GUILTY&FAIRLY 『紅(あか) 別の世界とその続き』著 渡邊 薫
第十一話 ジャンの選択
僕は、ある時リリーに聞いてみた。
「ねえ、リリー。一緒にあの禁忌の扉、通ってみない? 毎日同じ日常にリリーも飽き飽きしてきたんじゃない?」
すると、リリーは凛とした表情で僕に言った。
「私は行けないわ。私にはアンナに託された役割があるから。最後までやりきるわ。ジャンが行きたいなら、……寂しくなるけれど、私は止めない」
——彼女には、僕の表情はどう映っているのだろう。
彼女は、弱くも、儚くもなかった。
門番という重みを背負う覚悟さえあった。
彼女を支えているつもりで、寄りかかっていたのは僕だ。
ウィリアムに呼び出されて帰ってきたリリーが言った。
「ウィリアム来るって」
僕は、返事をしなかった。
それから僕は毎日、人面魚の数を数えながら過ごした。
ウィリアムとの約束の日がやってきて、リリーがまた呼び出された。
僕は、気付くと禁忌の扉の前にいた。
禁忌の扉を前に、これまでにない興奮と恐怖と好奇心、喜びを感じた。
沢山の感情が湧き上がり、僕の中で駆け巡った。
「リリー、君が幸せで良かった。今度は一緒に新しい世界を見ることができた」
禁忌の扉を通ると僕の体はみるみると変わった。
扉の奥の岩陰で待ち構えていたのか、目の前に現れた鋭い目つきの彼は、僕をたちまち喰いちぎった。
ボロボロの体、痛くて涙が流れた、苦しくて叫びたくなった。
久しぶりに感じた、苦しくて痛いという感情に、感動した。
僕は泣きながら笑った。
辺り一面は、紅く染まっていた。
——やっと、この奇妙な世界から抜け出せる。
ああ、幸せだ。
end
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『 白 もう一つの世界 』
「ジャン、これからよろしくね!」『GUILTY & FAIRLY: 罪と妖精の物語 color』(渡邊 薫 著)
全てはある妖精に出会ったことから始まった。
これは、はたして単なる冒険の物語だろうか。
異世界への扉。パラレルワールドに飛び込むことが出来たなら、どうなるのだろう。
自分自身はどう感じ、どう行動していくのだろう。
あるはずがない。
凝り固まった頭では、決して覗くことのできない世界。 https://a.co/9on8mQd
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