誰でも夢のプライベートシアターが持てる、ならまちシアター青丹座レポ
2009年に東向商店街の観光会館地下劇場が、2010年に三条通のシネマデプト友楽が閉館して、県庁所在地なのに映画館がない街となった奈良県奈良市。でも、今でも映画館さながらのシチュエーションで映画が楽しめる場所があるとしたら?
誰でも夢の「プライベートシアター」が持てる(レンタルできる)、『ならまちシアター青丹座(あをにざ)』。最寄りの近鉄奈良駅から歩くこと9分。観光客で賑わう東向商店街ともちいどのセンター街を抜けた先の、下御門商店街の最奥付近に位置しています。駅から1本道なので、迷うことはないでしょう。
青丹座は、eリュエルという下御門商店街一おしゃれなビルの2階にあります。1階の焼き芋専門店『維新蔵(いしんぐら)』が目印です。1階奥にはテイクアウトおにぎり専門店『一穂ニ穂(いっぽにほ)』も。
込みあげる食欲を抑えて階段を上がると、右手に見えるのが青丹座です。『シン・ゴジラ』にオマージュを捧げたであろう『シン・アヲニザ』のポスターがインパクト大です。
「シカ対シアター。」というキャッチコピーはどなたが考えたのでしょうか。奈良のシカは神様の使いなので相当手強そうですが、良いと思います。
肝心の設備ですが、4Kにドルビーアトモスと映画館レベルの本格視聴環境が揃っているとのこと。DVD・Blue-ray・4K Ulutra HDを持ち込んで、またはスマホ等をHDMIケーブルで接続して動画配信サービスを視聴できます。
SONY純正の3D視聴専用メガネも完備。高音質・高画質で好きな映像作品を観ながら、高級リクライニングソファでくつろげます。
最大15名まで着席可能、貸切のプライベート空間、飲食物の持ち込みOK。映画だけでなく、ライブ上映会やスポーツ観戦、ゲーム大会など、様々な用途に活用されています。
そんな青丹座の利用料は、専任スタッフが視聴準備をフォローしてくださるビジター利用の場合は3時間12,000円から。自分で視聴準備もすべて行うオーナー利用の場合は3時間3,000円、完全貸切です。ただし、会費984円〜2,200円(/ひと月・曜日や契約期間により異なる)が別途必要。(すべて税込)
私が“平日1曜日オーナー契約”で選んだのは月曜日。初利用の日には、ヴィム・ヴェンダース監督の『パリ、テキサス』(1985)を視聴することにしました。それ、ドルビーアトモスじゃなくない? という声が聞こえてきそうです。私には、自分が生まれる前の映画を映画館で観たいという夢があるのです。午前10時の映画祭を上映している映画館が近くにないのです。
視聴準備は簡単。ディスクを再生機器に挿入すれば自動的に部屋の明かりが消え、再生が始まります。動画配信サービスの場合はスマホなどをHDMIケーブルで繋ぎ、外部機器接続モードで端末の画面をスクリーンに映し出して視聴します。私はU-NEXTで視聴したかったので後者の方法を選びましたが、ここでトラブル発生。iPhoneが認識されません。
画面には、
「Downloading accessory firmware. Your accessory will not function until the download completes.」
とエラーメッセージが。
「今挿さっているアクセサリーを使えるようにするからしばし待たれよ」
と仰せのようです。英語がてんでダメな私は、よもやここで3時間寝て過ごすのかと慌てふためきましたが、ケーブルを挿したまま数分放置していたら認識されました。
その後は素晴らしい音楽と高級リクライニングシートのおかげで、映画の大部分を夢の中でやり過ごしました。この空間を独り占めできただけで大満足です。
時間が余ったので、YouTubeでYOASOBIの『アイドル』ライブ映像を再生。
特別にファンというわけではありませんでしたが、自然と腕を振り上げていました。なんて音がいいんだドルビーアトモス。次はドルビーアトモスに対応したものを視聴したいです。
そうそう。青丹座は飲食物を持ち込めるのが魅力ですが、奇しくも月曜日はテイクアウトできるお気に入りのお店が軒並み定休日でした。月曜日は祝日になることもあります。それでも平日料金で利用できるとなると、等価交換といったところでしょうか。利用開始時間が迫る中、駅前まで戻り右往左往していると、大人気豚肉料理の店『とんかつ喫茶ブタとエスプレッソと』の開店直後に行き当たりました。喜び勇んで超ブタカレーをいただきました。大変美味しゅうございました。
そして持ち込みの品は、もちいどのセンター街にあるフレッシュマーケットオーケストというスーパーで購入しました。学生の家飲みのようですが、それもまた良し。
青丹座は、その日の出来事すべてを自分だけの映画体験に変えてくれる、奈良の文化系オアシスでした。