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エースコンバット 勝手に投書箱 #3 『ギミックは"悪"なのか?』

※当記事ではあくまでもエースコンバットの一ファンとして、個人的な見解を述べています。
※「ファンにとっての理想のエースコンバット」はファンの数だけあると考えています。この記事を読んで思うことがあれば、是非当記事のコメント欄や
筆者のXと称する事実上のTwitterまでコメントをお寄せください。

最近、エースコンバットのギミックの是非に関して再びXと称する事実上のTwitterで議論になっていた。

特に『7』の発売以降、この手の話題は年中ファンの間で飛び交っているのだが、今回の発端は『7』で初めてエースコンバットに触れた(と思われる)方が初めて体験したトンネルステージへの困惑をツイートしたところ、シリーズファンから「エスコンってそういうもん」「いつものこと」などと言われ更に困惑した、という趣旨のポストだった。

ご本人の迷惑にならないよう、あくまで筆者の引用ポストのみを記載しておくが、個人的にはこのようなシリーズ未経験者の純粋な疑問を「シリーズの伝統・お家芸」の言葉で片付けてしまうのは、折角エースコンバットに触れてくれた新規ユーザに対して失礼だし、引いてはコンテンツの間口を狭め、シリーズを衰退させる要因になり得るので看過できないと思っている。

確かに、「谷抜け」「トンネル潜り」という要素はエースコンバットの1作目からほぼ毎作登場している恒例の要素であり、「これが無ければエースコンバットじゃない」という意見も理解できなくはない。

だが、特に『7』などの近年のエースコンバットは、これらの所謂ギミック的要素がしつこいくらい頻繁に登場し、フライトシューティングとしての快適なゲームプレイを著しく阻害しているという事実があるのだ。

以前書いた記事でもギミックの問題点については触れたのだが、あれから時間が経ってネット上のいろいろな意見に触れる中で解像度が上がった部分もあるため、今回は改めて、近年のエースコンバットにおけるギミックは何が問題なのか、適切な解決策は「ギミックを無くす」しかないのか、について意見を述べようと思う。


そもそも「ギミック」とは何か?

そもそも論として、エースコンバットの文脈における「ギミック」とはどんな要素を指すのかをハッキリさせておく必要があるだろう。

一般的にギミック(gimmick)とは「仕掛け」「トリック」などと同等の意味と解釈される。とりわけゲームにおいては、プレイヤーやステージに何らかの作用をもたらす仕掛けを指すことが多い。

RPGやアクションなら、「動く床」「毒沼」「地面から飛び出すトゲトラップ」「パズルを解くと開く扉」などといったものだ。

フライトシューティングであるエースコンバットの場合、「敵を破壊する」というアクションとは別に何等かのアクションが必要なケース全般をギミックと呼んでいることが多い。例えば以下のようなものだ。

  • 谷抜けに代表される高度制限要素

  • トンネル洞窟を飛行

  • 敵の警戒レーダー網の突破(レーダー上の円に入らないようにする系)

  • 敵のECM(電子妨害)や天候の影響でレーダー性能が低下した状態での戦闘

  • 敵のECM(電子妨害)や天候の影響でミサイル等の誘導兵器が機能しない(発射はできるが追尾はしない)状態での戦闘

  • 風の強いエリアを飛ぶと機体が流される

これに加え、『7』からは新たに天候に関わる以下の要素も追加されている。

  • 雲の中を長時間飛行するとキャノピーに水滴が付き、やがてそれが凍結(アイシング)する

  • 雨雲の真下を飛行すると雨水による視界の悪化&キャノピーへの着水

  • 雲の中を飛行中の敵機に対するロックオンの一時解除や、ミサイルの誘導性能低下

  • 雷雲の付近を飛ぶ落雷により計器類が一時使用不能に陥る

  • 砂嵐の影響でレーダー上のターゲット表示が不安定(映ったり消えたりする状態)になる

  • 衛星と連動した敵の高誘導ミサイルを避けるため、雲に隠れながらのターゲット攻撃

これらの要素は基本的にゲームの土台となっているシステムとは別に、各ミッション固有の要素として実装、バランス調整されているものだ。なぜ手間をかけてこんなことをするのかと言えば、それは勿論「ゲームをより面白くするため」であろう。

