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ウチとソトの間にある壁がゆるやかに崩れるためには

本日は『ウチとソト』について思想を巡らせてみようと思う。

日本人は、無意識にウチとソトを分ける傾向がある。

これはある種の排他性で、そこで生まれた『空気』によって嫌なおもいをすることもあるけれど、一方、そのおかげで守られるものだってある。

ウチを囲って、他者との間に壁を作ることで、ウチ側にいる人達の安心・安全を確保することができるからだ。

ただし、そのままウチにこもっていても、囲い込んだウチ側の『コミュニティ規模』が、これ以上大きくなることはないだろう。

「ウチとソトに分けることが間違いだから、境界線をなくして、私たちという世界は繋がっているから手を取り合おう!」という主張も理解はできるけれど、その言葉だけで心からの繋がりが結ばれるほど、僕らの間に流れる空気は温かくない。

それが現実だ。

人は自分のことを依怙贔屓してしまうし、「自分が認知している世界の外側にも、必ず誰かがいる」という可能性に、気づけない。

「自分が何を知らないのか?」を、知ることはできないからだ。

むしろ、空気を読んでウチとソトを分けることが得意な日本人だからこそ、その魅力をまずは肯定し、『ウチとソト』という目に見えない空気の存在を受け入れることが大切だと僕は思う。

だからこそ、一旦はウチとソトに分かれてから、そのウチとソトを繋ぐ行動を取れるかどうか?が大切なんだ。

評論家の山本七平は著書『空気の研究』において…

「人間には知人・非知人の別がある。人が危機に遭ったとき、もしその人が知人ならあらゆる手段でこれを助ける。非知人なら、それが目に入っても、一切黙殺して、かかわりあいになるな。この知人・非知人を集団内・集団外と分けてもよいわけだが、みながそういう規範で動いていることは事実なのだから、その事実を、まず、事実のままに知らせる必要がある。それをしないなら、それを克服することはできない。」

と綴っている。

・・・ここからは、『ゴミ拾い』を例にして話を進めよう。

ゴミ拾いは、住んでいる地域内(ウチ)や、自分が普段そこにあやかっている自然環境(海や公園など)でやることはあっても、地域外(ソト)から人が来てゴミ拾いをしていくことは、あまりない。

海が身近にない人が、突然「海のゴミ拾いをしよう!」となることは、あまりなさそうだ。それは、海は自分にとって『ソト』だと、無意識に分けているということ。

ゴミの処理は、行政が『公助』としてやってくれる場合はあるけれど、公務としてゴミ拾いをしてくれている人たちは、なんだか楽しくなさそうだ。

そして僕が最も大事だと思うことは、「ウチの地域をもっと大切にしたい!」という心の内側から湧き上がってくる貢献心が、行政や管理人さんから管理されることで芽生えることはないということ。

僕が住んでいるアパートには「ゴミの分別を守ってください!」という管理人さんからの張り紙がいたるところにあるけれど、いざ守っていない人がそれを見ても、「自分はこのアパートという『ウチ』の一員だから、周りのためになる行動をしよう!」という心持ちには、まずならない。

悪者に分けられてしまった人は、『自分のためになること(善い行い)』をするだけで、その善行は、管理人から見たら悪行にしか見えず、同じことを繰り返すだけ。

だからこそ、ウチとソトが繋がって『互助』の関係になることが大切なんだ。

例えば、自らの住む地域の『ソト』でゴミ拾いをしてみて、ソトで暮らす人々の温かさを感じ、自分たちのソトで起こっている問題や困り事を知ることで、「これと同じような問題はウチにもあるんじゃないか?」という課題意識が、ここでやっと芽生える。

ウチのコミュニティのために何か行動を起こすことが『自分事』になっていくには、段階があるんだ。

ウチ側で地に足をつけながら、時おり地面から思い腰を上げてソトと繋がり、互い(ウチとソト)にとって共通の課題を探すというステップを踏んでいかないと、自分が帰属しているウチ側のコミュニティは、ゆるやかに衰退していく。

安心・安全が広まると、「ウチ側を温めたい」という行動を選ぶ人がだんだんと少なくなり、コミュニティ内に流れる『空気』が冷めてしまうから。

熱がなければ勢いも生まれず、ウチ側の空気が膨張して自分の所属しているコミュニティの規模がこれ以上大きくなることはないのだと思う。

萎むのを待つのではなく、時には安心・安全を捨て、自由を求めてソトに飛び出さないと、僕らはいつの間にか、冷たい空気に紛れてしまう。

空気を読まずにいられる人は魅力的だけれど、『空気を読める人』にだって、空気を読んだ上で、流されずに空気を温め直せるという魅力がある。

ウチ側を温めながら、その熱で膨張した空気がウチとソトの壁をゆるやかに崩していくように、行動を続けたい。

本日は以上です。

・・・読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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【軟水のたそがれ】
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このnoteは筆者の思想を深堀りするエッセイです。
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