舞台「あいつが上手で下手が僕で」感想~推し俳優だらけのドラマが舞台化したら全てを愛せなくても好きになってしまう~
●はじめに筆者の説明と諸注意
舞台カミシモの感想。前半は肯定的な感想、後半は否定的な感想があるのでお気に召す方だけどうぞ。
※筆者は元お笑い好きかつ2次元アイドル好きで現イケメン俳優好きで舞台は超初心者。リアルの芸能人に幻滅して物語の登場人物にしか肩入れできなくなったのでアニメや実写の芸能モノを渡り歩いている途中である。刀ミュはキャラクターのまま地上波のテレビ番組に出るのが斬新すぎて大好き。最推し俳優は崎山つばささんだけどキャスト全員推し。事前情報だけで期待しすぎて笑いが止まらなくなるくらい。
※ちなみに12月9日の配信分しか見ていない。そしてその後の記憶だけで書いているので不確かな部分が多数あります。
●島世紀の高感度上昇
ドラマ版とは違って高感度が上がったのが島世紀である。
島はすぐキレるすぐ殴るトラブルメイカー、泉州のガラ悪いけど気さくなお兄さんを絵に描いたような人物である。そしてたこ焼きパーティを率先したり騒ぐのが大好きである。
こういうガラ悪い人が私は大変苦手な人物である。しかし島と私の共通点があり、テレビに出ることに重きを置いていることである。島は作中「免罪符」と表現した、テレビに出ることで家族やまわりの人物に芸人だと認められるという姿勢に共感したからである。
現代はウェブ配信にも映像コンテンツが山程ある。しかしテレビ(とくに地上波放送)は出演することがステータス化、ブランド化されている。そしてそれはテレビ好きの高齢者だけじゃなく若年層にも通じるものである。
例えば『ミュージカル刀剣乱舞』の刀剣男士が『FNS歌謡祭』に出演したときの刀ミュのオタクたちだけでなく2,5次元俳優オタクまでも大騒ぎする様子、そしてテレビを通じて両親祖父母に刀剣男士を説明する刀ミュファンたちの姿が見られた。このように、地上波放送はインターネット普及以前から存在しほとんどのの家庭に普及したメディアゆえに未だに大きな影響力を持つ。
話を戻そう。島はテレビに出て芸人として周りに認めてもらいたい気持ちが人一倍強い。だからテレビ番組の打ち合わせに呼ばれた時はここぞとばかりにオーバーリアクションで対応した。その結果無人島で落とし穴に落ちる番組(元ネタは『アイ・アム冒険少年』?)への出演が決まり島は大喜びするのであった。
私はこの時初めて島に共感できた。私は起きてる間ずっとテレビが点いている家庭で育った。テレビは生活とともにあるものである、テレビに合わせて生活リズムを構成する人生を送ってきた。10代の頃は塾や長時間の通学で見たいテレビが見られなくて辛かった。無職時代に好き放題テレビを見られるようになってようやくテレビへの執着は消え失せてしまったがやっぱりテレビが好きである。それくらいテレビが大好きである。その中でも密着取材系と体を張る系のバラエティが大好きである。だからこそ無人島サバイバルに挑んだ島の番組ものすごく見てみたい。顔整ってるしハイテンション関西人でテレビ映えしそう。
●イヌゲンのネタが笑えた
イヌゲンの二千円札の歌ネタのキャッチーで耳につくメロディが面白かった。一千円札と二千円札の語呂合わせがツボにはまった。イヌゲン声の相性とか互いにタレ目なところとかいい感じよね。
そしてイヌゲンがSNSでバズって注目されてオシャレな服きて雑誌に載る姿がかっこいい。数少ないイケメンの有効活用である。話聞かなかった捏造ライターは最悪だけど。
●巧すぎてはいけない2部のパフォーマンスと役柄解釈
なぜかカミシモにはカーテンコールの後にキャラソンパートがあった。キャラソン発売のニュースには何で売れないお笑い芸人がCD出すのwwwwとびっくりしすぎたし謎すぎる状態だったけど、舞台として成立させるために必要だった。
日本の多くの大衆演劇は1部が時代劇、2部が歌謡ショーの構成で成立している。そしてその形式を輸入したのがネルケプランニングの2.5次元ミュージカルの2部制である。『ミュージカル刀剣乱舞』も上記の構成で上演されているされており、キャラクターがアイドル顔負けのライブパフォーマンスをするのが好評を博している。
舞台カミシモもこの2部制を導入した。キャラソンなのでキャラのまま歌って踊る。しかし彼らは売れないお笑い芸人であるから巧すぎてはいけない。巧いとリアリティが減る。アイドルやればいいじゃんと突っ込まれる。しかし俳優さんたちは2.5次元ミュージカルの第一線で活躍する歌と踊りがものすごく巧い人たちである。ここで求められるパフォーマンスは唯一つ、「巧すぎてはいけない、ギリギリ魅せられるレベル」にすることである。
というわけで舞台カミシモの2部では湘南劇場の芸人たちによる「巧すぎてはいけない、ギリギリ魅せられるレベル」の歌とダンスが披露された。特に目を引いたのが時浦の猫背と腕が伸び切らない曲がった動きである。時浦はハガキ職人でインドア派な性格なのでこれでいいのである。役者さんがアーティスト活動もする鳴宮も下手そうに踊るが鳴宮の動きなのでそれでいいのである。