すなわち「エースコンバットというゲームにおいて必ずしも必要ではないが、あることでゲームのマンネリ化を防ぎ、ユーザにより良いプレイ体験を与えるもの」であることを意図して実装されている要素がギミックであるといえる。

そう、本来は。

残念ながら後述の通り、近年のエースコンバットに実装されているギミックはプレイヤーにより良いプレイ体験を与えるどころか、その逆となってしまっている現状がある。

フライトシューティングの本質的な面白さ

なぜ、本来ゲームをよりエキサイティングにするはずのギミックがユーザからこうも嫌われているのか。

これに関して筆者は、フライトシューティングが持つ「自由さ」とギミックによる「制約」が本質的に噛み合っていないのではないかと考えている。

ここで一つ質問なのだが、「フライトシューティングってどんなゲーム?」と聞かれたときに、読者諸氏はどう答えるだろうか?

「戦闘機で敵を倒すゲーム」「簡単操作で誰でもエースパイロット気分が味わえるゲーム」あたりが多そうだが、これはあくまでも「エースコンバット」の説明であり、「フライトシューティング」の説明としては少しズレてしまっている

確かにこれらの説明も間違いではないのだが、より本質を突くなら「フライトゲームとシューティングゲームを合体させたもの」がフライトシューティングであろう。

つまり、

  • 全方位に開かれた3次元空間を自由自在に飛び回れる(フライトゲーム)

  • 敵を撃ち、倒す爽快感(シューティングゲーム)

これら2つの要素が両立しているゲームこそがフライトシューティングな訳である。

前者は非常に自由度が高く、プレイヤー次第で如何様にも出来てしまうのに対し、後者は敵を正確に狙いすまして攻撃するタイトなプレイングが要求される。

何より、フライトゲーム自体、その独特な操作性からプレイスキルの習熟に並以上の努力が必要であり、平面空間での動きが主である一般的なアクションゲームやRPGなどと比較して、求められる能力が根本から異なる。

それでも敵機に必死に食らいつき、「上手くなろう」と思えるのは、その苦難の先に「大空を自由に飛びながら敵を制圧していく」というカタルシスがあるからである。

そのカタルシスをギミックが削いでしまう、というのは以前の記事で触れたとおりだ。これは初心者とか経験者とか関係なく、どの段階のプレイヤーも多かれ少なかれ感じていることではないかと思う。

実際、『7』に対する批判的な意見でも「もっと自由に空を飛ばせてほしい」という意見は多く見られる。

本来自由に飛べるはずの空に高度制限を設けたり、飛ぶだけで危険なエリアを作ったり、敵への攻撃を邪魔する要素を加えるというのは確かに新鮮で面白い側面もあるとは思うが、バランス調整を誤るとフライトシューティングのゲームとしての興を削いでしまう諸刃の剣なのだ。

「ギミックを無くせば万事解決」ではない

前述のとおり、ギミックはフライトシューティングとの相性が悪い。

では、一思いに全部無くしてしまうのはどうだろうか?

谷抜けもトンネル潜りもない、ただひたすらに敵を倒し続けるだけのゲーム。これはこれで味気が無い。

フライトシューティングとしての爽快感や自由度を損なわない範囲で、マンネリを抑制する方向でギミックを活用するには、どうしていけばいいか。筆者の考えを以下で提示したいと思う。

【提案①】"伝家の宝刀"を研ぎ澄ます

例えば初代、『1』の頃はギミックらしいギミックは殆どなく、それこそ谷抜けやトンネル潜りくらいしかなかった。

普通のミッションの合間合間にこのようなエスコン特有のトンチキミッションが挟まることで、マンネリ感を程よく解消し、かつ「エースコンバットといえばこれ」というアイデンティティの確立にも一役買っていたわけだ。

『5』の"ハミルトンネル"や『7』の"カウントンネル"など、特にトンネル系のミッションは毎回何らかのドラマがあり、物語の山場における緊張感を高める役割を担っていたのも事実だ。

こういったシリーズ恒例のギミックはいわば"伝家の宝刀"であり、ここぞという時に使うべきものだ。安易に抜いてナマクラ刀にしては勿体ない。

【提案②】選択的なギミックを増やす

では、谷やトンネル以外のギミックはどうだろうか?

