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BENNIE K 全アルバムを勝手に解説

前回エントリーの最後に書いた通り、今回は2022年1月24日に活動終了したヒップホップ・ユニットBENNIE K(ベニー・ケー)の、今聴けるすべてのアルバムを勝手に解説していきたいと思います。
いまだ活動終了のショックを引きずっているからふねでございますが、この素晴らしいグループが遺した楽曲の数々を語り継ぐことが、ファンとしての努めと思った次第。
拙い駄文ではございますが、しばしお付き合いの程を。
(以下敬称略)

すぐに聴取頂けるよう、音楽のサブスクリプション配信サービスであるSpotifyApple Musicへのリンクを記事内に埋め込んでおきます。
その他のサービスをご利用の方はお手数ですがアルバム名などで検索ください。
時系列で紹介していきます。

cube

2002年7月24日発売、1枚目のオリジナルフルアルバム。
ワシは「サンライズ」「Dreamland」あたりから聴き始めたので、本作はいわば歴史を遡って聴いたことになります。
リリース当時、CICOは24歳、YUKIは18歳。
ラブソングとか以前にそれまでの人生…学校とか親への不満をエネルギーにして楽曲を制作していたように感じました。
処女作なので…お二人には大変失礼ながら全般的に「拙い」。YUKIの歌は声量も音程もまだ不安定だし、CICOのフロウもまだ一本調子で迫力に欠けていると思います。
この拙さも、今から思えば愛おしくもあるのですが。
何より、全くもって駄作ではありません。
「NAI」で「なーいなーい、マジ興味なーい」と煽るように繰り広げられるCICOのラップは重いリズムトラックとも相まって気持ちいいし、繊細なアコースティックギターが印象的な「SILENCE」は後年のBKサウンドに繋がる芽を感じました。
因みにデビューシングルである「Melody」は「night fly」と銘打たれているアルバムバージョンです。シングル音源は…多分今入手困難でしょうね。

essence

2003年11月5日発売、2枚目のオリジナルフルアルバム。
前作に比べて「トゲ」は無くなって来た模様。
上から目線で恐縮ですが、何かしらへの不満よりもだんだんと周囲が見えて来て、助けてくれる仲間への想いとか感謝を綴った歌詞が増えて来ました。
曲調も前作よりも格段に明るくなりました。相変わらずマイナートーン多めですけど。
「CRYSTAL」「HIDE」「MUSIC」のような前作の曲調をスケールアップしたようなナンバーは勿論あります。CICOのラップに段々迫力が伴って来ました。「ひなだん」のような「女の子のオラオラ系」の曲は、彼女たちでないと演れないでしょうね。
とはいえ「Better Days」は将来の夢とか未来に目を向けた前向きな言葉が目立ちますし(この曲はコラボ曲として後ほど再度取り上げます)、「手紙」「なごり夏」にはヒップホップの枠から飛び出した繊細さを感じます。
最後を飾る「MY WAY」は、尖っていた自分(たち)を内省的に振り返るような言葉が並びます。オケもどこか呪いから解放されたような明るさがあります。
今から振り返ると、次回作以降の快進撃の予兆だったのかも知れません。

Synchronicity

2004年5月8日に発売されたミニアルバム「THE BENNIE K SHOW」を挟んで、同年11月4日に発売された、3枚目のオリジナルフルアルバム。前のエントリーでも書いた通り、からふねが初めて買ったアルバムです。
前奏曲の後で流れる「オアシス」。ストリングスが印象的。海岸沿いの道路をオープンカーで走っているような開放的なオケ。そこにまくし立てるように差し込まれるDiggy-MO'のフロウ。
FM各局でヘビーローテーションとなった「サンライズ」、「SILENCE」や「なごり夏」にも通じる繊細な「Okay」、自己紹介ともいえる「弁慶 vs 牛若丸」、ラブソングである「Puppy Love」「Lost Paradise」…などなど、実にバラエティに富んでいますが、とっ散らかった感じはありません。YUKI、CICO各々のソロ曲も入っていますけど、きっちりと「BENNIE Kのアルバム」として統一感があります。
コラボ曲としてもう一つ忘れてならないのは「天狗 vs 弁慶」。現SEAMOがまだシーモネーターと名乗っていた頃で、当然内容も下ネタばっかり。それでも嫌味に聴こえないのはBK、そしてSEAMO塾長の力量ですね。

以降の2作品はコンセプトアルバムめいた作品になります。

Japana-rhythm

2005年11月9日発売の、4枚目のオリジナルフルアルバム。
日本の四季をコンセプトにしており、全曲通しで聴けば四季を巡る旅が出来るといった感じです。オリコン週間チャートで初登場1位を獲得しました。
チャートアクションに違わず、多分一番完成度の高いアルバムなんじゃないかと思います。
春パートの「ユートピア」はすっかり力強くなったCICOのラップにYUKIの歌がタメを張っています。
夏パートは言わずと知れた「Dreamland」と、大阪府育ちのCICOと、佐賀県育ちのYUKIの自己紹介でもある「OSAGA」でとても楽しい。
秋になると「旅人」「Sky」「Moonchild」とどこか内省的で、寂し気な雰囲気。ここでCICOの繊細でエモーショナルなフロウが聴けます。
冬は、再びSEAMOとコラボした「a love story」。前回とは違って男女が愛を不器用ながらも確かめ合う内容。パーティーチューン「ザ★クリスマス」を挟んで、ラストは「4 seasons」で四季を辿る旅を締めくくります。
本当いい出来です。BKの入門編にはもってこいのアルバムかなと。

