AYAKASHIバトルオンライン
2021年8月21日(土)
昨年、上演予定されていた静岡県の市民参加型の子供ミュージカル。
演出の笹浦君の計らいで、台本を書かせてもらえる事になった。
ミュージカルなんてやった事も書いた事もない。
なんならそれ程の勉強もしてないジャンルなので、書き方が分からない。
拙いながらもミュージカルと呼ばれる作品を見たり調べたりする。
その結果、ミュージカルとは
内容なんていらない。
分かりやすい物語。
時間軸や回想が歌ひとつで賄える。
感情の起伏ややり取りを歌に乗せて表現する。
基本的にはハッピーエンド。
観てる人がワクワクする。
幸せな気分に包まれる。
そんな分析に至った。
あくまで僕の個人的な見解です。
ミュージカルに詳しい人が
そんなのは間違っている!
と言えば、きっと間違っています。
ごめんなさい。
でも、書かねばならぬ!
一番の問題は、小学生から高校生までの子供たち。
女の子が50人くらい!男の子は5人くらい!!!
を主軸とした物語を書かねばならない事であった!!!!!!!!
大人の男の話ばかり書いてきた俺にはちょーーー難問でした。
まして、ライダーや戦隊やガンダムしか見てこなかった俺には女の子の心理など分かるはずもなく。
プリキュア的なものでも描こうかと思ったけど。
取り敢えずアイデアとして
色々な不安や夢を抱える女の子たちが市民ミュージカルに参加して、そこにプロとして活躍してたけど、ミュージカルに挫折して故郷に帰ってきたミュージカル女優が先生になって、一つの作品を作り上げ、ミュージカルの良さや楽しさを確認して、未来への希望を掴み取る。
みたいなお話にしようと思ってました。
これなら大人と子供の視点から描けて、何人でも出せる!!!!
と。
でも、アイデアが一本だと申し訳ないので。
もう一本対抗馬として、当て馬的にSF設定のオンラインのお話をでっち上げて提案しときました。
小学生から高校生までの女の子が出会い、仲良くなれる場所。
と言うのがイマイチ思いつかず、ネットの中なら年齢関係なく繋がれるし、今の社会情勢をテーマにできるか。
と思ったからです。
でも、ミュージカルでこんな突飛なお話が採用されるわけないと思っていたら、なんと!!!!
何故かSFオンラインの方が実行委員の興味をそそる事になり、急遽SFミュージカルを作る事になったのです!!
しかし!そこから新型コロナが世界中に蔓延し、人類史上初の世界規模での国内封鎖やロックダウンが起こり、世界は動きを止め、市民ミュージカルも公演は延期となりました。
引き続き出演できる子、そのまま参加できなかった子、新たに参加した子。様々な運命のもとに2年越しのミュージカルが動き出します。
が!!!
自分で言っといて何ですが。
こんな設定でミュージカル本当に書けるのですか!?
世界複雑すぎやしませんか?
ミュージカルは内容いらない、単純物語なんでしょ!?
と。
でも、求められたのだから仕方ない。
静岡ミュージカルなので、なるべく静岡の特色を取り入れるべく、静岡エリアを舞台にしたゲームの設定で、静岡各所に伝わる妖怪を倒して仲間にする「ポケモン」方式!!
ついでに静岡の名所や特産なんかも紹介してやろう!!
と欲張った所。
難しい!!!話に絡めるの難しい!!
説明だけで時間が膨大に消費しちゃう!!!!
僕は頭の中に何となくのプロットと見せ場とラストシーンを作ると描き始めます。
勝手にキャラクターが物語を描くのを僕が文字に起こすだけの、観客のように観ながら書くタイプです。だから、どんな物語になるか、誰が出てくるのか自分でも分かってません。
描き始めたときに何故か頭に浮かんできた、全く知らない2人の物語を最初に書きました。
それはネットの情報が堆積したゴミの中で生まれた新たな意識体でした。
こいつらが何者で、何をしたいのか、これから何をするのか、全く僕は知りません。何でこんな2人を描いたのかもわかりません。
勝手に物語が生まれるのです。
でも、美しくて良い世界だったのでこれがこの作品の世界なんだ。と確認しました。
そして、この時に。
いつも通り描こう。
と決めました。
僕が作家として呼ばれたのは、僕が描く世界を描いて欲しいからで、見様見真似で書いた子供向けのミュージカルもどきでは無いはずだ。
と。
そして、子供の世界だろうと大人と遜色ないはずで、同じ世界で生きているのだから、子供も大人のような意識や言葉遣いで喋るべきだ。
僕がいつも目指す、カッコよくて、美しくて、楽しくて、少し切ない作品を目指しました。
そして!