これに関しては兎にも角にも、フライトシューティングとしての「自由度」を損なわないように実装するのが良いだろうと考える。

例えば、敵に気づかれないようレーダー網を避けて目標に接近するというシチュエーションはシリーズでも割と定番だが、こういったミッションも「敵に見つかったら即ゲームオーバー」というゲームデザインはプレイの自由度を狭めてしまうので極力避けるべきだろう。

過去作であれば、『2』の「低高度奇襲作戦」が好例として挙げられる。このミッションは一定高度以下を飛んで敵の駐屯地にたどり着くことで敵の不意を突くことが出来るのだが、途中で高度を上げて敵に探知されても即ゲームオーバーにはならず、敵の迎撃態勢が整った状態での戦闘に移行する。

このように、「ギミックを無視してもミッション進行に支障はないが、ギミックに従った方が有利に戦える」とすれば、セオリーに従ってギミックを攻略するか、パワープレイで押し切るかの選択をプレイヤーに委ねることになり、攻略の自由度が上がる。

実はこのようなギミックは『7』にも実装されている。みんな大好き、M11「敵主力艦隊殲滅」の「サンドイッチ(あるいはハンバーガー)」こと海上プラットフォームの破壊だ。このように「やるもやらぬもプレイヤー次第」なギミックを増やして欲しいのだ。

【提案③】ギミック攻略に対するインセンティブ(報酬)を明確化する

【提案②】と合わせて実施したいのが、「そのギミックを攻略することで、プレイヤー側にどんなメリットがあるのか」、即ちインセンティブ(報酬)を明示することだ。

『7』最大のセールスポイントであった天候要素で不評が目立つのは、このインセンティブの提示が弱すぎたのが原因だと、筆者は考えている。

『7』発表当初のファミ通インタビュー記事IGNの動画などでは、雲を使った戦いはプレイヤーのストラテジー(戦略)の一つとして機能し、メリットとデメリットがトレードオフになる、という説明だったのだが、蓋を開けてみるとプレイヤーが得られる恩恵が体感で殆ど無く、寧ろストレス要素にしかなっていなかった

「雲を使った戦い」の部分に関しては、プレイヤーがリスクに見合ったアドバンテージを得られるよう、もっと思い切った調整をしても良かったのではないかと思う。

例えば、「雲に飛び込めば敵ミサイルの誘導が完全に切れる」「雲の中を飛んでいる間は敵機が自機を見失う」というルールが明確に示されていれば、プレイヤーに「もっと雲を活用して戦おう」と思わせることが出来たはずである。フライトシューティングに限らず、ゲームにおいては兎にも角にも極端に思える程分かりやすくルールを提示することが必要だ。

「雲に飛び込めば確率でミサイルを避けられる」みたいな中途半端な効果だと、プレイヤーはフレアや回避機動といった、より確実性の高い手段を選択してしまい、雲を活用して戦うという発想は失われてしまう。

結果、雲の中を飛ぶデメリット(着氷や落雷など)ばかりが悪目立ちし、最終的に「雲を避けて戦う」ことがセオリーになってしまうわけだ。(現実の戦闘機は雲を避けて飛ぶらしいので、リアリティの観点では正しいのだが、あくまでこれは「フライトシューティング」である)

ここでは分かりやすい例として天候要素を挙げたものの、当然他のギミックについても同じことが言える。何事もシンプルに越したことはない。

【提案④】類似のギミックを繰り返し登場させる

『7』などの近年のエースコンバットでは、基本的にギミック系が「その場限りの一発ネタ」として使い捨てられてしまうことが非常に多い。これはとても勿体ない事だと筆者は考えている。

