昔の漫画の未来衣装として銀色の全身タイツが何故か描かれる不思議について考察したい
お金で愛は買えないかもしれないけどカネで愛人は買える。その後の恋愛はあなた次第。
ってやかましいわ!
容姿端麗。国立大医学部医学科在籍中。二〇代前半。実業家。発明家。Iカップ。貯金額は現金で1億ちょっとで少ない。株とか不動産などは別だけど後は会社名義。
これが私のスペックである。
ちなみに今だ彼ぴっぴはいない。
キスだってパッパちゃんのホッペチュー以降ない。全くない。電車の中の痴漢はノーカウントだ。
尻胸太腿超触られるのでタクシーや有料席を利用している。運転免許取ろうかなと言ったらパッパちゃんとマッマさんに泣いて止められた。
パッパちゃんとは仲がいいと思う。
中学の時キモいとか触るなとかキスするなとかいうのは当然だと思うのだ。あの人未だ娘を幼稚園児と思っている節がある。
無駄に胸がデカくなっていてからかわれていた当時の私にはパッパちゃんの抱き着き娘可愛い可愛い攻勢はキツ過ぎた。
今ならいやらしい意味は一切ないと理解できる。パッパちゃんごめん。そしてパッパちゃんは私をいやらしい目で見ない珍しいタイプの男性である。
特許品は合成クモ糸を用いた3Dプリント下着技術。
合成クモ糸は今だ改良の余地がありクモ糸の柔軟性は完璧に再現できていないけれども量産はできるので海外でそこそこ売れている。
最近は下着メーカーから何人かベテラン主婦を引き抜いて来たのでかなり品質が良くなった。本来私が使うためのものだったのにどうしてこうなったのだろう。
生活に使えるサービスとしてはコンビニプリントによる型紙提供と近所のおばあちゃんたちの縫製コミュニティや空き家を実店舗兼おばあちゃんの集会所として貸出。
工学技術関係としてはおっぱいが大きくてトンボを切れる人型ロボットのバランサー技術。
医者志望なのにどうしてこうなったのかというと全ては無駄に大きな私のおっぱいの所為である。
可愛い下着が大きくするだけでダサくなるから合成クモ糸と3Dプリントを用いたデザイン下着を安く作れる技術を作った。Eカップ以下の友人に超感謝された。残念なことにわたしの知人はみんなちっぱいだ。可愛い。羨ましい。服が色々着れて楽しそうでいいよな! あたしゃ既製品着たらデブに見えるんだぞ! 小学校に入ったばかりの頃のあだ名は『ガリ』だったのに高学年になったら『でぶ』である。
で。中学になったら『横綱』にランクアップしたがあの制服のおなか周りを絞って着れるならやっていた。
いや、そんなことをしたら『エロゲヒロイン』と呼ばれていたかもだけど。高校は女子高で良かった。
ロボット工学をやってしまったのは胸が大きくても楽に動けるパワードスーツみたいなのを作ろうとしたら思い誤ってやり過ぎたからだけど、無駄に天才なのがよくなかった。でもパッパちゃんの住宅ローンを払ってあげられたから満足である。
というか、娘が払うことになっていたので奨学金含めて恐ろしい事になりかねない額だった。
国立行けて本当に良かったとしか言えないし、実益を兼ねて大学の別学部ゼミの設備を勝手に改造したり使用してしまった後始末を上回る収益を偶然出せなかったら今頃風俗に沈んでいたかもしれない。マッマさんに泣かれずに済んでよかった。私は天才だが衝動と友情に任せてしまう欠点がある。
よく騙されないかって?
すっごく騙される。なのにいまだ男性経験がない。
なぜだろう。私はこんなに美人で性格良いのに。
いや、そもそも騙される女ってお金取られて身体もとられてポイだよね。私の場合『お前怖そう』『重そう』『なんか身の危険を感じる』っていうの何故!? 安全だから! こんなにわたし可愛いしかしこいし素敵だし最近お金持ちにもなれたよ!?
そして今回の発明を見る社員、A君の視線が痛い。
何故だろうか。エロい目で見ないのは嬉しいけど嫌なのは。A君はもう少し私の美貌に見惚れてもいいのだぞ。ほらほら。若い美女のIカップがクモ糸繊維でまったく垂れずに形を維持して漫画のようにすらりとしまったおなか周りがセクシーでしょでしょ?! 脚とかわが社の繊維と布加工技術の粋を極めてすごく楽で快適なのにしっかり私の美脚をサポートしてくれるのよ! ねね。良いでしょ良いでしょ!
「社長、痴女っすか」
失礼過ぎて泣いた。
かがみこんでしくしくウソ泣きしていたけれど相手にしてくれないので本気で泣いた。
「今回の発明はARスーツです」
大阪名物パインアメをくれたのでちょっと仕事に戻ることにする。
「今までの水槽を用いた測定技術についで某社が試作した体形および全身サイズ測定スーツに対抗したものになります」
A君はハイハイと言いながらメモを取ってくれる。一応彼は最近雇った研究助手なので全貌を把握しているのだがリマインドというのは大事だ。
にしても知っているのに痴女とか言わないでほしいの。本当にハートブレイクだから辞めてほしい。
A君は私より年下で可愛いからスカウトしたが、いつの間にかかなりの知識を身に付けている。学部も違うので私とは違った視点を持っていて頼りになる。
ちなみに彼は哲学科である。
哲学って発明に役立つとは思わなかったが彼自身が優秀なので問題ない。
というか、可愛くて癒してくれるならそれでよかった。小学生と思ったら同じ大学だった。
しかもドSである。
ちなみに年齢は一四歳らしい。
一度海外の大学を出ている。
「体型およびサイズの適切な計量は補助機能に過ぎません。この服の神髄はヘルメット」
「ダサい」
いうな。傷つく。
「バックミラーのついたヘルメットからのモーションキャプチャーにあります。特殊なグラスや当ヘルメットをつけた人、AR手術を受けた人物にこの服は『適切な見た目』を提供します」
就活でパンプスの痛みにブチ切れたから作った。
まったく反省していない。
だいたいメイクとか時間かかるよね?