逆に湾野はアイドル志望で踊れる設定(ソース見つからないけど)らしいから上手に踊る。キャラの動きで踊るってこういうことなのか、動き方で誰かを演じるってこういうことなのかという感動があった。そういうところも、プロなんだなぁ。
●正直萎えてしまった舞台版とその理由
初見の感想、ドラマは面白かったのに舞台はつまらない。がっかりした。想像と全然違った。
リアタイできなかったので配信を再生しながらそのつまらなさに耐えられずに途中で止めた。そして間2日開けてしまった。仕事終わりに観る体力が消えてしまうくらいだった。
ドラマは、ドラマだから面白かったのかもしれない。長回しで臨場感ある作りだったりBGMつけられたりカメラワークの切り替えだったり一番つまらないネタ部分をばっさりカットしてそれを笑いに変えていたことに気付かされた。
ではカミシモ舞台版のどこがつまらなかったのか説明していこう。
舞台版はドラマ版の続きである。芸人は一緒である。しかしスタッフが一新している。前支配人は女性問題で首になり、新しい支配人サカタとスタッフとしてカジが登場。客のギャルとマニアの代わりとして劇場のお客さん(冒頭のエクソダスの漫才で「2人しかいないはずなのに1000人くらいいる」とネタにしている)。個人的推しのもぎりのモギはどこにいったのかわからない。さらに劇場の象徴的存在の前田ダイヤモンドヘッドはブレイクしてテレビ出演していた。どうして、どうして?芸人以外いなくなってしまったの?SHONAN劇場は変わってしまった。そしてログハウス風のセットも消えてしまった。私はあの楽屋の声が丸聞こえのごちゃ付いた雰囲気が好きだった。酒と麻雀と殴り合いと前田ダイヤモンドがいるSHONAN劇場の楽屋が好きだった。
そして何より一番ショックだったのが舞台特有のテンポに変わってしまったところだった。私はドラマ版のスピード感と長回しゆえに失敗できない環境から生じる緊張感が好きだった。それがわかった。舞台だと編集できない、2時間の尺、音響の問題等で同じようなことが再現できないのはわかっている。それは仕方ない。舞台はドラマと同じセットでできないのはわかっている。それがショックだった。
『舞台カミシモ』のセットは2階建てで巨大なスクリーンを6枚使って場面変化を表現している。劇場の背景もドラマ版をベースに変更されている。そこが一番悲しかった。事前の宣伝で湘南劇場に来たお客さんのような気持ちで観てほしいと言っていたのに違う。それもショックだった。
さらに追い打ちをかけたのが大好きな推し俳優・崎山つばささんが必死に全力で笑い取る姿に萎えてしまったところだった。ただでさえすぐ人を殴る鳴宮良が地雷なのにニュージーランドの赤ちゃんのモノマネが大変かっこ悪いwおまけに2いいねしかもらえないくらいスベってるし擁護できない。おまけに赤茶色のスタジャンにツータックのパンツの私服がパチンコ屋常連のガラ悪いおじいさんみたいだし、巻き髪全く似合わないし、最強にかっこ悪い。推せない。崎山つばさは大好きだけどやっぱり推せない。でも、顔と声は大好きな崎山つばさだからさ、時々特有の柔らかい声を効いてしまうとどうしても気になる。でも最強にかっこ悪い。私は崎山つばささんの全ての役を知らないけど基本的にイケメン俳優はかっこいい役しかやらないから衝撃的だった。やはり私は崎山つばささんは石切丸か東良啓介か素の状態が好きである。
●しかし湘南劇場メンバーのへの愛着はある
ドラマと舞台とカミシモを観て彼らのことが好きか嫌いかと言われたら、好きである。殴り合いとギャンブルが横行しているしお金なさそうなところとか気に入らないところもあるけど好きである。顔のいい男性達の集まって騒いでいるところを見るのは好きである。ネタはつまらないけど楽屋トークは面白い
から好きである。
ちなみに私の最推しはこれまで一言も触れなかったけど天野である。お笑い芸人なのに一切笑わない性格と作家志望なところと喧嘩にもギャンブルにも興味なさそうなところである。
そんな天野がタイムパトロールでやってきた未来人なのには古のオタク心が萌え上がってしまった。現代ものに突然SF要素が流入してきたのは戸惑ったけど、結果的に別方向の萌え属性にヒットしたので天野がますます好きになってしまった。
以上で私の舞台「あいつが上手で下手が僕で」の感想は終わりである。後味が悪くてもキャラクターと役者さんに愛着があるからどうしても愛してしまうコンテンツ、それがカミシモである。カミシモが大好きではあるがその全てを好きになれない。でも円盤を特典映像とオンラインイベント目当てで特設サイトで申し込む程度にはファンなのである。
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