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DRESSの情景

NU'ESTデビュー10周年となる2022年3月15日を目前となり、この先どうなっていくかわからない今、書き残しておきたいと、下書きに途中まで書いてしまっていたものを取り出してきたのですが、NU'ESTのことで頭がいっぱいで、なかなかまとめることができず、3月末になってしまいました。どうしても3月15日という日を留めておきたくて3月15日に一瞬公開して、また下書きに戻すというずるい手を使ったので、公開日は2022年3月15日となっています…。
NU'ESTの正規2集『Romanticize』は2021年4月19日に出ました。デビュー10年目にして7年ぶりの韓国2枚目のフルアルバムです......。この待ちに待ったフルアルバムの冒頭1曲目を飾った曲、「DRESS」にまたしてもやられてしまったというお話です。
Pre-Listeningの時も、アルバムを実際に聴いても、一番好きな音は、BASS組のDRESSだったんですけど、この曲のこと、全然わかっていませんでした。歌詞と重ねて曲聴いたら、一気に曲の解像度が上がり、そっか、そういうことだったのかと、Inside Outの活動も終わった2021年5月11日の夜中に歌詞と照らして音を聴いてTwitterで一人大騒ぎしました(それももう大昔の話)。
音だけ聴いても、本当にすごいんですが、歌詞と合わせて聴くと、もうもうもう、いつも通りNU'ESTの皆さん、飛び越えてきました...。そう、いつもこちらの想像を軽々と飛び越えてきちゃうんですよ。
発売から一年近く立っているのに、いまだにこの興奮を上手く伝えられずにいます。本当にもどかしい…。私が言わなくたってみんなDRESS最高って思っていますよね。でも、私にとっての最高を言いたい欲があるので言ってもいいですか?

音が生み出す物語 

音が生み出す物語の構造

歌詞を確認しながら曲を聴いて、本当にびっくりしました。NU'ESTの曲の魅力の一つは、音が歌詞とリンクしているというところだと思っているんですが、ついに音で物語の談話の構造を作ってきました………。
すごい、怖い、すごい。すごいのか怖いのかよくわからない。
この曲は最初の4小節のミニョンパートがイントロ部分ですが、その後からベッコちゃんパートが始まるまでの4小節(00:09-00:17)の音を聴いて下さい。それまで、柔らかな和音でリズムを刻んでクラシカルな雰囲気が漂っていたところに、宇宙の音のようなピューっと最初の2小節で下がって次の2小節で上がる音(表現しきれない笑)が挿入されます。そうなんです、挿入されるって言いたくなるんですよ。音だけで聴いていたときには、ここで雰囲気が変わるなというぐらいに思っていたんですが、歌詞を見ながら聴いたら、この音はプロローグが終わって本編の始まりを示すマーカーになっている?!?!と、それはもうめちゃくちゃびっくりしました。
実は、この音は最後の方でもう一度出てきます。一番最後のべっこちゃんパート「눈동자는 진심이니까~」の「니까」の部分から始まります(2:47-2:22)。同じ音なので、長さも同じ4小節分。イントロの終わりとアウトロの始まりの部分に同じ音が使われているということなんですが、歌詞と合わせて聴いた時に物語の場面展開を作り出しているように聴こえませんか…。イントロの終わりとアウトロの始めに使われているので、そこが区切りになるのは当然といえば当然なんですが、音が下がってまた上がるところが、舞台の幕が上がったり、下りたりするのをイメージするし、本で考えてみるとプロローグと本編、本編とエピローグの間に挿入される空白のページのような感じを音を聴いたときをイメージして、めちゃくちゃかわいらしい。音で物語の構造を作ってしまうというのが本当にびっくりだし、こんなことNU'ESTにしかできないよー---となってます。

音が生み出す情景

もう一つ、NU'ESTらしいなと思ったのが、歌詞と合わせて聴いているとびっくりするぐらい情景が浮かんでくるというところ。NU'ESTの曲はLOOKやMoon Danceのように、歌詞と音につながりが感じられる曲が多くて、それが素敵だなと思うんですが、このDRESSは、歌詞を見ながら聴いているとすごく情景が目に浮かぶんですよね。
映像がないのに、一つの舞台、一つの映画を見ている感じがしますし、静かな夜に本を読んでいる感じがします。映画だったら、カメラワークが浮かんで来るくらい鮮やかに情景が浮かんでくるんです。
あとで、べっこちゃん自身が、DRESSは場面が想像できたらいいと思って作ったと話しているのを観て(ALL ROUND K-POP 'SEOUL MUSIC' 10화)、なんだか「正解だよ」と言ってもらえたようで、うれしくなりました。それにしても、べっこちゃんの意図したことがちゃんと聴き手(私)に伝わっているってすごい。