とにかくキャラクターを出さねば!!
と、沢山の設定を考えてました。
なるべくそいつらを物語に投入していく。
しかし!60人!半分に分けても30人!
1人2分喋ったらもう1時間!!!
歌って踊ったら更に持ち時間が減る!!!
恐ろしい!!!!
なるべく歌で状況や戦いは短縮せねば!
と歌を多用するが.何よりネット世界のヴァーチャルゲームなんて設定からして一般向けではないから、説明シーンが多い事!!!
描き始めてすぐに思ったのは、
SFはミュージカルに向いてねぇー!!!
って事。
アナ雪や美女と野獣の様にメインの5人くらいで話が進めばどれほど楽か。
キャッツの様に次々と妖怪に出会うだけの話にしようかと思ってたのに、それで物語を書けるほど俺はミュージカルに長けてない。
結局、登場人物と世界の説明と上演時間と台本のページ数に常に苦悩させられながら何度もシーンを書いては直し、入れ替え、推敲を重ねました。
元々プロットが無いので、新たに思いついたキャラクターやシーンを入れるために、頭から描き直して実質、5本くらいの全く違う台本を同時に描きながら、必要なシーンを合わせて一本にしていく。
と言う、とても手間で無駄な作業を繰り返す。
これも僕が天才でない故に行う作業。
そして、オンラインを舞台にした作品に。
「サマーウォーズ」や「シュガーラッシュ オンライン」がある。
これらを観た時に、インターネットの中と外とのつながり方や操作方法、それらがとてもいい加減で、
どうなってるの?
と凄い腑に落ちなかった僕は。
そんな事御都合でどうでもいい事。
と分かっているのに、どうしても理詰めで考えて固まってしまう。
結果として、架空の物語を描くために、新しいオンラインへのつながり方やゲームの設定やルールなんかも本物が作れるくらいゼロから作らねばならなくなり、俺は台本を書いているのかゲームを作っているのか分からなくなるほどでした。
しかし!そこに拘っていると物語が進まなくなるので「そこではないっ!!!」と自分に言い聞かせ、お客さんに想像で補ってもらう事にして、とにかく必要最低限の説明の更に削った説明で書き進めていきました。
それでもやりたい事が多すぎて目標としてた90分では収まらないと判断し、妥協して105分にしました。
これも大人が上演した場合なので、子供たちは頑張っても120分かな?
と思いながら、市民ミュージカルで120分は長いだろうが仕方無い!!!
後は演出の笹浦君に全てを託そう!!
と丸投げ覚悟で書きました。
それでもキャラクター同士が仲良くなる時間がない!と困ってたら。
そうだ!次のシーンで1ヶ月だった事にしよう。
と閃いて、モノローグと歌と暗転だけで問題を解決し、ラストシーンへとなだれ込みました。
ラストシーンはもうとんでも無く長い歌でラストバトルを作って、全員出て、盛り上げたらなんか凄いシーンになるんじゃなかろうか?
とひたすら歌を書き続けました。
そして、なんとか目標としてた着地点に着地して。
かなり締め切りを超えての提出となりました。
本当に申し訳ない。
本当は静岡にあるバンダイのガンプラ工場の18メートルある実物大ガンダムを動かして、ラスボスとの派手なバトルを予定していたのだが、尺の問題でカットした。
これを書いたらどうなっていたのか?
それはそれで有りだが、書かなくて良かったとも思う。
何より笹浦君が死んでいただろう。
そう思う。
基本的に僕は自分の本をどうされても気にしないので、現場で一番良い形に作り替えてください。
と後はひたすらノータッチ!!
そして時は過ぎ。
2ヶ月程して今日、緊急事態宣言が出されるも。
どうにか無事に。誰も陽性者を出す事なく。
公演を迎える事ができました。
それだけで素晴らしい!!
