ちょうどいい距離
暑くもなく寒くもない日、居間の大きな窓の下、レースのカーテンが天蓋みたいになっている寝床にアンモナイトかつ前足で目を覆って熟睡している、うちの子。近くには、乗り心地がいいらしいブラウン管テレビもある。TVの電源は入れていない。「ぴす」と、猫の寝息が聞こえる。時々、風や鳥の鳴き声も耳に入る。
私は休日で、本を読んだり猫を眺めたりしている。うちの子はストレッチしながら眠り、目を開けて大きな欠伸をして、体を目一杯伸ばす。曲線が綺麗だ。
野生を捨てたのか、我が家で安心しているのか、うちの子は足音を立てて歩く。家具から飛び降りれば、大きな音も立てる。足音をさせたまま、私のところはやってきて、「起きた」と報告するかのように目を合わせ、おでこを私の足にごちーんとぶつける。
「遊ぶの?」
「水飲んでくる」
「飲んできた」
「そうか」
「何読んでるの?」
「見えないよー。本じゃなくて膝に乗って」
「聞こえません」
……両脇を掴んで、よっこらせと隣に移す。
「横暴だ心外だ」
「いや、踏むから」
「なんか眠くなりました」
「眠そうな目を、無理やり開けなくていいぞ」
「寝る」
「おやすみ」
さっきまで私の本を踏んだり、足音を立ててそこらを歩いていた、うちの子の後足が、片方だけ私の太ももにくっついている。この距離が、後足がちょこんと触れる距離が、彼のお気に入りだ。
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