物質のヴェールをめくって
『野口整体の「方法」講座 第二弾』がおかげさまで盛況の内に終わったのも束の間、オンラインでの『老いの美学』講座が始まるので、そちらも頭をフル回転させながら第一回を迎え、何とか無事に終えることができました。
どちらも気合いを入れての新講座だったので、ここ一ヶ月くらいはずっとどこか落ち着かないままに、ひたすら本を読みあさって勉強ばかりしていたような気がします。
『方法講座』は今まで自分の積み重ねてきたことの振り返りとアウトプットが主題となり、『老いの講座』はこれから自分が歩んでいく未来への投げかけが主題となるという感じで、自分の中でもなかなか大きな振り幅を一気に凝縮したような、ここ数週間でした。
「方法」を取り扱うにせよ、「老い」と向き合うにせよ、その眼差しが表面的な部分ではなく、奥にある見えない部分や構造に向かっていることは共通しています。
とくに「老いる」ということは、その先には誰もが避けては通れぬ「死」というものがあります。
「人が死ぬ」ということは、言わばこの慣れ親しんだ物質界から退場するということです。その先どこへ行くのかあるいは行かないのか、それは分かりませんが、いずれにせよ「私が物質界から消え去る」という事態を取り扱うのに、物質主義的思考では手に負えないのは明らかです。
今からこの慣れ親しんだ肉体という物質をすべて手放そうというのですから、まあ当然と言えば当然でしょう。
ですから、目に見える世界に現われている物質の、その奥にある法則なり精神なり物語なりを取り扱う、そんな思想や技術が必要なのです。
その辺りは、今までずっと宗教が取り扱ってきた部分でありましたが、現代人はもはや宗教に力を見ることが難しくなってきています。宗教とどう向き合って、どう付き合っていけば良いのかも忘れかけています。
物質主義的な世界の中で、現代人が信仰し、その力を信じているものは、いまや「お金」に集約されています。神様より即物的で、神様よりパワフルで、神様より分かりやすくて、神様より親しみやすい。「お金」は、いまや世界中の信仰の対象と言えるでしょう。
昔は、老いては功徳を積んで神仏に祈りを捧げることがいわば「老いを迎えるワーク」でしたが、現代は誰もが老後に向けてまずはお金の心配をして、お金を貯めておくことが「老いを迎えるワーク」のようになっています。
世の中を見回しても老いについて語られることと言えば、ひたすら年金や社会保障や介護の問題ばかりで、金銭や物質的なトピックに終始しているように感じられます。
そうやって現代人は、老後の問題はすべて「お金」に集約されることにしてそこばかり見ていますが、どうもそれは「老いる」という人間のプロセスの本質を見誤ってしまう大きな原因となっているような気がするのです。
老後に取り扱うべきは「物質的なテーマ」ではなく「精神的なテーマ」のはずです。もちろん生きている限り「物質的なテーマ」は絶えずつきまといますが、視点の焦点は徐々にその奥へと向かっていくべきなのです。
「若い頃には見えなかったものが見えるようになる」のが、老いて獲得する精神的眼差しです。
それは「若い頃には見えていたものが見えづらくなる」という物質的眼差しとトレードオフではありますが、でもそれは必然のプロセスだと思うのです。
物質のヴェールを一枚めくって、その一つ奥のレイヤーを見つめる眼差しこそが、老いのプロセスを迎えるに当たって必要な身振りだと思います。
そんな「老い」というものについて考える『老いの美学』講座は、まだ第一回が終わったばかりですので、まだまだお申し込みお待ちしております。
終了した第一回含め、参加できない回はアーカイブという形でも受講できますから、ぜひご参加ご検討いただければと思います。
オンライン講座『老いの美学~人生の秋からの過ごし方』
Peatixのサイト ⇒ https://peatix.com/event/3910460
(申込みができない場合は主催者へ直接ご連絡下さい)