[보이는 스테이션] 뉴이스트(NU'EST) - ALL ROUND K-POP 'SEOUL MUSIC' 10화 DRESS言及部分【12:04-】
🐯:最大限、歌を聴いた時、場面を想像できたらいいと神経をたくさん使いました。イントロと導入部にエッセンス...そんなことも、なんというか登場するような感じでゆっくりと動くような、そんなサウンドを出したくて、歌詞もなんか僕がお見せしたかったイメージを確実にお見せして、そして「君のためになんでもできる」という言葉をどうやって魅力的にするか、そんなところに神経をたくさん使った曲です。
🐢実はDRESSという曲は、タイトル曲でと考えていた...ちょっと考えていた曲です。
🐰:そうです
🐯:そうです、そうです
🐢:そのくらい力を込めて作った最初のTrackです。

(日本語訳:karanari)

[보이는 스테이션] 뉴이스트(NU'EST) - ALL ROUND K-POP 'SEOUL MUSIC' 10화

DRESS プロローグ

イントロ部分は、サビの辺りのUrban Erectro Bandらしい音・リズムとはまた違って、妙にクラシカルな印象を受けました。そのミスマッチが面白いといえばその通りなんですが、音だけ聴いていたときは、なんでかなと漠然とした疑問を抱いていました。それがもうイントロの歌詞を見て大納得。この歌詞にはこのメロディでなきゃというくらいぴったりじゃないですか。

해를 지운 밤에 종소리 Louder(日を消し去った夜に鳴り響く鐘の音)
널 위해 나는 진실의 가면을 써(君のために僕は真実の仮面を被る)

NU'EST  / DRESS Lyrics by BAEKHO, BUMZU, Jay & Rudy, Glenn(PRISMFILTER)
(日本語訳:karanari)

物語の始めに、プロローグとして、物語を暗示するためにある情景が示されることってあると思うんですが、この曲はまさにその雰囲気を出しています。最初のフレーズでは、日が沈み、夜の帳が下りてきたころ、ヨーロッパの古い町の中心にある教会の鐘がリンドーン、リンドーンと大きく鳴り響いている様子が目に浮かびます。しかも”Louder”とあり、鐘の音が共鳴してどんどん大きくなる様子をイメージします。少しクラシカルな印象だと思ったメロディも、柔らかいピアノの和音でゆったりと刻むリズムも、古い町並みや教会のイメージにぴったりですよね。いや、教会って一言も言ってないですけど。
次のフレーズでは、この歌のキーワードともなる「仮面」が出てきます。場面が切り替わり主人公が映し出されてすっと仮面を被る。…...…4小節の短いイントロで物語の入口をがっちり作っています。
映画や舞台のように情景がはっきりと浮かぶこの部分ですが、一方では、本を読んでいる感じもすごくするんですよ…表紙をめくると真っ白いページにプロローグとだけ、縦に印字してあり、さらにめくるとこの二つのフレーズだけが書かれているといった感じで、本の余白まで、音と歌詞から感じられるんですよね......…。
そして、「널 위해 나는 진실의 가면을 써(君のために僕は真実の仮面を被る)」という表現は、後で出てくる「君のためになんでもする」の伏線になっているのかなと思いました。べっこちゃんが「「君のためになんでもできる」という言葉をどうやって魅力的にするか、そんなところに神経をたくさん使った曲」(上述の「ALL ROUND K-POP 'SEOUL MUSIC' 10화」の引用箇所参照)だと話していましたが、そういった工夫の一つのように感じました。

イントロを担当するのはミニョンさんです。ミニョンの声が聴き手を物語の中に一気に引きこむような力があって、本当にぐっときました。ミニョン自身も、Weverse Magazinでイントロを上手く歌うために研究して練習して、上達できたので良かったと話しています。

この曲は、前奏がなく、いきなりブレスから歌が始まります。冒頭で、息を吸う音が聴こえると思います。すっと息を吸って歌い始めることによって、物語の「語り」の印象が強くなり、ミニョンさんが物語の「語り手」となり、物語を始めているように聴こえてくるんですよ…。
もうなんか物語脳(物語脳?)になっているので、全ての音が物語を作り上げているように聴こえてきてしまうんですが、聴き手がそう考えたときに、そう考えることが可能である曲であるというところがすごいなと思います。作り手の意図とは違うとしてもそういうことを際限なく考えさせる曲なんですよね。すごい!NU'EST!大好き!

