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【2023年版】どこより詳しい企業研究 ~トヨタ/日産/ホンダ編~

みなさん、ご安全に!カッパッパと申します。

毎年大好評今年もやります

どこより詳しい企業研究 ~トヨタ/日産/ホンダ編~

自動車業界で働き、毎朝日経/ネットで自動車ニュースをチェックするカッパッパが丸4日以上かけて30000字近い分量で書いた自信作です。

累計1000部以上ご購入いただき、大変ありがとうございました。就活生、また業界関係者の方から高評価いただき本当に嬉しい限りです。

このnoteでは販売台数上位3社、国内自動車メーカー御三家と言われるトヨタ/日産/ホンダの企業研究となっています。

このnote内容は基本的に昨年までと同様の構成にしながら、2023年版にアップデート全面改稿しています。

完成車メーカー全体についてまとめ、コロナを含めた現状の経営状況、強み/弱み、中長期計画/CASEへの対応、注目すべきニュース

2022年12月現在の最新のデータを使い、どの企業研究よりも新しい情報になっています。その上リンク付きで作成することで深く学べることができる記事にしています。

また企業研究は業績、事業内容だけでなく、個人の働く環境、待遇もとても重要。

社風/年収/残業/年休消化率/3年離職率/勤務地

についてもまとめました。

これさえ読めば、企業研究は大丈夫。就活では選ぶ上でも役に立ち、選考の時には周りと一歩差をつけることができる。業界関係者の方は、客先や競合の状況を総合的に掴むことができる。昨年版を読んで、「内定をGETしました」という嬉しい報告もいただいています。

就活生はただでさえES、面接の練習、OB訪問/社会人の方は目の前の仕事が手一杯でかなり忙しい。企業研究はこの記事でやりきってしまいましょう!!

就活生の方、会社を選ぶ、そして面接を受けていく中で大事なのは「自分の考えを深く持つこと」です。この記事を鵜呑みして語っても、自分の思いがなければ薄っぺらに聞こえてしまいます。


メーカーの基本は「現地現物」。
今回の記事だけでなく、会社説明会やOB訪問、面接を受ける中で感じた社風、会社の良さ。そうした「現地現物」の情報を自分の言葉で語ることが内定につながります。

自動車業界、働く環境はかなり恵まれています。

「自動車業界は良いぞ」

「完成車メーカーは良いぞ」

このnoteを通じて自動車業界で共に働く方、またこの記事を自分の仕事に活かせる関係者の方が増えたら嬉しいです。

さて前置きがずいぶん長くなりましたが、
中の人がガチでやる自動車業界企業研究 ~トヨタ/日産/ホンダ編~
どうぞお読みください。

*企業研究のために使用する基データは
・日頃収集している自動車業界ニュース/レポート
・IR資料(決算報告書、中長期計画、年次報告書等)
・新卒採用サイト
をベースにしております。

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①完成車メーカーの販売台数/規模

2022年の国内販売台数は420万台前年比△5.6%。東日本大震災の影響を受けた2011年の421万台を割り込み、45年ぶりの低水準。(コロナ前の2019年は519.5万台)
その要因は「半導体不足や海外生産部品の調達難」。コロナ禍に端を発した車載向けの半導体不足は2022年になって緩和はされたものの、大幅な挽回には至らず、2022年12月段階でも各社が稼働停止、生産調整を行っています。それ以外でも中国でのロックダウンによる部品供給問題で工場が停止するなどサプライチェーンの寸断により、完成車の生産が滞った一年になりました。

全体の数量が減る中で、完成車メーカーでも差が出る結果に。国内完成車メーカー8社のうちダイハツ、マツダ、三菱自動車を除く5社が前年割れ。特に前年2021年他社に比べて落ち込みの少なかったトヨタが▲12.4%と大きくマイナスの結果となりました。

日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会のデータを基に作成 

グローバルで見るとどうでしょう。
まだ確定の数値は出ていませんが2022年の販売実績は8240万台ほど。
その中で1位はトヨタが確定しています。日本では販売が落ち込んだものの、中国、東南アジアでの回復がグローバル販売を押し上げ、11月までの世界販売台数は956万台(前年比横ばい)で3年連続のトップ。ライバル,2位のVWが半導体供給問題で依然販売台数が大きく減る(11月までで742万台 前年比▲9%)中、影響を最小限に抑えました。ただVWで特徴的なのはEVの販売が大幅に伸びていること。前年比25%増の36万台となっており。トヨタが2万台弱なのに対し、EVシフトが進んでいます。3位はルノー/日産/三菱Gr。そのあとにGM、現代が続きます。(確定値ではないので変動の可能性あり)

主要な完成車メーカーの販売状況は掴むことができました。ではそんな完成車メーカーは「職場」としてどうなんでしょう?

