記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

ゴースト&レディ 千秋楽と原作を比較しまくった話

こんにちは、あさぎです。

「ゴースト&レディ」
沼に肩まで浸かってしまいました。だいぶ遅れましたが、今回は配信で東京公演の千秋楽を観たのと、原作を買って読んでみたので合わせて語っていきたいと思います。前回もたくさん語りましたが、話の分析の方が多くなってしまって舞台セットの話など言いたいことのうちの半分も言えてなかったので、今回は長めになるかと思います。芝居ヲタクの枝葉末節も多々ありますが、斜め読み程度でお許しを…

一応、参考程度に前回のnoteも載せておきます。
今回は長くなりそうなのであらすじを割愛していますが、こっちでは書いているのでよければ(駄文ですが)↓↓↓


ちなみに原作はさすがに千秋楽には間に合わず、配信を見てから読み切ったのでグレイの人物像が若干迷子です。でもいろいろと見方が変わった部分もありました!!名古屋か大阪か、遠征してでも観に行くべきかと迷っております。学生なんだから勉強に集中しろって話なんですけどね。

※舞台・原作ともにネタバレ注意


さて、前置きが長くなってしまいましたが、本題に入ります。
今回はとにかく文章量が多いので、好きなシーンをひたすら羅列してみる方式でいきます。まとまりがなくてすみません。

まずは一番初めの街灯に灯がともるシーン。灯が魂のように青く揺蕩い、ふわっと消えるとともにグレイが現れました。とても神秘的で、謎めいていて、美しかったです。お気に入り。
そしてグレイが歌い始めると空気が一気に変わる。この流れが何度見ても好きです。またそれまで静けさの中にいたのに、自分のことが見える人間=私たち観客の存在に気づいて喜ぶところがいいですよね。観客に問いかけるグレイ、お茶目で大好きです。

続いて、これは前回も書きましたが、ドルーリー・レーン劇場の客席がこちらを向くようになっている舞台セット。演者が手前に立ち、私たち観客に背を向けているんですね。役者ではなく観客を眺める観客、という構図。面白くて好きです。

次に、グレイとフローに見えている世界について。舞台ではほとんど触れられていませんが、人の魂って原作だとうるさいんですね。人の強い感情は「生霊」として頭上に現れて、その感情を向けた相手を攻撃してしまうんだとか。この人といると疲れるんだよなー、という現象はそういう訳だそうです。それがグレイやフローには常に見えているので、うるさくて仕方がないと言っていました。嫌だなぁ、そんな風に見える世界…しかも、フローについている生霊は他人ではなく、フロー自身を攻撃していたそうで、グレイは「こんな奴は初めて見た」と言っていました。そりゃしんどいですよね……
ただ、そんな人々も舞台を見ている時には生霊を出さないのだそうです。私は芝居を愛する者として、この設定とても好きです。
舞台ではこの設定が簡略化・単純化されており、グレイの決闘シーンは「生霊を殺す」のではなく、「人の魂を麻痺させる」と表現されていました。こんな風に原作のイメージはそのままに設定をわかりやすくするって、意外と難しいですよね。すごいなぁ。

そして次のシーン、驚いたのはアレックスって、原作には存在しないんですね!!!!ってこと。アレックスは舞台だとフローの婚約者として登場する誠実な男性ですが、原作ではフローは「結婚は諦めている」と言っていました。この設定を付け加えるの、かなり際どいですよね。原作ファンからしたら誰やねんってなりそうだし。でも実際は役作りが本当に細かくて、どこまでも誠実な人なんだろうというのが感じられましたし、作中に出てくる「something four(結婚式に花嫁が身に着ける4つの物)」という言葉を作品の要素として大切にしているのが分かって良かったです。アレックスは結局フローから結婚はできないと告げられ婚約は破談になっていましたが、何か違う形で役に立とうと建築士として協力しています。また、アレックスは最終的にクリミアでフローと共に働いていたエイミーと結婚しているのですが、節々から彼にとっての一番はフローであり続けたんだろうというのが伝わってきます。
これは想像ですが、彼、エイミーにはフローのために用意したのとはまた別の「something four」を渡しているんだろうなと思います。使いまわしとか絶対しない人だろうなと。そういうことが容易に想像できるほどの役作り、尊敬します……

