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車がほしくなった日

このマスクなご時世。窮屈さもここまでくれば慣れというもの。

顔が見えないことに対して、あまり考えなくなってきた。

テレビで芸能人やニュースキャスターの代わり映えしない顔を見ても、なんか近所の人のように親しみやすいを通り越し感激することもなく、素通りしてしまいそうだ。

そんなことを思いながら、テレワークの昼休み。

昼ごはんを早々に終わらせ、近所のスーパーへ。
マスク人たちに囲まれながら、夕食の食材を買う。

ため息混じりの帰り道、大通りに出て信号待ちをしていた時だった。

最近の車はバンタイプのようにでかく、車内はゆったりしているものも多い。
そんな中、ワインレッドの車が私の目の前をゆっくりと通りすぎる。

少し化粧が強めか、でも目鼻立ちはしっかりとし、髪は少しウェーブをつけている。
まさに大人の女性を演出しているかのようで、エレガントさを醸し出していた。
そんな女性が、どうみても新車と思しき車の助手席でマスクをせずににこやかに隣のイケメン(よくは見えなかったが)男性の運転する車に乗ってドライブを楽しんでいるようだった。(楽しんでいるかは妄想なのでなんともいえないが)

そうか。
車内ならマスクせずに異性と語り合うことも可能なのだ。
なんで気づかなかったんだろう。

そう思いながら、他の通りすぎる車を見ると、にこやかに話をしながらご満悦のカップルもいる。
この人たちはマスク世界とは無縁なのだろう。
と思いながらも、素直に羨ましいと思えた。

ワタシが車を買ったら、買ったら、あんなことや、こんなこともできるかもしれない。

目の前の信号が青くなった。
私の明るい未来への道が見えたような気がした。

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