どうか貴方は、幸せであってほしい
LINEの呼び出し音がなる。深夜2時。
暗い部屋に浮かび上がる相手の名前は、”彼”の名前だった。
"あー、サイレントにしとくの忘れてたー"
ちょうどその日は、仕事でミスしたり同期とぶつかった日の夜で。浴びるように酒を飲み、シャワーも浴びずに布団に吸い込まれた。そんな夜だった。
「もしもし? 少し声が聴きたくて。」
彼が電話をくれる時はいつもこうだ。
謝罪の気持ちなんて微塵もない。純粋に声を聴きたいだけかもしれないが、今日はもう少し寝ていたい。
「私もそう思ってたんです。 電話、ありがとうございます。」
私は眠気を吹き飛ばすように、部屋の電気を付けた。悔しいけど、彼の声を聴くことができたのは本当は嬉しかった。
「どうしたんですか? こんな時間に。」
「いや、別に。 元気かなーって。」
「いや、元気もなにも。 相変わらずですよ。」
「そう、だったらいいんだけど。」
「あのさあ、」
「なんですか?」
「俺さ、お前と出会って人生変わったわ。」
「え、なんかごめんなさい・・・。」
「いや、なんで謝ってんの?笑」
「え、じゃあそれってどういうことですか?」
「・・・。」
「・・・。」
彼と電話で話し始めた頃、私は人生のどん底にいた。「無気力・無関心・無責任」 なんともバブリーなこの言葉だが、私を表現する最適な言葉だった。
彼に再会して、私はその時の状況や心境をすべて話すようになった。彼は、肯定も否定もせずにただ話を聞いてくれた。おかげで日毎に、気分は少しずつ軽くなっていった。
「お前と再会してからさ、いろんなこと話したじゃん?」
「そうですね。」
「ずっと抱えてるコンプレックスとか、トラウマとか。」
「あなたの前では丸裸ですよね。」
「うん。 それでさ、俺思ったんだけど。」
「はい。」
「・・・。」
「・・・。」
「俺の人生の中で、貴方ほど守り抜きたいと思う人はいません。結婚を考えています。まずは、俺の彼女になってください。」
「・・・。」
「・・・。」
5分程の沈黙が生まれる。
お互いにかける言葉を探した。
「・・・よろしくお願いします。」
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ただ、確かなことがあるとすれば。
彼が言った"守りたい"という言葉はあながち嘘じゃなかった。そして、あの時彼の言葉を信じた私も何一つ変わっていない。
守りたい、と思ってくれる人のそばにいられることは、とても心強い。何があっても帰る場所がある。それだけで人は、ほんの少しずつでも強くなれるのかもしれない。
「あなたがいるだけで強くなれる」
まあありふれた言葉だけど、今度はあなたに伝えなくちゃね。
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