あとはボブが原作だと青年ではなく少年だったり、もう少し頼もしいというか、鋭いところもあったり。でも彼は相変わらず素直で優しくて、かわいらしいです。推せますよ、彼。原作だとボブという人間の温かみを感じられるやり取りもいくつかあるので、気になった方は読んでみてほしいです。
さらに、時系列が少し違ったのも印象的でした。舞台だとフローは自分の力で看護婦になり、クリミアに行くという話になった際に家族の反対を受けてグレイの元を訪れていましたが、原作ではグレイに懇願しに来た時そもそも看護婦として働くことすら叶っていませんでした。

このように、少しずつ違う点があるんですよね。個人的な意見ですが、原作のフローの方が「強い女性」というイメージが強い気がします。見回り中にホールに差し向けられた男性二人に襲われアレックスに助けられるシーンがありましたが、原作ではフロー自身ががグレイに教わった方法で冷静に対処し、自分で拘束までしていましたし。グレイいわく、フローを蝕んでいた生霊を初めにグレイが倒したことでどんどん強くなっているとのことでしたが、舞台でもフローは少しずつ強くなっていましたよね。これが原作だと顕著だったかなぁという印象です。
それと、原作のグレイの方がフローの夢に対して協力的と言いますか、早く絶望しろとかいう割にはなんだかんだで手助けが多かったような気がします。舞台だとフローのとる行動は全て自分自身で考えたものでしたが、原作ではグレイが「戦い方」をフローに教えている描写があります。味方をつけろだとか、手段は選ぶなだとか。先ほど書いた襲われたときの対処もその一つです。これに関しては自分以外にフローを殺されるわけにはいかない、と言えば説明がつきますが、それ以外で知恵を貸すのはフローの夢をかなえる手伝いに直結しますよね。グレイはもうこの時点で、フローに惹かれていたのだろうと思います。原作だと時々グレイの感情が揺らぐシーンがあるので心情の変化が見て取れて好きです。こういうの大好物。でもだんだんと惹かれていくのが分かる舞台でのグレイの変化もとても好きです。身悶えしかしてませんもの。
まあ要は、原作の方がグレイの立場が「フローに憑いているゴースト」というだけでなく「戦友」に近かったように感じた、という話です。

ただ、グレイの人物像がなかなかつかめていなくて。彼、かなり優しいので文句は言いつつも頼まれるままフローについて行っちゃったり、絶望しろとか言いながらなんだかんだ手伝っちゃったり。もちろん、周りの人間の言動が気に食わないからというのもあると思うのですが、フローに惹かれる前からなんやかんやで超優しいんですよね。でも「こういう女が絶望するところを見たいなぁ」とか言ってる辺り、かなり趣味悪いですよね(笑)。なら優しさが両立している性格ってどうなの???私の前回のnoteでは、本当は自分の弱さを正当化し、自分を守っていたのではと考察しましたが、今回改めて考察し直すとしたら、これに加えて人を信じるものかという思いがあって、どこか素直じゃないところもある、趣味は悪くて擦れているけど、最後まで悪者になり切れない、真面目になり切れない人という人物像が浮かびました。彼が劇場に居続けた理由は、自分を裏切った女性がまた舞台に立つところを観たかったなぁ…という思いからだそうで、素直じゃないのに、不器用で希望を捨てきれない、諦めきれない、飼い主を待つ子犬のような謙虚なところが前面にでているなぁと思って観ていました。だからかわいらしく見えるんですかね。
あとはシンプルに、何年も劇場にいて退屈していたのはあるんでしょうね。
まだまだ考察し甲斐があります。キャラクター設定がしっかりしすぎて実在する一人の人間を観察しているような気分です。

