マリナ油森国訪問記④
小さな頃、動物園の動物達は、夜どうしているのか疑問に思ったことがある。そんな記憶を呼び起こされる、夜の動物園の写真に誘われて、今日も「国であり沼であり街でもあるどこか」へ訪れた。
私が暮らす場所はこれから梅雨を迎える。"ネズミさん"ことマリナ油森さんの「暮らした」夏真っ盛りのここではないどこかと私が暮らす場所の間には、少しだけ不思議な時差がある。
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おうちカフェを楽しまれているnoterさん達が集う場所で、ネズミさんが水出しコーヒーの魅力を紹介されている。カフェでいただくのも幸せだけど、麦茶みたいに冷蔵庫で冷やしておいて、起き抜けに飲むのは格別だ。
シルクみたいにきめ細やかで、飲みすぎ注意な、罪な飲み物。水出しコーヒー。煎り方も挽き具合も知らずに飲んでいた。素敵な水出しコーヒーのおかげで、時差ボケを忘れ、「ここではないどこか」の夏の熱気に体が慣れていく。
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夏といえばお祭り。
「note酒場」に参加する前に、したいことと出来ることをお書きになられている。うん、心強い。
お祭りを眺めて楽しんでいたはずのネズミさん、気がついたらめっちゃ巻き込まれて、非公式マガジンのピッカーになったよ、というお話も語られている。「戯れる人々」と書いて「やや正気を失っている人々」と読む。なにそれ面白そう。告知記事が経緯の説明だけで終わらずに、熱量が高いのも魅力。
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「旅する日本語」をコツコツ書かれてコンプリートなさったとのこと。
・ご家族でのひととき、永遠を願いたくなるような瞬間を切り取られている
・東北の桜の季節に、ご夫婦でアップルパイの街を満喫された様子も素敵だ
・「11個のテーマ、コンプリート」の振り返り記事は、作品の舞台裏も伺えてお得だ
・短歌Remixにも挑戦なさっている! 試行錯誤された様子が伝わるし、何を伝えたいのかが明確になって、楽しい
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エッセイを主戦場にしているネズミさんの、安定の子育てエッセイを拝見する。今回は3つ。どれも、長男さん・次男さんがもう少し大きくなって、読む日が来るのかなと思いつつ、大事に読んだ。
好きに理由はないかもしれない。そんなことを思いつつ、ネズミさんちの3歳さんが憧れる獅子に会いに出かけた冒険譚を伺った。幼くても覚悟を決めた顔をするって、そうだろうなあと思わされる。
長男さんが気にいるような、ヘルシンキ的な何かとか、お洒落なカフェが、ネズミさんちのご近所に出張してきてくれるといいな。
「手足口病」のお子さんのケアをされて、個人差が本当に大きいと驚かれ、noteに記録を残されている。大切な記録が、お子さんを守ってくれることを祈った。
アオムシが蜘蛛の巣にひっかかる。もしかしたら、私は気づかずに通り過ぎるかもしれない。でも、幼い子は気づくし、大人に質問する。長男さん・次男さんは運が良い。なぜって、君たちのママは、「解説者」にも変身出来るから。
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ネズミさんの「ささやかな夢のひとつ」が語られる、ご主人のための「おやすみ強化週間」のお話。名コンビというか、良い相棒というか、お互いの配慮のさじ加減が素敵だ。健康が保たれて、夢が叶うんじゃないかなと思わされた。
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優しくて穏やかな日常から少し離れて、イベントのレポートが集まる通りに、ネズミさんの姿を見かけた。
作品の魅力を語ることは、自分を語ることでもある。クリエイターが自分の味を殺してしまうケースを案じたけど、そんなことは起きなかったよ! と、ネズミさんはネタバレせずにレポートされている。
「トキメキポイント」の下りも、ネズミさんのコミュ強さが発揮されていて最高だ。未読の方は記事を訪れて欲しい。
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noteについて語るのは、様々な方法がある。今回は、公開書簡。あきらとさんとのやり取りが、大切に保管されている。1つめはnoteの距離感のこと。ネズミさんのキーワードは「今」。2つめは「エアリプするな」と、ネズミさんが憧れに対して具体的に何をしているか。どちらも同期愛が強くて、あたたかい。共通の悩みを抱える誰かの、道標にもなると思う。