毎回新しいギミックが登場し、その場限りの対応を要求されてしまうと、それ以前のミッションで培った経験が殆ど活かせないため、特にシリーズ未経験者、フライトシューティング初心者に対して非常に厳しいという側面がある。

これらのギミックは大概が所謂「初見殺し&一発ネタ」的なものであり、何度もプレイするうちに敵の出現場所やパターンなどを記憶してルーチン通りに立ち回る覚えゲーになる上、そこで学んだことを以後のミッションで応用できる場面も少ない。攻略パターンが固定されてしまうため遊びの幅は狭く、クリアできるくらい上達した頃には、同じミッションをやり直そうというモチベーションは沸いてこなくなる(所謂「リプレイ性」に欠けている)

このように、その都度その都度でイレギュラーな対応を強いられることで、前のミッションを苦労してクリアしても、次のミッションではまた別の要素で苦しめられるため、特に初心者は自身の成長を実感しづらいだろう。

エースコンバット7は何故「難しい」と叩かれたのか? ~初心者目線で紐解く7の問題点~
https://note.com/karaage5859/n/n1b9f4de20ab9

この問題に対する解決策の一つとして、『5』に登場した2つのミッション(M8「希望という名の積み荷」、M21「孤空からの眼差し」)を好例として挙げたい。

これらのミッションはどちらも警戒レーダー網(レーダー上に円形で表示)を避けて飛ぶ系のミッションで、『7』におけるM4「灯台守」の序盤とほぼ同じことをするのだが、M8が比較的簡単な「基本編」と呼べる難易度なのに対し、M21がその「応用編」として機能しているのだ。

M8では最初からレーダー上に通るべき「道」が分かりやすく表示されており、レーダー上の円を避けて飛びさえすればクリアできる。このミッションでは損傷した輸送機を誘導・護衛しており、あまり急激な機動を行えないという制約はあるものの、余程の急旋回をしない限り輸送機はちゃんと付いて来てくれるので、気持ち大回りになるように飛んでさえいれば問題ない。

対するM21は開始時点でレーダー上の隙間が非常に狭い、もしくは全く無い状態だ。ではどうすればいいのかというと、高度を下げることでレーダーの探知範囲が狭くなるので、川沿いを低空飛行することでレーダー網を突破していくのだ。

M8はただ二次元のレーダー画面だけを見て飛ぶルートを決めれば良かったのに対し、M21はレーダーと地形の両方を見て飛び抜けられる隙間を三次元的に把握することが求められる。

このように、序盤に登場したギミックを中盤・終盤に再度難易度を上げて登場させることで、マンネリ感を緩和すると同時に、プレイヤーに自身の成長を強く実感させることが出来るのだ。

【提案⑤】ギミック自体の難易度を可変にする

最後に最も重要なのは、これらのギミックについて難易度に応じた調整を行うことだ。

以前の記事でも触れた内容だが、特に谷やトンネルなどの地形依存ギミックが抱える根本的問題として「難易度EASYでプレイしているのに、難易度ACEと同等レベルの操縦技能が求められる」というものがある。

例えば『7』のM14「ケープ・レイニー強襲」ではCASUAL EASYでサーチライトの数が減っていたり、多少の配慮は見られるものの、夜間で視界が悪い中険しい峡谷を突破しなければならないことに変わりはない。

峡谷であれば難易度によって制限高度を変える、トンネルであれば難易度によってスタート地点を変えたり、そもそも飛び込むトンネル自体を変えてしまうなど、もっと根本的な解決策を考える時期に来ていると感じる。

まとめ

以上がエースコンバットのギミックに対する、筆者の考えだ。

谷抜けやトンネル潜り、その他ギミックを導入すること自体、筆者は決して否定しない、寧ろそういったギミックが一切ないエスコンは寂しいとも感じるのだが、「シリーズのお約束だから」という脳死的な理由ではなく、"フライトシューティングとしてのエースコンバット"をより面白くするために、時代に沿った最適な実装を熟考して欲しいと思う今日この頃だ。

最後まで読んでいただいた方、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。ご意見ありましたら是非筆者のXと称する事実上のTwitterにコメント下さいませ。

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