②完成車メーカーの働く環境

仕事を選ぶ上で待遇は非常に重要です。いくら仕事内容が楽しくても生活できなければ生きていくことはできません。
完成車メーカーで働く環境はどのようなものなのでしょうか?

各社に差はありますが、一般的な業界と待遇、特徴について比較します。

1.給料

給料はメーカーの中では高めですが、商社や金融と比べると低い傾向にあります。一般的に年功序列で、20代若いうちは伸びないが、職位が上がる、役職がつくと一気に伸びることが多くなっています。
また評価による給料の幅は他業界に比べて少なめです。

各社の給料については下記を参照。ただしこちらは有価証券報告書を基にしており、現場、工場の正社員も含まれるので大卒の給与平均とは異なりますので、注意が必要です。

2.福利厚生

福利厚生は他業界と比較し、かなり手厚いです。もちろん会社によりますが、寮、社宅、家賃補助などの住宅補助、家族手当、特に車に関わる購入や保険などでも補助は充実しています。一切補助のない企業に比べれば、計算上年間100万以上差があるなんてことも…
就職、転職の際にはこうした直接の給料には含まれないお金にも注目です。

3.年休消化率

年休消化率は高水準です。完成車メーカーは「大企業」であり、働き方改革が一般的に進んでいます。加えて車業界は労働組合が強く、年休消化の目標設定が高く設定。年休無所得者には上位の管理職にフォローが入るなど、内部での圧力が強いです。ちなみに完成車メーカーではありませんが、私の昨年度の実績は18日でした。

4.残業時間

残業については正直同じ会社でも部署/時期によって変わるので一概に語ることは難しいです。ただ、昨今のコンプライアンスへの取り組み強化からサービス残業はなくなり、働き方推進、生産性の向上が掲げられていることにより年々残業時間は減っている傾向にあります。コロナ禍では残業抑制を求められることも多く、36協定を超える残業(45時間/月)はかなり少なくなってきた印象です。
(ただし残業は本当に部署によって違います)

5.在宅勤務

この数年で一番大きく変わったのは在宅勤務の在り方です。これまで自動車業界では「現地現物」が重視され、実際に足を運ぶことが重視されてきました。しかしコロナ禍により状況は一転。集団接触を避けるため、自動車業界でも在宅勤務が推奨されるようになりました。多くの大企業では在宅勤務が導入され、コロナ禍以降でも随時進められていくでしょう。

実際に働いている身として在宅勤務するかどうかは、仕事のやり方、QOLに大きく影響します。新しく自動車業界に入られる方は志望企業でどのくらい在宅勤務が進められているのか確かめておくと良いでしょう。

6.昇進

昇進に関しては現状、典型的な年功序列。20代若手のうちではほとんど差がつかず、30代で役職につく段階で差がつき始めます。早い場合で係長が30前半、課長になれるのが40歳前後。早めにマネジメント経験を積みたいという方は合わないかも知れません。

7.勤務地

各社それぞれに生産拠点があり、その場所をベースとして海外を含めた転勤があります。基本的に生産拠点は都会にないので、ビル街のオフィスでスーツで颯爽と仕事をする、自動車業界ではかなり難しいです。海外での売り上げ比率が高いため、若い段階で駐在する人が他業界と比べ多いです。

8.その他

完成車メーカーは知名度が高いです。これは地味に重要で、親や親戚に就職を報告/相談する際に困らない、喜ばれる、会った人からの評価されやすい、工場の周りではその企業であるというだけで絶大の信用があったりします。また与信が高く、銀行からの融資も受けやすいです。

ただこれまで挙げた働く環境については今後2020年代で見直されていく可能性が非常に大きいです。
終身雇用に関しては最大手のトヨタが「継続は難しい」と述べており、日産/三菱、ホンダは工場再編を進め、人員削減を含めた構造改革を進めています。
中途採用比率を上げる(下記の記事にあるトヨタのEV部門は半数以上が転職者とのこと)、賃上げを評価に応じて実施する等のニュースもあります。現状の働く環境は上記に書いた内容で間違いないですが、今後は間違いなく変わっていくという前提で企業を見ていくことが良いでしょう。


ではおまたせしました!
個別の完成車メーカー毎の企業研究、やっていきましょう!!