次。これに関してはしょうもない感想しか出ないんですけど、グレイがフローのお姉様とメンジーズ(軍人さん)に向かって息を吹きかけた時に息が届いた辺りがふわっと白くなって二人が身震いするんですよね。原作でグレイがゴーストは寒いとか言ってましたが、そういう表現なんでしょうか。とにかくそのいたずらが可愛すぎて、現役JKの私ですがテスト期間だっていうのに三日くらい引きずって頭抱えました。個人的すぎる感想ですみません……。なんせどちらも緊迫感たっぷりのシーンだったので私も配信と合わせて3回目のときにやっと気づいて(鈍すぎる)そのシーンだけ見返して母とふたりで笑っていたくらいなんですよね。母は「フローに霊気あげるとか以前に、こうやって無駄遣いしてるから霊気が溜まらないんじゃないの(笑)」とか言い出す始末で……こんなお茶目なところがあるのもグレイが愛される要因だろうと思います。私も、グレイの「面白れぇ」という感情を中心とした言動や、逆に物事と真剣に向き合うところ、ギャップ萌えあり、感動ありで虜になっております。
こういう細かい、限られた人しか気づかないような描写までしっかり再現されているところが解像度高くて大好きなんです(笑)
ほかにも、ホールが放った「ドブネズミのくせに」というセリフに反応していたところ。これも配信を観た時に気づいたんですが、グレイがこのセリフを聞いたときものすごく嫌そうな顔してたんですよね。そりゃあドブネズミなんか言われたら誰だって嫌でしょうけど、グレイに対して言われた言葉じゃなかったのに、まるで自分が言われたかのような、そういう顔をしていて。不思議に思ってたんですが、少し話が進むと、グレイが自分が人間だったころの話をする場面があるんです。彼の人生って本人も「裏切りで始まり裏切りで終わる人生」と言っている通り、裏切られることが多かったんですが、中でも主の息子に殺されかけた時に息子が放った言葉が「ドブネズミのくせに」だったんですよね。そういうことか!と。
何度見ても感動する、というのはもちろんなんですけど、こうして見るところが無限にあるのも何度でも見たくなる理由でもあります。舞台は心情を大きく見せなければ観客には伝わりませんから、もちろん演技も大振りになるのが普通なのですが、感情表現は見えないところにまで、細かいところにまでこだわる、というのが素敵だなぁと思います。
そして、そんな感性豊かなキャラクターたちを演じている役者さんたちの表現力たるや!

私は萩原さんのバージョンでしか見ていないので萩原さんの良さしか語れないのですが、オリジナルサウンドトラックのボーナストラックの中に入っている一言、二言だけでも萩原さんと金本さんで演じ方にかなり違いが見られて面白かったり。「私、こっちのキャストしか知らないな……」という方、一度聴いてみるといいかもしれません。私はもはや作業用BGM化してます。
個人的には萩原さんが「お茶目」「ひねくれている」「面白い」のに対して金本さんの方が「かっこいい」「真面目」「柔らかい雰囲気」の側面が強い気がしてるのですが、実際どうなのでしょう。どちらもグレイの中にある感情と重なるとは思いますが、二人で見比べるとそれぞれ演者側の解釈がありそうです。フローは真瀬さんと谷原さん、どちらも見ているのですが、一言でいうと真瀬さんは「優しい天使」谷原さんは「強い天使」って感じでしたかね。でもどちらのフローにもグレイとの掛け合いで面白いところがあったりして、最高のコンビだったなと思います。
また機会があれば金本さんバージョンも見てみたいです。

萩原さん語りはいくらでもできてしまって、ただでさえだらだら長い文章なのにキリがなくなってしまいますのでなるべく控えておきますが、少しだけ言うならば、「楽しそうに笑うところやお茶目なところなど、素のエンタメ性がグレイにとてもよくはまっていると思う」ですかね。言葉の抑揚がとても綺麗で、かつ笑いを誘うのだと思います。あとこれは前回も書きましたが、さすが振付師、動きも洗練されていて美しかったです。萩原さん、推せます。

それから、これ一番好きなシーンなんですが、フローとグレイ二人で「不思議な絆」を歌うところ。きっと観に行った人なら誰でも好きなシーンだと思います。星空の表現はもちろん、階段の使い方が上手くて衝撃受けました。二人が階段をのぼるとき向かい合ったり、降りるときに前を向いたり……とにかく一度見てほしい。言葉にできない美しさがあるんです!全芝居好きに自分の目で見ていただきたい!!
二人がお互いに自分の気持ちに気づいていくシーンでもあるので、とてもキュンとしました。

ここからグレイの「俺は信じたいものを信じた!」までが一気に押し寄せてくると言いますか、フローとグレイの心がどんどん通じ合ってあのシーンに繋がっていく感じが怒涛の展開で良かったです。あの時のグレイの「絶望したら殺す」という約束を裏切られたにも関わらず見せた、真っすぐで嬉しそうな声色、表情と言ったら……