僕は家族で静岡へ出向き、
初めて出演者の子供たちやスタッフさんたちに会いました。
衣装さんや小道具さんや美術さんなんかも知り合いなので、殆ど安心お任せです。
そして、もう自分が何を書いたのか殆ど覚えてない状況での観劇。
基本的に僕の本を上演してくれる人はあまりいないので、自分で書いて自分で演出することが殆どで、客観的に自分の作品を観ることが無いのです。
今回はすごい新鮮な気持ちで観劇。
長かったはずなので、かなりカットされているだろう。
と思ってたのだけど、思いの外カットされてなくて、いいのこれ?
と不安になりました。
そして、僕なりに頭の中で舞台配置や演出しながら書くのですが。
なるべく簡単に楽な演出で出来る様に考えて書いてます。でも、やろうと思えば、いくらでも大変な事もやれるようにもなってます。
演出家のやる気とアイデア次第です。
そして、今回の笹浦くんは
一番大変なやり方を選んだのだな。
と思いました。
いや、もう少し簡単に楽して良かったんじゃ無い?
と思いながらも、彼がこれがベストだと選んだ手法なのでしょう。
子供達が演じてた事もあるけど、やはり前半が少し長く感じたので、もう少し削ってもよかったかなと思った。
また、前半の歌が全体的に爽やかで似た感じなのが多かったので、単調に感じたのかも。
僕の中では各歌ごとにかなり違うジャンルのイメージで描いてたので。
でも、それが有りなのか無しなのかもミュージカル初心者の僕には分からないけど。
でも、ほとんどのシーンは必要なんだよなぁ。
だって世界説明と登場人物紹介だから。
だからか、全員がそろって
歪(いびつ)と言うキャラクターが記憶を取り戻してからの展開は、急に物語が動き出した感があって、ドンドン世界に吸い込まれていく感じがした。
客席の親御さんたちも最初はほのぼの観てて、授業参観や発表会の様な空気だったのに、そこのシーンからドンドン舞台の中に吸い込まれて、観客の意識が一つに集約されていくのを感じた。
これを初舞台の子達がやれたのは、本当にすごい事で。
これだけでこのミュージカルは成功だと言えるだろう。
何より、すっかり忘れてる自分の書いた本。
このセリフや歌詞は本当に俺が書いたのか?
笹浦君が描き直したやつか?
それすらよくわからなかったが。
兎に角、よい物語で、よい言葉だった。
客観的に自分の作品を見れたな。
まあ、忘れた頃にDVDとか観ると
すげーいい話だなー。
と自画自賛するけど。
兎に角、プロではないメンバーで
これだけの作品を作り上げるのは本当に大変だったろう事だけは分かる。
人間は経験した事ないものは想像が出来ない。
だから、舞台に立ったことが無い人にお客さんをイメージしたり、袖からの出ハケをイメージしたり、自分がお客さんからどう見られているかなんて、どんなに教えても想像できないのだ。
笑いをとったことない人に、間やテンションを伝えられないように。
人は
自分に必要だ。
と判断しない限り知る努力をしない。
そこにコミュニケーションの齟齬が生まれる。
そして、オンラインによって更にコミュニケーションは平坦化してしまい、簡単にやれる分より難しくになって行く。
そんな事もテーマとして取り入れました。
生きる上で必要な事を全て詰め込んで、書いて、しゃべらせたミュージカルです。
このミュージカルに参加した子供達やその親たちがこの先、生きる上で少しでも何の取っ掛かりにでもなれば良いなあと思いました。
それにしても俺の本って、テーマがガッツリ入っててズシンと前に押し出されて重いね!!
書いてる時は気づかないけど、こんなに伝わるくらい書いてるんだね。
そして、ラストに向けての話のまとめ方は素晴らしいね。
さすが俺!!
と感じましたとさ。
まだ9/15までかな?オンラインでアーカイブが観れるみたいなので。
良かったら観てみて下さい。
静岡市子どもミュージカル2021
「AYAKASHIバトルオンラインinエリア静岡」
2021/8/21,22
静岡市民文化会館中ホール
チケット・配信チケット予約
→ http://kodomo-musical.com/