に言えばなにをしてもいいし、僕のプランが捻じ曲げられながら書いていくほうがいいと思う。山本さんは今のところカッパだけどね(笑)じゃあ月二回、一回はメンバーの創作について話し合う。もう一回はそれに応答する僕の戯曲ないしテクストについて話し合う、ということでいいですかね。
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