今日日遠隔会議で出来ないの?
というかsnowとかtiktokはリアルタイムで盛ってくれるのにどうして遠隔会議システムに標準装備していないの?
え? 交通費学生負担? バカなの死ぬの!?
「社長に就活必要ですか」
「安定もほしいもの……」
最近はダブルワークOKの会社も多いし、ほら、結婚して育休とか取りたいもの!
「社長、女性に言うのはアレですが、育休期間は戦場ですから給料もらって休めるどころか全く休めませんよ? 赤ちゃんを舐めたらいけません。彼らは二四時間フルタイムサポートを求めてきます。社長みたいに拒否できませんからね」
知っているわよ!
パッパちゃんとマッマさんみたいに社内結婚恋愛にあこがれていて何が悪いのよ……。
「で、バックミラーは」
「お年寄りが自転車に乗る時べんりでしょ?」
一応、ちゃんとモーションキャプチャーのセンサーになったりARグラスの代わりになったりはするけど補助的な機能ね。メインはヘルメットからの網膜投影になるから。
「レーザーで弱視を克服できるわ」
「そのデザインは最悪ですけどね」
だから、機能面をみてほしいのよ……。
「このスーツを着た人間を見た人は、『上司』ならスーツ姿、『友人』なら『コスプレ姿』ゲーム友達なら『ゲームのアバター』と多様な見た目を見せることが出来るの。勿論就活時はオートメイクとスーツとパンプス姿になるわけ」
「素晴らしい技術ですね」
そうよ! そうよ! もっと褒めて!
苦労したし努力したの! 超褒めて!
「SNOWの拡張機能を持った眼鏡で社長の希望はだいたい叶えられると思いますけど、どこのサザ〇さんの未来人スーツでしょうか」
泣いた。
めっちゃ泣いた。
そもそも世界に普及しないと意味ないよね。
快適で防寒防熱機能あって、体型補正できて、見せたい自分をメイクなしで見せられる凄い服だけど皆が着ないと意味ないよね。相手側にAR眼鏡とかないと見せたい容姿を見せられないし痛いスパッツ姿をさらすことになる。
そうだよ。そうだけど。
「大昔の漫画の未来みたいに全身スパッツなんてないでしょう。漫画ならボディスーツ制服でも作れば売れますよ。わが社の技術なら可能ですし」
うん。知ってる。
この子の毒舌は今に始まったことではない。
「ゆえにわれに秘策ありなの」
「なんでしょうか」
「変身!」
「ぐははは! 私の正体をみせてやるわああ」
ヒーロー協会とかデュラン連合とかいう人たちに売ったらめっちゃ売れました。
クモ糸を用いた人工筋肉やパワードスーツ技術も関与して正式に契約取れました。
最近全身スパッツ姿の人が増えたけど、昔ほどひどく言われることはない。人によって美人にもなれるし、嫌いな人にはブサイクでいられる。
痴漢だけはブサイクでも美人でも関係なく狙いやすい奴だけを狙うらしいのでヒーロー協会だか警備会社だかわからない人たちと提携できました。
警備会社の人曰く。
「いやあ。水を飲んでいたらサボっているとか、マスクつけると不衛生だの気品がないと抗議する人やクライアント様がいるのでマスク型の網膜投影ARデバイスも作って普及してくれて本当に助かります!」
とのこと。
地味に警備会社は革靴強制にして制服紛失すると警察沙汰になるため色々改善したとのことで良い事だと思っている。
コスプレイヤーの皆さんからも『着たい服が着れた』『ダイエットしなくても可愛い服が着れる』『着替えを盗まれる心配がない』など概ね好意的だし、変わったところでは百貨店の美容部門や服飾部門の人が使ってくれている。
うん。儲かったけど未だモテない。
荷物はパワードスーツでモテるようになったってやかましいわ。
「社長はやっぱりだめですね」
「A君。それパワハラ?」
そんなこんなで私たちはいまだ商品開発をしている。先日単位を逃しかけたがなんとかなった。
医師免許を取りたい。それ以上に彼っぴが欲しい。
お金とか容姿とかおっぱいとかに振り回されなくて、この陰湿ネガティブパワハラガキみたいじゃない子。
めっちゃくちゃ褒めてくれる子が良い。
そう言ったら先日、鏡の前で『社長可愛い! 社長素敵! 社長賢い!』と顔を真っ赤にして練習している少年がいたので良しとする。
普通の服も良いものである。
彼が『痴女みたい』と言わなければ絶対着なかったし、ダサかったから彼のプレゼントでも着なかった服であるがまぁ今週だけは着ることにしよう。
なお、私と彼との間には現在のところ進展など全くないので勘ぐらないでいただきたい。
ちくしょう。
自称元貸自転車屋 武術小説女装と多芸にして無能な放送大学生