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「乱視の軸度を変えるタイミング」を解説します
乱視にはいくつかの種類があり、それぞれに特性があるのは以前の動画でも説明していたと思いますが、
ポイントとなるのは「乱視の軸度はどのようにするのが適切なのか?」ということです。
考え方としては以下の通りです。
①KBがある場合は軸度を15度以上変えない
②KBがない場合はS面で8割処理し、サポート的に測定軸の乱視を入れる
③視力が出るなどのメリットが大きい場合のみ30度以内で動かす
順に説明していきます。
① KBがある場合は軸度を15度以上変えない
乱視の法則動画でも解説していますが、基本的に乱視の軸度は10度くらい動かすと違和感が必ずでます。
特に「斜乱視は動かすな」とこのチャンネルでは強く言っています。
理由は「人の慣れ」を考えているからです。
そもそも斜乱視は、過去に処方された時、すごく違和感があったであろうところを年月をかけて慣れて来た背景が予測されます。
例えるなら、もともと斜めに傾きながら歩いていた人に真っ直ぐ歩くよう矯正したような感じです。
年月が経ち、バランスが変わってきた時に軸度を斜めから動かすと、
必ず大きな違和感が出てしまい、30歳以上の方には慣れにくい地獄のリハビリが始まります。
斜乱視を動かす場合の条件は、
今より視力が上がり、本人も快適でかつ、KBと測定軸度データの半分以下に抑えましょう。
例えばKB軸度が135度で、視力が0.4から軸度を165度に変えることで視力が0.8まで上がるとします。
この場合30度の開きがあるので、半分の15度ぐらいの数値、150度を目安にして、
そこからさらに、ややKB寄りに5度戻した145度あたりが慣れやすい変化量です。
増やす乱視量にもよりますが、0.50以上入れていく場合さらに5度KB寄りにした140度の方が慣れやすくなっていき、
1.00増やす場合なら軸度は変えない方が無難です。
というか、斜乱視で乱視量を0.50以上上げるのは、よほど希望されない限り、ほぼほぼ慣れないのでやめておきましょう。
過去の動画でも解説した、
正しい乱視軸度に近づけることで、少ない乱視量でも見えやすくなる場合があるので一概には言えませんが、
正しい軸度に寄せつつ少ない乱視量で処方するのが失敗しにくい処方です。
不安なら軸度は5度しか変えずに、乱視量を0.50以内で変えるくらいにしておくと良いでしょう。
慣れてきたら「軸度を少し変えつつ乱視量が少なくても効果的な処方」もできるようになると思います。
斜乱視や倒乱視は、軸度や度数変化に敏感なので大幅に変える場合は
よほど本人が望んでいない場合は避けることをおすすめします。
直乱視は目を細めれば見えたりするので、変に軸度を斜めに持っていかず、
そのままの軸度か5度以内の変化と0.50以内の度数変化で処方しましょう。
②KBがない場合はS面で8割処理し、サポート的に測定軸の乱視を入れる
KBがない場合は主訴をききつつ、極力S面を8割くらいまでにしたり、それでも「見えにくい」と言われた場合に、
乱視の法則にそった量をサポート的に入れると失敗しにくくなります。
また、主訴にもよりますが、乱視のみ入れた方が「楽になった」と言われることもあります。
例えば以下の条件の場合
・裸眼の生活に慣れている
・眼鏡に慣れていない
・遠視で遠方が見えにくい
・目を細めたら見える
・測定データが左右で符号が変わる
注意したいのが、普段眼鏡をかけず測定してみたら
片目が近視と乱視で、反対が遠視の混合性乱視の場合です。
そんな時は不同視も疑われますが、乱視だけで処理する方が「裸眼と遠近感が変わりにくくなる」ので失敗しにくくなります。
左右で符号が変わると「遠近感が気持ち悪い」とよく言われます。
たしかに数値の開きがあるほど「右目はものが小さく見えて、左目は大きく見える」といったことになるので
「それもそうだな」と思い、なるべく「利き目や、よく使っていると自覚がある目」を符号の優先にし、
反対は乱視のみにするなどの方が「自然な感じ」になるでしょう。
符号が同じ場合で、斜乱視になった時は、極力S面だけで処理し「それ以上見たい」と望まれた時だけ0.50乱視から入れる方が無難ですね。
③視力が出るなどのメリットが大きい場合のみ30度以内で動かす
測定が得意でない方のよくある失敗で「現在の数値を信じてしまう」というものがあります。
このチャンネルで何度も言っている「人の目の慣れ」は、必ず処方で考えなければいけません。
いかに現在の測定で見えたところで、長年慣れた度数から新しい度数に慣れるには時間がかかるからです。
ただし、一部例外もあり「本人が強く望んだ時のみ全てのバランスを無視する場合」があります。
1番多いのが「免許更新」などで「視力」が必要な時ですね。
視力が上がりにくい方には「強く希望された時」のみ30度以内か
完全無視で動かすこともあり「瞬間的な見え方」だけ処方することもあります。
正直「その時にしかかけないから」とか言われるので内心イラッとしますが、
逆に罪悪感もなくなり、フルバーストして数値をぶち込んであげます。
極端な例でしたが、そこまでとは言わなくても「なるべく見えるようにしたい!!」という方には30度以内に抑え、
なるべく慣れられそうな軸度と度数を探しますけどね。
「乱視の軸度を変えるタイミング」をまとめると、
・少ない乱視量で見えやすくしたい場合
・強く望まれた場合
となります。
乱視の軸度は正しい軸方向に変化させれば少ない乱視量で効果的になりますが、
ここには必ず「KBの慣れ」を忘れてはいけません。
・斜乱視は余程のメリットがない限り動かさない
・乱視の軸度は10度以内で乱視の変化量は4段階以内にする
この2点を抑えておけば
「乱視の軸度ってどのくらい動かしていいんだろ?」とか
「乱視の量ってどのくらいまで上げていいんだろ?」という疑問のものさしになればいいかなと思います。