「旅」のコンセプトは次作にも引き継がれます。

THE WORLD

2006年8月2日に発売された2枚目のミニアルバム「THE BENNIE K SHOW 〜on the floor編〜」を挟んで、2007年5月23日に発売された、5枚目のオリジナルフルアルバム。
オリジナルアルバムとしては最後の作品になりました。
前作で匂わされた「旅」のコンセプトを一層推し進め、アルバムを通しで聴くことで世界一周が出来るような作品になっています。
カントリーの要素が取り入れられた「Joy Trip」、ラテン調の「Passista de Samba」「Matador Love」、ローリングストーンズのカバー「サティスファクション」、当時の欧州のクラブシーンを意識した「風利眼 in the house」、ロシア風の「ララライ LIE!?」、アラビアテイストでサビは中国語の「1001 Nights」…などなど、前作以上に実に多種多様。
それでもYUKIの歌とCICOのラップがきっちり中心に居座っていて、勿論統一感もあって、本当に世界一周をしているような楽しさがあります。
日本を意識した「青い鳥」で〆るのかと思いきや…最後の最後に「ワイハ」を持って来る茶目っ気も忘れていません。

ここまで完成度の高いアルバムを作れた彼女たち。
まさかこれが最後のアルバムになるとは…聴き狂っていた当時、ワシは夢にも思わなかった訳ですけどね…

次に続く2作品はベストアルバムになります。

BEST OF THE BESTEST

2008年4月23日発売。
彼女たちの楽曲をざっと知りたいならこのアルバムを聴くのが手っ取り早いでしょう。有名どころ、重要な曲は一通り入っています。
このアルバムで言及したいのは2曲。
まずは冒頭の「チャクラ」。楽曲単体でいえば、BKの頂点を極めたような曲でしょう。力強く響くリズムトラック、YUKIの歌、CICOのラップ、絶妙に絡み合う二人のコンビネーション…これぞBK! 誰も真似できない音! といった感じです。
そして16曲目の「モノクローム」。ここまで絶頂期なのに、何でこんな暗く陰鬱な曲調であり歌詞なのか…と、聴いた当時は分からなかったものです。ただ、とてつもなく惹かれたのも確か。

CICO - 
いつかつむいだ種 嘘で塗り固め
高く高く壁 はった守るため
乾いたのは何故? 手にした? 幸せ
もう自分でさえ愛せない中で

YUKI - 
終わりの無い この闇に どんな声で幾ら泣いたって
無駄だなんて気づいていた
でも止まらないんだ
それでもまだ いつの日か
自由になれる気がして 歌っているんだ
惨めな気分になったって それすら笑い飛ばして
前だけを見て

BENNIE K 「モノクローム」より

改めて歌詞起こすと悲しくなるけど、これもまたBKだし、こんな彼女たちがたまらなく好きなんですよね…ワシは…

THE "BESTEST" BENNIE K SHOW

2008年10月29日発売。
さてこちらのベストアルバムは、コラボ曲ばかりを収めたものです。説明をすっ飛ばしていたミニアルバム「THE BENNIE K SHOW」「THE BENNIE K SHOW ~on the floor編~」収録の楽曲もすべて入っています。
Def Techとコラボした「Better Days」、SOFFetとコラボした「Music Traveler」、2BAKKAと組んだ「HOME」、アルファと組んだ「DISCO先輩」などなど…今から考えると錚々たる面子ですね。
いかに彼女たちが多くのミュージシャンに愛され、リスペクトされて来たかが分かるベストアルバムだと思います。

そして13年後。

FINALE

2021年12月1日に配信にてリリース。これだけEPです。
…やっぱり切ないな。寂しさと、二人の迷いの無さと、我々ファンへの想いと感謝とがちゃんと音にも言葉にも織り込まれていて。
13年経過しても全く衰えていない楽曲のクオリティを知ると、もっと活躍して欲しかったし、もっと活躍できる二人だったんじゃないかと、未練がましく今も思うけど、「最後」と決めていたからこそこの曲が作れたのかも知れないですしね。

これで今配信で聴けるアルバムは全部フォローできたと思います。
出来るならばどうか、この駄文を読まれた皆さんには、BENNIE Kという素晴らしいグループがいたことを覚えていて欲しいし、今更遅いかもしれませんが、彼女たちの楽曲に魅了される人が一人でも増えることを、ファンの一人として願って止みません。

長らくお付き合い頂き、ありがとうございました。


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