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事故と告白

20210820

先日、事故った。

妻が運転する車に、娘と僕と、乗っていた。

このところの雨やらで、主要道路が通りづらくなっていて、迂回路になっている山道を走っていた。

ケータイで将棋をさす。
ふと何かヤバそうな気配がする。
顔をあげると、左側の山が迫っていた。

そのままガタンガタンとゆれる。道路脇の溝にタイヤが取られたらしい。
どうにかしようと妻はハンドルをきる。
そして加速する。
道路に対して斜めになった車が、減速するのでなく、スピードをあげたのだった。振り返って一番ふしぎな、一番怖かった時間。

テンパった妻は、ブレーキとアクセルを踏み間違えたらしい。
そのまま崖側のガードレールにぶつかった。そして止まった。

さいわい登り坂で、直前に急カーブがあったのことも重なって、加速してもスピードは知れていた。
ガードレールをぐにゃんと曲げて、車体右前方が潰れるだけで、事なきをえた。

急いで降りて、動転してる妻と娘の様子をうかがいながら、警察やら保険会社やらに電話をかける。

僕は僕でテンパっているのだけれど、妙に冷静に懐かしくなる。
ああ何年か前に同じことがあったと思い出す。

まだ娘が妻のお腹にいるころの冬、僕は一人で横転し車を全損させていたのだった。

今回と状況は似ていて、山と崖の間の道で、僕は下り坂だった。

雪が溶けかけのシーズンで、下りのスピードのまま、タイヤが雪にとられた。

ブレーキの効かぬまま、左前方が山側にぶつかって、そのまま横転し、そこからバウンドして戻り、ガードレールに突っ込むという、曲芸みたいな事故をやってのけてしまっていた。しかも無傷(後々首やら肩まわりへの後遺症がでる)。

車からは煙があがっていたので、それは恐ろしくて、荷物を集められるだけ集めて、離れた。

そして、訳もわからぬまま、警察に電話していた。

その時の経験があったからか、このたびの事故は、比較的落ち着いていた。

自分が運転していなかったってのもあるだろうし、相手方がいたわけでもない。なにより、ひとりでその場に対応しないといけない状況でもなかった。

いろんな方に助けてもらいながら、淡々と状況は進んでいく。

3年ほど共にした車と、ガードレール以外は無事で、ことなきを得る。

家にもどって、ゴロゴロとしながら、あのままガードレール突き破ってたら死にかけてたなあと、妙に冷静に思い起こす。

その反動か、ああ授かりモノの命、味わい尽くしたもん勝ちだなあと、ふっとそんな気がする。

前回の事故の後は、そんなこと思いもしなかった。

別にどちらがいいとかではないけれど、たしかな変化を実感する。

そして、今の僕には、今の僕の実際の方が好きですと、自分で自分に告白する。

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