ネイキッド・ランナー
徳島敦夫(47歳)はかつて人生に絶望していた。
仕事をクビになり、家族もいなかった。
最早敦夫に未来はなかった。
同時に、寄る辺とする過去もなかった。
だから彼は今を生きることにした。
敦夫は電話をかけると、計画を実行に移すための準備を始めた。
「なあアッちゃん。本当にアレをやるつもりなのか?」
中学の同級生であった藤村隆は敦夫が現れるよりも早く喫茶店に着いていた。
「当たり前だ。誓いを果たす時が来た」
「でもあれはほんの子供の約束で……」
隆はそれ以上言葉を口にすることが出来なかった。
敦夫の目を見れば、それが冗談ではないことは明らかだった。
「隆。ちゃんと最期まで見ていてくれよ」
敦夫はそう言うと席を立った。勘定は払っていなかった。
回転ドアを通って街に出た時、敦夫は既に全裸だった。
彼は昔から誰よりも服を脱ぐのが速かった。
「いつか裸で東京の街を走り回ろうな!」
子供の頃の些細な誓い。
それだけを胸に、彼は走り始めた。
メイクマネー、したいのさ。