「前説」が性格を変えた?
「前説(まえせつ)」という言葉をご存じでしょうか?
最近はもうかなり一般的にも浸透してるかも。
何かというと、テレビの収録や舞台公演が始まる直前に、
スタッフや若手芸人などが観客に向かって収録の注意事項や演目などを説明する事です。
テレビの収録ではADがこれをやることが多いです。
かく言うぼくもADに成り立てのころ、前説をやらされました。
観客をいじって笑わせたり、
その日の内容を軽く説明したり、
拍手の練習をしたりします。
始まる前にある程度観客を盛り上げておくことで、スタジオが温まった状態で、出演者を迎えるわけです。
観客がいる番組ではかなり重要な役割です。
ところが…
ぼくは、人前に立ってしゃべるのが人一倍苦手でした。
例えば小学生の頃、手を上げて発言したことは一度もありません。
教室の前に出て何かしゃべるとか、卒倒案件です。
先生に当てられて、席で立つだけで顔が真っ赤になる子どもでした。
当時の成績表にはいつも「引っ込み思案」と書かれていました。
今で言うコミュ障やったと思います。
そんなぼくですが、ADになった以上は前説をやらんといかんわけです。
地獄でした。
だったのですが…
何回目かの時、客席がどかっ!と受けたことがありました。
何をしゃべったかは覚えてません。とにかく、
受けたことだけは確かです。
その時に思ったのが…
「気持ちいい!」でした。
なるほど。
芸人さんたちは、これがあるから舞台に立ちたいと思うんや、と思いました。
いっぺん味を占めると、これはもう中毒みたいなもんです。
そこから先は、前説がやりたくて仕方なくなりました。
人前に立ちたくなって来たのです。
残念なことにしばらくして別の番組に異動になって、前説はしなくなりました。
けど、仕事して前説をさせられたことで、人前に立つ訓練になりました。
あの時これをやらなかったら、間違いなく今の自分はなかったでしょう。
この仕事を続けられていたかどうかもわかりません。
今は人前に立つのは平気です。
むしろ立ちたいくらい(笑)
ということで、前説がぼくの性格を変えたという話でした