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ネズミさんはエッセイの題材に、思い出を扱われることもある。三つの絵が飾られている。順に眺めていこう。
・学生時代のヒロキ(仮名)との出会いから、「全部ヒロキに見える病」を経験されたこと。坂口安吾への憧憬を壊されたことは本当に気の毒だけど、悪い意味での「意識高い系」から身を守り易くなったかもしれない。それにしてもヒロキ(仮名)はキャラが濃い。
・美女に生まれたことも、手タレを勧められたこともないけれど。「遺伝です」とあっけらかんと伝えて、「そうなんだね」で終わらず、謙遜しておかないといけない空気はしんどい。「何か秘訣あるよね」と、理由を探されても、無いこともあるのだから。不幸な行き違いが生じるのは、もしかすると、「その方面に話を進めても広がらないし誰も得しないこと」が、見えなくなってしまう時があるためかもしれない。
・ネズミさんが、萎縮したり、性別の枠に押し込められずに、思いっきり仕事に専念出来たのは、「部長」がくれた言葉のおかげだという。「私が私のまま」居ることは、本当に大変なこと。「部長」がネズミさんにくれた言葉を、キャッチできたネズミさんも立派。誰かが成長したり、戦ったり、生きることを行いやすくする「言葉」を手渡せるリーダーって、素敵だ。
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「8月31日の夜に」というタグの初期、配慮不足があり、ネズミさんが心底怒ったことで生まれた、記事がある。
しんどい10代が手にとって、届くことを願って言葉や表現を選ばれている。
「悪の護身術」と名付けられた方法は、具体的で実践すれば生き残れる格率が高い戦い方だ。ネズミさんが経験して獲得した「戦い方」を一式ずばんと手渡されている。
実弾である。命がかかっているのだから、当然だと思う。『具体的ですぐに実践できる「日常に帰るための」アドバイス』でもある。ネズミさんが「私がメディアにしてほしかったこと」で書かれたことを思い出した。
何より、繰り返し読んだけれど、「対価」の部分が優しい。「時間はたっぷりあるでしょう?」の後の部分を、じっくり読んで欲しい。生きるのを諦めたくなるくらいしんどい時期をやり過ごした「誰か」を、幸せになってねと未来へ送り出しているように、私には感じられた。少しだけ、泣きそうになる。
訪問先一覧
・憧れの獅子に会いに 山形「酒田まつり」
・さいきんお疲れの夫のために、お盆休みは夫おやすみ強化週間。
・夜の動物園
・【舞台レビュー】男子はつらくないよ??(ネタバレなし)
・あきらとさんへの手紙:noter同士の距離感について、正直いうと私は深く考えたことがない
・坂口安吾と自己啓発男
・油森家の珈琲ライフ【道具編:水出しコーヒーポット】
・頑丈な長男と肌ヨワな次男。まったく違う手足口病の経過。
・note酒場でやりたいこと:いつものみなさんにお会いできたらそれで大満足なのだけれど、強いて言えば……
・家族で歩く、長くて短い散策路
・悪の護身術
・アップルパイの街
・自然界のデスマッチ、それを見つめる幼子たち(虫の話です)
・ぜんぶ書きました 旅する日本語2019
・一番果を食べたキミへ(短歌Remix)
・台風からの逃走(短歌Remix)
・神々の山、ヒマラヤの夜明け(短歌Remix)
・美女の憂鬱
・オトコのてっぺん
・あきらとさんへの手紙2:私たち、他の誰かにはなれないから
・春の陽射しをまとう男(短歌Remix)
・暇を持て余したnoterたちの遊び 「note珍百景マガジン」はじめます
編集後記
ヒグマのきぐるみと、ヒロキ(仮名)。あと部長。マリナ油森さんの引き出しには、色んな人・物が入っている。
あきらとさんとの手紙のやりとりは、一冊の本になるくらい密度が高いと思う。対人関係・距離感・人付き合い・SNS疲れのヒントになるから。
『悪の護身術』は、書いた人がくたくたになる姿が目に浮かぶくらいの、ものすごい作品だ。去年の、マリナ油森さんにしか書けない記事かもしれない。凄い。
アオムシとクモの記事で「解説者」に変身されているのも、とても好き。エッセイの余白というか余韻というか、描かれていない様々な場面でも、こんな風に、お子さんの興味や探究心を壊さずに、関わられているのだろうと感じられるから。
それでは、また。
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