DRESS 動き出す物語

イントロ部分の最後、「eh eh eh eh」とビヨ~~ンというパーカッション(ビブラスラップ的な何か?)で次の部分(いわゆるAメロ)の始まりを示し、ベッコちゃんパートになると、イントロのゆったりとしたリズムから、一変して刻むリズムも早くなり曲が動き出します。また、ミニョンの声からべっこちゃんの声に変わることで、視点が、語り手から主人公の視点にすっと移るように聴こえます。イントロのミニョンパートでも、こちらのべっこちゃんパートでも、「僕(나)」が出てくるんですが、イントロの「僕(나)」はあくまでも「語り手」であるミニョンが物語を読み上げているのに対して、べっこちゃんのパートになると、主人公の目線でその場を見ているように聴こえてくるのがすごく楽しいです。

この部分の歌詞ですが、主人公が「君」に惹かれる瞬間を感情で表現するのではなく、主人公の目線で情景を描写することにより間接的に表現しているところがとても好きです。本当に映画の1シーンを見ているようで...。曲を聴いているのに、「見ている」と言いたくなってしまいます。
「君」が仮面舞踏会の会場に入って来た瞬間、目を奪われ、「君」しか見えなくなってしまう主人公の様子が「すれ違う君の目を追う」、「全てが止まってしまった夜」で全て表現されているのがすごい。カメラが主人公の目線を表し、彼女の動きに合わせて彼女を追うことですれ違う様子を表すカメラワークや、スローモーションで撮って周りの喧騒が聞こえなくなるような演出が勝手に脳内で再生されています。

스쳐 지나는 너의 눈을 따라가 Yeh oh baby (すれ違う君の目を追う)
너의 춤 Step에 나를 맞출게 Yeh yeh
(君の踊りのステップに僕を合わせるように)
모두 멈춰버린 밤(全て止まってしまった夜)

NU'EST  / DRESS Lyrics by BAEKHO, BUMZU, Jay & Rudy, Glenn(PRISMFILTER)
(日本語訳:karanari)

そして、「Baby just let it be」(00:34~, 1:40~)から始まるJR君パートで聞こえるシンバルの音(タンバリン的な音)。イヤホンで聴くと右から左へ、円を描くように音が移動しています。この音の動きが心地よく、また踊りの動きを表しているようですごくお気に入りです…ちょうど4周します。この曲を聴いているときに、カメラの動きが脳内再生されるのって、もしかしたら、こういう音の動きがあるからかもしれないとちょっと思いました。

このシンバルの音のすぐ後、サビの直前に、この曲のキーワードの一つになっている「가면」(仮面)という言葉が出てきます。「가면」(仮面)はイントロ、サビ直前2回(1回目ミニョンパート00:43~, 2回目ベッコパート1:48~)、歌の部分の一番最後と4カ所出てきます。最初と最後の「가면」では僕について話していて、サビ直前の「가면」では、君の「가면」について言及しています。君に仮面を下ろして両目で話してという部分、本心を見せてと頼んでいるところなんですよね。あれ、自分は仮面を下ろさないのに、君には仮面を取ってと頼むんだ…と思いましたが、自分は「真実の仮面」を被っているので、仮面の中に見える「瞳」によって既に本心を見せているということなんだなと納得。最初と最後の「가면」は僕について話しているという点で共通していますが、「진실」(真実)と「진심」(本心)と韻を踏んで、対にしているのもすごくいいなと思いました。
「가면」(仮面)ほかにも、「눈」(目)、「두 눈」(両目)、「시선」(視線)、「눈동자」(瞳)と目に関する言葉がたくさん使われていて、「目」で「見る」という行為によって言葉を発さずに本心が語られるという設定が素敵です。映像化するなら、二人が何もしゃべらずお互いに見つめ合う様子をカメラで360度ぐるっと回って撮影したい!

イントロ部分の「가면」

널 위해 나는 진실의 가면을 써(君のために僕は真実の仮面を被る)

NU'EST  / DRESS Lyrics by BAEKHO, BUMZU, Jay & Rudy, Glenn(PRISMFILTER)
(日本語訳:karanari)

サビ直前の「가면」

가면을 내리고서(仮面を下ろして)
두 눈으로 말을 해줘(両目で話して)
너는 나의 V.I.P. Oh yaya(君は僕のV.I.P.)

