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【小説】 白(シロ) もうひとつの世界  第18話

第18話

彼女はなんとなく見覚えがあった。どこで見たのか思い出せない。
「こんにちは」
僕がそう言ったかと思うと、
「こんにちは。あの、お洋服屋さんの! 私、かなり前だけどあなたに一度お洋服を作って貰った事があるわ。リリーが言っていたのって、彼だったのね」
ああ、そういう事か。僕は人の顔や名前を覚えるのが苦手だから、お客さんだった事に気づかなかった。
お客さんなら、見たことあると思うはずだ。
「アンナ、お店に来たことあったのね!」
「ええ。まあ、立ったままも何だから、さあ、こちらへどうぞ。え〜と……」
「ジャンよ」
リリーが紹介した。
「ジャン、私は、アンナって呼んでもらえたら嬉しいわ」
「よろしく。アンナ」
僕はコーヒーを注文して、彼女のオススメのフルーツサンドを注文した。アンナが奥に戻って行ったのを確認してリリーが僕に言った。
「アンナ、綺麗でしょ」
「ああ、すごく整った顔立ちをしているね。小顔でスラリとしていて」
「自慢の友達なの。綺麗なのは見た目だけじゃないわ。心も綺麗なの」
「そうなんだ。良い人そうだね」
そう言われて、アンナが戻って行った方を見た。すると、またも見覚えのある人物がこちらを見ていた。
ウィリアムだ。僕は、リリーに言った。
「ウィリアムじゃないか。ここは彼のお店か。君は知っていたの?」
「本当だ! 知らなかったわ。私、お店の中に入ったのは初めてだから。ウィリアムと一緒に働いていたのね。私がアンナに会う時は、いつもアンナのお家だから。この間初めてお店の外まで一緒に来て、働いている場所教えてもらったの」
そう話していると、ニコニコしながら僕らに近付いて来たウィリアムが言った。
「どうも。来てくれたんだね。リリーも一緒に。嬉しいね」
「ウィリアムにも会えるなんて嬉しい! アンナと一緒に働いていたのね!」
「ああ。アンナとリリーが知り合いだったとは知らなかったよ。まあ、ゆっくりして行ってくれ」
そう言うと、ウィリアムは僕にも微笑みかけて仕事に戻った。

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