卵のいろ・いろ
私の感覚的なものなのかもしれませんが、北海道ではこだわりの卵を見かけることが多い気がします。自由に旅することができたコロナ禍以前は、途中に立ち寄った道の駅や農産物直売所などで「平飼い卵」をよく目にしましたし、スーパーなどにも平飼い卵や北海道産のエサで育てられた鶏の卵が置かれていたりします。
ちなみに――平飼いとは、鶏舎の中で地面に放して飼育する方法です。自由に動き回り、砂遊びをすることもできます。鶏舎の中からさらに屋外へも自由に出入りできるのは放し飼いといわれ、ヨーロッパなどでは主流の飼育方法です。
また、北海道産のエサとは、具体的にはお米やとうもろこしなど北海道で採れた穀物を主にしたエサのこと。日本では家畜の飼料(エサ)になる穀物のほとんどを、海外からの輸入に頼っています。鶏の飼料もご多分にもれず、およそ9割が輸入原料だそう。そんな中で、北海道産の穀物を主にしたエサづくりをされているってすごいことだと思います。
北海道産のお米で育った鶏の卵の黄身を見たとき、初めはその白っぽさに驚きました。とうもろこしを主にしたエサを食べている鶏の卵は、はっきりとした黄色をしていますから、そちらに見慣れてしまっていたんですね。
卵黄の色は鶏が食べたもので決まります。黄色や橙色といったあの色は飼料中のカロチノイド(脂溶性の色素)によるもので、その大部分はキサントフィル類です。代表的なものとしては、緑黄色野菜に多く含まれるルテイン(黄色の色素)でしょうか。それらの色素が卵黄に移行するんですね。
なので、卵黄の色が濃い=栄養価が高いわけではないのですが、イメージ的にはそんな気がしてしまうのかもしれません。そのため、わざわざ色素を添加することもあるようです。
卵黄と同じように、卵の殻も白より赤っぽい方が栄養価が高く、また高級そうに見られるようですが、こちらもそういうことではないんですね。鶏の種類の違いによるものです。例外もありますが、基本的には白色レグホーンのような白い鶏は白い卵を、ボリスブラウンのような茶色い鶏は赤い卵を産むといわれています。
かく言う私もかつては赤っぽい卵がいいものだと思っていました。ところが大学の授業でそうではないと知り、「うっそ〜!お母さんにも教えてあげなきゃ!」と思ったものです……
いつも、どんな色の卵を選んでいますか?卵黄の色は?その色からもう一歩踏み込んで、何を食べて育ったのか、どんな方法で育てられているのかを知ったとき、身近な存在である卵のまた違った世界が見えてくるかもしれません。
〜『北海道をかし菓伝』外伝 その4〜