NU'EST  / DRESS Lyrics by BAEKHO, BUMZU, Jay & Rudy, Glenn(PRISMFILTER)
(日本語訳:karanari)

歌の一番最後の「가면」

내 가면 속(僕の仮面の中の)
눈동자는 진심이니까(瞳は本心だから)

NU'EST  / DRESS Lyrics by BAEKHO, BUMZU, Jay & Rudy, Glenn(PRISMFILTER)
(日本語訳:karanari)

さて、最後の「가면」が出てくるところで、「チンシミニカ~!!」とべっこちゃんが叫ぶように歌って、歌が終わります。この部分は、曲の中で、ブリッジとなっています。ブリッジとは、通常コーラス(サビ)への繋ぎとなるものなんですが、この曲だと、橋だけ架けておしまいなんですよ!!!もうもうもうすごすぎませんか?盛り上がってすぱっと終わらせてしまうというこの展開に本当にびっくりしてしまいます。物語は途中じゃないの?????な気分のままエピローグへ!!!!!!

DRESS エピローグ

「音が生み出す物語の構造」のところで既にお話しましたが、「진심이니까」の後、イントロとアウトロの区切りに全く同じ音が使われており、曲の構成、物語の構成が明確に示され、アウトロ、つまり物語でいうところのエピローグに移ります。アウトロは、8小節分あるんですが、歌はなく音だけで終わりとなります。この音がおおー--っと驚いてしまったんですが、「When you say "oh my gosh"」から始まるコーラス(サビ)の部分(0:50~、1:57~)の下の音が使われています。物語の途中でぽーんと放り出されてしまったかのように思わせておいて、ブリッジはちゃんとコーラスにつなげていたんですよね…。
8小節にも意味があって、ちょうど「When you say "oh my gosh"」から「Baby, oh my gosh, oh my gosh」まで(アロンさんの「24/7, I love ya, I love ya, I love ya, ay」の前まで)が8小節になるんですが、その長さにきっちり合わせています。
アウトロが、実はコーラス(サビ)を想起させるものだったという作り自体にも驚くし、コーラス(サビ)の音を用意しておいて、あえて歌を入れないというのにも本当に驚きました。物語でもラストを曖昧にして余韻を残し、結末は読み手に委ねるという書き方があると思うんですが、それを曲で、音で、NU'ESTは、やっているんだよね…。いやいや本当に鳥肌が立ってしまうすごさ…。しかも、私がNU'ESTの好きなところは、解釈を聴き手に委ねるところだと常々(勝手に)思っているんですが、こんなにかっこいい形で委ねてくれるって、本当に何回NU'ESTのことを好きになればいいのかわからないです。

終わりに

DRESSを初めて聴いた時、音の面白い要素が多くてすごく楽しいけど、一般受けする感じとは少し距離のある攻めの曲だと思ったので、それがフルアルバムの1曲目となっているのが少し意外な気がしたんですよね。でも、物語のように展開し幕開けから始まるこの曲は、アルバムという物語の幕開けとしてぴったりの曲だなと思います。先ほどのALL ROUND K-POP 'SEOUL MUSIC' 10화で、JRさんがタイトル曲として検討していたと話していましたが、タイトル曲になりうるこの奥行きのある曲をアルバムの1曲目に迎えることができるって贅沢なことですよね...。NU'ESTの皆さん、素敵な曲をありがとうございます。
今日は2022年3月30日です。発表があってから1か月が過ぎました。こんな時にも、NU'ESTの曲から驚きをもらっているよ~ということを感謝の気持ちとともに残しておきたくて書いては見たものの、NU'ESTのすばらしさにただただ驚くという、いつものお話になってしまいました。でも、曲を聴いてこんなにあれこれ考えてしまうのってNU'ESTだけなんです。NU'ESTのことを知ることができた自分は本当に幸運だったなと思います。
5人の新しいこれからの姿も見ていきたいなと思っていますが、NU'ESTとしての5人の曲にこれからも何度も驚かされるんだろうなとも思ってます。それは振り返るものではなく、多分NU'ESTの5人の方から、飛び越えて来てくれるんだろうなと。いつものようにね!

夜中に大騒ぎしていたTweetはこちら
見出し画像:Instagram optimushwang_20200329(https://www.instagram.com/p/8YYg64E762/

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