JRカードへのあこがれが捨てきれなかった

交通新聞社のJR時刻表を読んでいると、いわゆるピンクのページに「みどりの窓口でJRカード」という案内があります。駅の広告でよく見るビューカードでもなく、特定の会社名が付かない「JRカード」。その歴史は国鉄時代にまで遡ります。

当初JNRカードとして登場したこのカードは、みどりの窓口で使える唯一のクレジットカードとして多くの会社と提携して発行されました。信販会社や地方銀行の社史を読んでいても、必ずと言っていいほど取扱開始の記述があります。JRホテルや駅レンタカーでの割引といった特典はありますが、このカードの価値は「みどりの窓口で使える」ということにありました。地方銀行のカードでも、コーポレートカードでも、それらとは独立したカードではありますが追加カードのような感覚で発行されていました。

国鉄が民営化されると、6社共同発行のJRカードとしてそのサービスを続けますが、発行開始から10年も経たずしてJR各社は自社独自のカードを発行しはじめます。さらに、21世紀に入る前にはこのようなカード以外でも窓口で使えるようになり、優位性は完全に失われました。

それでも、JRカードは他のカードとは違う扱いが続けられました。切符を買うと[C制]ではなく[クレジット]と表示されたり、サインではなく暗証番号で決済したり、あるいは買ったJRとは別の会社でも払い戻しができたり。

私がJRカードのことを知ったのはそのような時期でした。15歳になってりそな銀行のVisaデビットカードを作って[C制]の印字に喜んだりしていても、やはり半角で印字された[クレジット]の切符を手に入れたいという思いがありました。

新規発行を受け付ける会社が1つずつ減っていき、他社での払い戻しが全てのカードでできるようになっても、[クレジット]の印字と暗証番号での決済だけは健在でした。しかし、2020年に改正割賦販売法が施行されると同時に、突如として終わりを迎えます。

JRカードサービス変更のお知らせ

クレジットカードを持てるまであと3年というタイミングで、JRカードを欲しいと思っていた理由の9割が無くなったショックはあまりに大きく、生まれた年を恨みました。

それでも、やはり1度欲しいと思ったものが手に入るのであれば、申し込んでしまうのが人間です。11枚目のカードとして気がついたら受話器を握っていました。しかし、繋がらないのが現代のコールセンターで、問い合わせフォームを利用して3日後に速達郵便が届きました。

未だにインターネット申し込みができず、JR時刻表だけがその存在を伝えているそのカードは、申込書も時代が止まっています。有名な話ですが、これでも契約条件変更などによって2020年に印刷した版です。

パンフレットに20歳以上(学生不可)と書きながら、申込書には学生の項目がある、そんな矛盾にも気がつかず18歳の年齢を書いて投函しました。Webだとすぐ入力できるフォームも、紙だと特別感があります。

三井住友カードはネットで申し込むと、2営業日で審査を終わらせて3営業日目には印刷に入ります。しかし、郵送でも2週間もあればカードを届くだろう、などと甘く見ると痛い目にあいます。

9月10日に投函して、集荷が11日、さらに大阪までの配達には3営業日かかります。そこから審査を開始し、Vpassに追加されたのは23日、そこからさらに待って、カードが届いたのは10月6日でした。

ところで、パンフレット、Vpass、カードでそれぞれ券面に差があります。最も違うのが、Vpassアプリに表示される券面。PCからアクセスすると画像が無いのですが、このパルテノン神殿はVisaにしかありません。

Vpassアプリに表示される券面

取り寄せたパンフレットではほとんど合っていますが、国際ブランドのロゴだけが違います。

パンフレットに載ってる券面

そして、実際に届いたカード。世界地図をデザインした独特なもので、なぜか文字が集中する部分にかぶせてあります。パンフレットとは違い、マスターカードのロゴが新しくなっていませんが、タッチ決済は載っていませんでした。オムニカードのロゴとJR6社併記のカードというだけでも作る甲斐があるというものです。

カードに同封されているご利用案内には、JNRのロゴが残っています。これも2020年の規約改正に合わせて印刷された版です。

そんなあこがれのカードでしたが、[クレジット]表記すら無き今、もはや持ち歩くメリットはありません。毎月1円使って、年に1回リボ手数料を発生させる以外に使う場面は無く、死蔵カード入れに直行してしまいました。


JRカードが発行を終了してからの世代のために、申込書とご利用案内それぞれのスキャンデータを残しておきます。JRカードがnoteよりも長生きすれば良いのですが。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?