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「圧倒的『少女』」
子供時代。
人の顔色を死ぬほど伺って過ごしていた。
親の機嫌を損ねるとダメ、とかではなかったけれど、素の自分を出すよりも「周りの大人が望む子供」である方が喜ばれる事を知っている子供だった。だから私は「あなた達が好きな子供」をやっていた。それが普通だと思っていたし、周りが「自分に望む役」をやらないのを何故なんだろうと思っていた。
私が普通に面白い子供だったというのはあるかもしれないけど、大人からはよく可愛がっていただいた。(ありがとうございます)
私が大人の前でする態度。これはいわゆる「ビジネス対応」という物だった。
親戚の家に行く時、知らない人に挨拶に行く時、おじいちゃんおばあちゃんの家に行く時……。様々な場所で活躍!便利。
まず、だいたい私のビジネス対応はこんな感じ。まずニコニコするのは当たり前。プレゼントが来たら「ありがとう!嬉しい〜!」と言う。お礼を言うように親から言われていたのがデカイ。周りの大人が疲れていそうだったら「大丈夫?」と言って、その人の話を聞く。そしてストレスを緩和させて回復させる。眠くなったら寝て、おじいちゃんのビールを注ぐ。大人が「何食べたい?」と聞いてきたら「相手が望むもの」が何なのかを表情から読みとって、それにする。これがどれだけ面倒くさかろうとボロを出さないようにする。品のいい子供を演じる時は、言葉使いを気をつける。ちょっと面倒臭いな、と思っても、絶対にその時に顔に出さない。面白い子供だと周りが笑ってくれるから、私が笑いを取りに行ったり……。そんな感じ。
私はどういう子供が「本能的に好かれるのか」を分かっていた。これはどういう事かと言うと、「甘え上手」とかにも当てはまるが、しっかり言うと
「下の者がする好かれる為の振る舞い方」が上手だったという事だ。
子供は大人に勝てない。大人が資金援助してくれなければすぐに死ぬ。食事がなかったり、服がなくても困る。子供は大人にどれだけ反発しても、大人が権利を握っている。だから揉み消されるし、権利がないなら権利が無いなりに動かなければならない。そう思っていた。
家族や友達に自分を偽ることはなかったけど、結局突き詰めるところ「プロの子供」をやっていた。これが本当に後々私を苦しめる事になる。
圧倒的「少女」が「大人になれと言われる時」
ムリ。
ムリです。
まずそもそも「大人のマネ」をすることがあっても(子供が大人のマネをするとウケるから)、自分の意思などそこにないのだから、ムリ。自己決定が出来るわけがない。相手が望むものを絶対に選んできたのだからムリだった。
大人になるって何?周りの大人はそれを教えてくれなかった。私は「子供」しか分からなかった。「今日からあなたは大人ですよ」と言われても、「はあ」としか言いようがなかった。政治に自分の意思を託すことが出来るようになる、酒が飲めるようになる。そんな表面的な事しか分からない。実際に周りの友達を見ても、あまり実感のない感じの子が多かったのもある。みんな「あなた今日から大人ね!」とか言われても、大人ってなんなのか考えたことがなかっだと思う。
少女時代の憧れ
子供の頃、親に言うことはなかったが、少女マンガの影響で小学生から「ロリィタファッション」が好きだった。ふわふわのフリル、リボン、もはやドレスのような、女の子の夢がギュッ……っと詰まった宝物。ロリィタファッションってそういうお洋服。宝石よりも宝石だし、あまりにもかけがえのないもの。あなたが自分の事を大事にするように、私はロリィタファッションが好きだった。だってあまりにも可愛い。きっと「少女」だった事がある人にはよく分かると思う。あのお洋服がどこまで「かわいい」のか。何故あんなにも涙が出るほど尊いのか。1着1着が「お姫様」みたいで、大好き。そのお洋服が実際に売っているのを知ったのが、小学生の頃だった。
ロリィタファッションは、お値段が……高い!
子供では手が出せない値段だった。子供用ドレスの方が本当に安い。当時でも1着、1万5千円くらいしたと思う。それでも全身揃えられない。そういう、値段も高貴なお洋服。それがわかったのは大学生の頃だ。
小学生の時は、私が着るなんて考えられなかった。もし着られることを考えると、「好きな人とお付き合い出来るかも!」みたいな感覚。私にはあまりにも幻想的すぎて、夢のようで考えられなかった。かわいすぎて。あまりにも「夢」だった。
あの時の「少女」はどんな大人になったかな?
「プロの子供」である事を誇りに思っていた。そんな私も大人になりました。見事に今、原宿で服を買い、パニエを履いて、リボンを結んで外に出ていく「ロリィタさん」になりました。
実は、ロリィタさんってプロの子供の人が多いんじゃないかと思っている。あのホイップクリームのように沢山のフリルの意味。リボンを結ぶことの尊さ。少女の夢。ロリィタって「女の子の中の女の子」が着るお洋服なのです。それが分かるのは「あなたが子供であった事がある人」だけなのではないでしょうか。
「私可愛くないし……」とか、「私自身がなくて……」とか、そういう事を、全て心のバットでぶっ飛ばして外に着ていくので「精神性が強い服」とも言われています。皆こだわり強いから!しょうがないね。大人になってからわざわざ「子供」をやりたがるのは、変な人になっちゃうでしょう。仕方ないですね。私達は永遠に少女。大人になっても「少女で居る」。それが私の大人。
自分の責任で人生を歩むから、出来ること。周りが何を言っても、その人が私の人生の責任を取らないから聞く必要が無い。自分の責任。自由は勝ち取る物。
自分の稼いだお金でドレスを買って、家の中で着て楽しんだり。ロリィタ服を買ってお外に着て行ったり。そういう大人になりました。
まだ人の顔色を伺ったりする時はあります。子供の癖が抜けていない時もあります。でもそれは、これから学んでいけばいいのでは?と思っているから、大丈夫。皆大人初心者🔰だから!
これを読むあなたが大人なのか、子供なのか分かりません。ですが、大人になってからでも「大人」になれますよ。大丈夫。子供から大人になる子。不安だよね。大丈夫!周りも同じだから!
あの時の「少女」は今、幸せです。