徹底解説!『Crypto・I』(クリプト・アイ)
こんにちは。Kapruitです。
この度発売された蘭茶みすみさんの5周年ミニアルバム
「CRYPTO・I/クリプト・アイ」
にて表題曲『Crypto・I』の作編曲で参加しております。
5周年おめでとうございます!
試聴・購入は以下リンクよりどうぞ。フルで聴けます。
昨年(2022年)クリプトアイドルメタバース様に書き下ろして大好評をいただいている楽曲『カラフル☆メタバース』はおもちゃ箱をひっくり返したようなかわいさを全面に押し出したアイドルソングでした。
対して今回の『Crypto・I』は全編打ち込みながらもバンドサウンドを中心に構築し、曲調も爽やかかつ神秘的な雰囲気を目指して制作しました。(相変わらず音数は多いし、転調もする模様。)
今回ですが新年度だし何か新しいことをやってみよう、ということで私初の楽曲解説記事を書いてみます。もしよろしければ『Crypto・I』をお聴きになりながらご覧ください。DTMに興味のある方、特にアニソン風の楽曲を作りたいと思っている方など参考にしていただければ幸いです。
メインウインドウ
早速ですが『Crypto・I』プロジェクトファイルのメインウインドウを特別に大公開!なかなか貴重かも?
全トラックの内訳
総トラック数92(!)の大規模PJです。(マスタートラック含む。)
画像だと小っちゃくて分かり辛い+トラック名編集をサボっているので内訳は以下を参照してください。()内は音源名です。
多いわ!全トラックを書ききった達成感でいっぱいです(?)
パンニングはロック系バンドサウンドギターの壁を左右に構築するスタンダードなやり方です。
聴き手の目線でどんどん情報を詰め込んで飽きさせない音作りをしていくと、どうしてもこれくらいのトラック数になってしまうんですよね…。
ピアノロール
次はピアノロール画面も公開。
MIDIノートの色分けは先ほどのメインウインドウに準じます。
MIDIノート数は20601個です。アニソン系ポップスを一曲仕上げると大体18000〜24000個の範囲で落ち着く印象です。これをポチポチとマウスで作っていくわけです。(お恥ずかしながら私はピアノを満足に弾くことが出来ないのです…!)
一見すればすぐお分かりになると思いますが高低満遍なくノートを設置し、複数の音をレイヤー化して独特の音作りを実現しています。私はシンセの音作りがあまり得意でないため、このように生楽器系の音を重ねてオリジナリティを出す手法に行き着きました。
各パート詳細
さて、ここで各パートの解説に入ろうと思います。と言っても全て網羅することは難しいので今回は生楽器系を4つピックアップしてお送りします。
ピアノ(メイン)
音源:NATIVE INSTRUMENTS - THE GIANT
全体の印象を決定付ける楽器ですね。今思えばアレンジでsusコードを使い過ぎた気もしますが…!
THE GIANTは音抜けが良くダイナミックですが明るすぎず、本楽曲にピッタリの音源と言えます。いつもは動作が比較的軽いAddictive Keysを使用していますが今回は浮気してしまいました。
トラック65:エピックパーカッションと帯域がかなり被ってしまうため、EQでローを多めに削っています。
エレキギター
音源:UJAM - Virtual Guitarist IRON
ギターの知識をほぼ必要とせずに音作りが可能。デフォルトでも十分に音が太いんだなこれが。しかもワンノートで即戦力のフレーズを鳴らしてくれる優れモノ。鍵盤に割り当てられたキースイッチで演奏フレーズを変更できます。
常に二本ずつ立ち上げ、それぞれを左右に振ってステレオ感を出しています。左右で微妙に異なるフレーズを演奏させてます。
アコースティックギター
音源:Ample Sound - Ample Guitar M Lite II
ド定番のフリーアコギ音源。
AメロBメロを中心に隠し味的にアルペジオとコード演奏を入れております。今回はこれまであまり活用できていなかったStrummer モードを積極的に使用。コードネームを1個ずつ登録していかなければならないのがちょっと面倒。なにぶん使うコードの種類が多いので…。
一旦コードを登録してしまえば打ち込み自体はシンプルで非常に楽です。
ストリングス
音源:NATIVE INSTRUMENTS - Session Strings
メインウインドウ画像の中で最も異彩を放っている(であろう)ストリングストラック。ここでは少し深掘りして見ていきましょう。
メインフレーズからサビの裏メロまでほぼ全編にわたって活躍している本セクション。楽曲の核となるパートです。
ちなみに『メタバースデイ』『カラフル☆メタバース』で鳴っているストリングスも本音源です。
「Strings R」「Strings L」と左右にパンを振ったトラックが1つずつあるのはステレオイメージャーを使用するよりも自然に音の広がりを出せたからです。左右で出音タイミングも微妙にズラしています。いわゆるダブリングですね。
また、画像を見ると、音が頻繁に複数トラックを行き来していることが分かります。
これ実は奏法ごとにトラックを分けているんですよね。Session StringsはLegato、Accent、Tremoroなど、多くの奏法が収録されていますが、上位版のSession Strings Proじゃないとキースイッチでの奏法切り替えが出来ないのです。要は本来1トラックで済む作業を複数トラックにまたがってしなければいけないという状況。(1トラックで完結させることも出来なくはないですがこちらの方が楽なので。)
余裕があれば上位版に切り替えたいところですね…!
ここでストリングスのアーティキュレーションがいかに大切か、実際に聴き比べていただきたいと思います。
※以下で音声ファイルを配布します。試聴以外の目的外使用はお控えください。
まずはアーティキュレーションなしver.をお聴きください。
うーん、のっぺり(笑)これはこれで必要とされるシーンもありますがね。しかし今回は生演奏の再現を目指しているのです…!ボーイングでテンポ(BPM190)を刻み込むと共に歯切れの良さを意識して調整していきましょう。
それでは調整完了ver.をどうぞ。
これ、両者とも同じ音源なんですよ!信じられます?メリハリが出て一気に聴きやすくなったでしょ???
調整のコツは
メロディ(ボーカル)のアクセントとストリングスのそれを一致させる
長めの音では揺らしたりピッチを変えたりして目一杯遊ぶ
休符を意識!連続した音の中にある空白が何よりも大切
といったところでしょうか。これだけ徹底することで一気に人間臭い演奏をしてくれます。
おわりに
他にも色々と書きたいことはありますが長くなりすぎるのでひとまずここまで。最後までお読みいただきありがとうございました。
ご要望次第ではステムデータやMIDIデータの配布も検討します。
場合によっては解説その2もあるかも?乞うご期待!
その他、ご質問・ご感想があれば答えていきたいと思いますので私のTwitterまでお気軽にリプでも飛ばしてください~!