そして、一番好きなシーン②!フローがグレイと再会して旅立つシーン、これ、ちょっと違うけどチラシとかポースターのあのイメージですよね!?!?最初見た時はグレイの用意した「something four」、特に「これ、お前んちの屋根裏から借りてきた。無断で」に全部持っていかれてしまったのですが(苦笑)、この時の雲から漏れ出る陽光が「天使のはしご」とか「天使の階段」と言われていると知って頭抱えました(本日二度目)
「something four」に関しても、ランプは派手すぎず華やかでとてもよかったなと思います。グレイの言葉を借りるなら、「これが一番、二人らしい」と思いました。

あともう一つだけ!!これも一番好きなシーン③なんですが(厚かましい)、これが一番言いたかったことです。
本当の本当に最後のシーン、グレイが一人で、100年以上かけて私たちにフローの生きた時間と誰も知り得なかった秘密の話を共有し、客席の通路を通って後ろに退場していくところ。舞台上にはグレイから渡されたランプを持ったフローと、溢れるほどの光を放つ大量のランプが吊るされているわけですが、フローとグレイが向かい合うのではなく、あえて二人とも前だけを向いて歩いていること、それと直前にグレイが歌った歌の歌詞!

”もう二度と会えないとしても
おまえのぬくもり いつでも感じてる
またたく星 夜空にある限り
二人を結ぶ 不思議な絆”

考察が捗りすぎて辛いです~!!!
グレイとフローではそもそも生きた時代が違いますし、ゴーストの末路は「永遠にさまよう」か「塵となって消える」か、というところからも、二人の関係ってそんなに簡単なものじゃなかったんじゃないかと思うんですよね。これ、原作では特に追求されていなくて人を殺してもゴーストは消えないっぽいんですけど、いずれにせよゴーストがどうやって成仏するとかどこに行くとか、そういうことが何一つ分からないのが切なさ100倍です。フローの行く先はきっと天国だろうけれど、グレイはどうなのでしょう。
きっとグレイ本人は自分の結末も分かっていたのだろうなぁ……でも、グレイの言う通り、生きた時代が違っていながら二人が出会えたのはグレイがゴーストだったから。フローと出会うためにゴーストになったのだと言っていましたね。本当に、そういうところがどうしようもなく好きなんです。伝われ(語彙力)

でも、これは二人にとって残された中で一番幸せな結果だったと思います。かなり心が抉られましたが後味は悪くなかったです。私メリバ大好き人間なんですが、やっぱり最後はハッピーととらえられる方がいいですよね。みんな、幸せになってほしいです(遺言)


ということで、現場からは以上です。終始やかましくてすみませんでした。語彙力がカスなので「好き」と「大好き」botと化してましたね。読むだけで疲れる文章だったと思いますが、魅力いっぱい伝えたつもりです。マニアックなところも所々あったと思いますが、これでも語りつくせたとは言えないのだから、自分のヲタク魂は恐ろしいとつくづく思います。

そんなゴースト&レディ、東京公演を終えて次は名古屋大阪に行くそうなので、近い方はぜひ足を運んでみてください。きっと素敵な出会いができます↓↓↓


読み比べるととても良いので原作の上巻の方も乗っけておきます。舞台を気に入った方は是非読んでみてほしいです。キャラクターへの愛が促進されて考察が捗ります↓↓↓


私が今回千秋楽を観たのは配信でした。あの場に居合わせたかったとは思いますが、見れて良かったです。配信って舞台の迫力を直で感じることはできないのですが、ドアップで観れるので毎度ならではの収穫がたくさんあって、意外と好きです。一回目は劇場に出向いて客席の空気感と舞台の立体感を肌で感じるところまでが楽しみだと思いますが、二回目以降は配信でこまごまとしたこだわりを探してみよう、とか、あさぎはよくやります。だからこそ今回のように頭を抱えるほど細かくて素敵な場面に出会えることもあるんですよ。劇団四季は円盤とか出さないので、配信してくれてありがたかったです。
でももう一度生で観たいなぁ。
そのうちまた、フローとグレイに会いに行こうと思います。

今回、本当に長い長い文章でしたが、最後までご拝読いただきありがとうございました。またそのうち会いましょう。

いいなと思ったら応援しよう!