30首連作「ひとつながりの鈴」
靴下がタイツに変わり革靴に余白うまれる冬のはじまり
色の無いほのおが揺れる理科室で滔々と性について話した
天からの飛び降り自殺をこころみた雪がつぎつぎ霙になった
安心感みたいな風がやってきて気が付きました異星のことに
空白も名を持つような真昼間にあなたがきゅっと水筒ひねる
積雪はあなたの殺気だと思う 気づかぬうちにひらいてる窓
スカートを認めたくない 黒板消しクリーナーから微粒子が飛ぶ
天使から天使が生まれないことは分かる どうにかコンビニへ行く
家という仕組みが空回りしている星座になってしまうちからで
侮蔑そうだそうしかないではないか自販機から這い出してくるお茶
それは恐らく川だったので僕たちは話し続けることを選んだ
僕がみたいくつかの日の出のことを聴覚だけでとらえてほしい
規則的な火花にくちづけるようにあなたに告げたこころがあった
声だけを覚えていたい逆だけど逆なんだけど曇天に青
骨を知ることはないから質問で銀河をなぞってごめんと思う
家で会うときのあなたはどうしても同語反復(トートロジー)のようで風なく
照明が目に付く部屋でそれっきり僕らはひかりに言及しない
白線になりたいすっと越えられてちいかわみたいな声で鳴きたい
旅人算は旅をしているわけじゃない 揶揄うように花弁が落ちる
隕石としての異星をてくびから無限に無限に生み落とせるよ
会いたいと会わなくたって満ちてるがひとつながりの鈴のよう、るる
透明なあなたがぼくだ だとしても漕ぐべき青いブランコがある
迫ったら気体になってしまいそう、檻の外から見つめるね、雨
からだなど関係ないとまばたきで殺してほしい 浮かぶ睡蓮
非情になりきれなくてみずうみ落ちていくまでを木星見ていて金星
イヤホンのホンが飛び出て僕ずっとたましい燃やさなきゃなのかなあ
なにもかも滅びたのちにあらわれるかつて夜空と呼ばれてた闇
存在しないあなたと共犯だったこと ありがとう、なくなってしまう全ての書店
まっしょうめんからドアをしめたよ 幽霊を溶かして飲んだみたいな朝に
階段を巻き取るちからが春でした 伏線のひとつが行方不明