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『黒猫がたり - 夢路のゆめ 』【朗読フリー台本】約5分

(朗読台本、約5分) 『黒猫がたり』のバリエーションです
元本:  https://note.com/kaoruokumura/n/n778a7c66518a

2024年黒猫の日・朗読企画のために、書き下ろしましたhttps://note.com/kaoruokumura/n/nd940ea3fc1f3


黒猫がたり - 夢路のゆめ

原作&アレンジ: ≪かおるん≫こと奥村薫

テキスト版

秋も深まり、ひんやりとした空気が心地よいある日、私はいつものように窓辺で身づくろいをしていた。陽の光が暖かく、木々がざわめく、風の音も心地よい。ふと、知らぬ人の気配を感じて、玄関を眺めると、呼び鈴が鳴った。

主人がドアを開ける音に続いて、ひとりの客人が入ってくる。軽やかな足取りで、紙の匂いを纏っている。私はすっと身体を伸ばして、窓辺から飛び降りた。近づいて、その人のハイヒールの匂いを確かめる。インクと珈琲の香り―編集者だろうか。

確認を終えて、また窓辺の特等席へ戻る。人間たちの会話に、片耳を傾けながら。

奇妙な縁で、この家に住むことになって数週間。作家の黒川という人間が、私を「夢路」と名付けた。

彼らは私のことを話している。
「『夢路(ゆめじ)』、夢に、路と書く」
「夢路……素敵な名前ですね。」
「そうだな、今、彼女の短編を書いているんだが…。」
編集者は興味津々にうなずいて、こちらを見詰める…一瞬彼女と目が合ったが、私にはこのまどろみのほうが、重要である。

「不思議なことに、夢の中に出てくるのだよ。だから夢路と…」
黒川は語りつづける。
「夢路は、夢の中で色々な光景を見せてくれる。でも、その意味については何も語らないのだよ」
「なるほどですね…、猫に導かれるお話ですか」

確かに私は彼の夢に現れる。でも、それは彼が思うほど神秘的なことではない。ただ、猫には人には見えない風景が見えるだけ。

黒川は机に向かい、原稿をいとおしそうにめくる。そしてその短編について語り始めた。編集者が熱心に耳を傾けている。

人とは面白いものを想像するものだ。私は依然として陽だまりの中で、まどろんでいた。

ふと、人間たちの目が、私に向けられた。
「夢路は今、まだ見ぬ物語の片鱗(へんりん)を見ているのかもしれないね。」
私は薄目を開けてみる。

「では、その物語を…」と彼女が言葉を続けようとしたその時、私の尻尾が、思わずふわりと動いた。彼の膝の上が、今日は特別に居心地良さそうだった。近づいて行って、軽やかに跳躍し、黒川の膝に収まる。彼の手が優しく背中を撫でる。

「夢路と共に、僕は新たな物語を紡ぐ。彼女が見せてくれた夢の中の路を辿っていこうと思う。」

窓の外では秋風のなか、黄金色の落ち葉が舞い、輝くポプラの葉が揺れるたびに光の波紋を作り出していた。私は静かに喉を鳴らし、目を閉じる。

ここは居心地がよい。私は、ただここで、穏やかな時間を過ごしているだけ。でも、黒川の紡ぐ物語の中で、私は別の世界を旅しているのかもしれない。

まあ、それもまた素敵な夢だ。
(終)

音声版

Stand.fm https://stand.fm/episodes/6719cc1eff3c2a25f385913b

コンテンツについて

もしかして、これらを「朗読してみたい!」「使いたい!」と思う方が居られましたら、是非ご利用ください。そのさいには以下の「ご利用について」をご一読ください。

https://note.com/kaoruokumura/n/n1bc1df78d08a

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