③企業研究:トヨタ

総括

自動車業界の中というか日本に住んでたら必ず知っている、時価総額で日本で唯一世界50位に入る、日本が誇る最大製造業企業
世界でもその品質の評価は非常に高い。
端的に言って日本メーカーTOPであり、世界でも売上、販売台数TOPの自動車メーカー。
その強さは部品供給に苦しむ直近での経営状況にも現れている。ただし今後社会が大きく変わる中で現在と同様のポジションを取り続けられるかは不透明。これからの戦略は日本完成車メーカー、強いては日本経済全体の命運を握っているとも言える会社。

歴史

1937年に創業。もともとは紡績の織機を作るメーカーであったが、関東大震災の際、輸送手段として大活躍、その後大幅な需要増になった自動車の国内生産を手掛けるメーカーとして発足。

戦後1950年代に量産体制を確立し、TQC(総合的品質管理)を推し進め品質を向上させました。今のトヨタの強みの一つである「TPS(トヨタ生産方式)」を作り上げ、1970年代以降グローバルに展開。「世界のトヨタ」として販売台数を伸ばし、成長を続けます。

ただ、2009年のリーマンショック時には拡大路線による固定費の増加、在庫調整による販売の落ち込みから創業期以来の赤字に。加えてリコール問題でアメリカ議会での公聴会に呼ばれるなど危機的な状況を迎えます。

その後、復活をとげ、2010年代には再び右肩上がりの伸びを見せ、売上高は20兆円を超えるように。販売台数はグループとして1000万台超、毎年世界TOPの販売台数を誇る日本を代表するの自動車メーカーです。

トヨタの歴史についてより詳細を知りたい方は下記をご参照ください。

売上規模(2021年度)

2021年度売上高は31兆3795億円。過去最高を記録。日本全部の会社の中でTOP。

大きすぎてよくわかりませんが、売上2位のホンダの約2倍、ホンダと3位の日産を足してもトヨタの方が大きいことを考えるとどれだけ規模が大きいかがわかりますね…
日本で1位、製造業の中でも群を抜いて突出している企業です。

経営状況(2021年度まで)

2020年コロナ禍以降、自動車業界にとって厳しい時期が続いています。ロックダウンによる生産/販売停止、半導体供給問題による稼働調整。そんな中でも、トヨタは圧倒的強さを見せています。

21年度の営業利益は2兆8501億円で過去最高、営業利益率9.5%。これは他社、ホンダや日産と比べ非常に高い数字です。(他社については後述)自動車メーカーは製造業で基本的に営業利益率は5%あれば合格点…なのですが、その大きく上をいく9.1%は他社とは一線を画す好業績かつ売上も断トツTOP。極めて健全な経営状況にあるといえます。

2022年の販売/経営状況

2022年、自動車業界は依然半導体をとする部品供給問題に苦しんでいます。トヨタも例外ではありません。2022年3月には「意志のある踊り場」として生産計画を下方修正。2022年12月段階でも生産調整が続いています。

そして、世界的な原材料高がトヨタを直撃。22年上期だけで7650億円のコストUP要因に。22年上期は売り上げは17兆7093億円と同時期では過去最高を記録したものの、営業利益は1兆414億円と大きく減益。営業利益率は6.4%まで落ち込みました。(それでも他社と比較すると高営業利益率)

トヨタ 2023年3月期 第2四半期決算情報 決算報告プレゼンテーション資料より引用

22年度上期での連結の販売台数は416万台。前年比1.6%の微増。コロナ禍以前の2019年と比較すれば、数は減っているものの、他社が生産ができず、販売を大きく落とす中で、トヨタは相対的に減産幅は少なく、世界各国でシェアを伸ばしています。

22年通期の見通しは販売台数920万台。(970万台から下方修正したものの2022年も世界1位の見込み)。営業利益は据え置きの2兆4000億円。営業利益率は6.7%の見込み。
以降で他社も分析しますが、原材料高、生産台数の伸び悩みに苦しんでいるものの、トヨタの経営状況の良さは、頭一つ抜けています。

直近の決算の概要は公式のトヨタイムズが非常にわかりやすいので、詳細を知りたい方は↓をご参考に。

圧倒的強さを見せつけるトヨタ。その「強み」は一体どこにあるのでしょう。

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