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おいしさのひとふでがき

2年前に20年間住んだ自宅をリノベーションしました。新しくなった家のミングル(※)で料理を始めたとき、動き方を考えるとこんなに楽に料理ができるんだと思いました。キッチンの「動線」の話をします。

私たち家族が住んでいたのはよくある分譲の3LDKのマンションで、ダイニングとキッチンが分かれていました。キッチンは流しと作業台とコンロが横一列。食器棚はキッチンに入らず、ダイニングにありました。料理になると、ダイニングとキッチンの間を行ったり来たり行ったり来たり行ったり来たり。

だから、野菜を洗って切ってコンロでスープにするまで全く同じ場所から動かないで済み、すぐ後ろに食器棚があるミングルで料理をしたとき、その快適さに驚きました。洗う、切る、火にかけるが同じ場所から動かずにできます。食器を取るのもふりむくだけ。
これまではキッチンが横長だったので私が動くたびに左右に動いていたのですが、ミングルでは同じ場所に立って、右に向けば流し、正面で作業、火を使うときは少し手を伸ばすだけ。切った野菜をまな板のすぐ前にある鍋にそのまま入れればいいのです。

その家によってキッチンの形というのは決まっていて、自分の力ではどうしようもない面があります。実際私がそうでした。でも、毎日使う場所だからこそちりも積もれば山となる、ほんのちょっとの動線で大きく変わるんだということを知っているといないでは、大きな違いがあると思いました。

スペースの関係上、ミングルから手を伸ばせる場所に置けるものはわずかです。だからキッチンの小道具は使う頻度によって選び抜いた道具だけを置くようにしました。へら、菜箸、おたま、はさみなど、とにかくしょっちゅう使うものは手も足も動かさずにとれる場所にあったほうがいい。逆に1週間に一度しか使わないトングなんかは、少し取りづらい場所でもいいと思ったのです。

足だけじゃなく、手にも動線があります。よく使う調味料と油は扉の中にはしまわない。そういえば、料理家仲間である自炊料理家の山口祐加さんが、塩の容器は片手でふたが開けられてすぐ塩がつまめるように、ふたがパチンとしまらない、ツボみたいな容器を使っていると言っていて、なるほどと思いました。調味料入れひとつ変えるだけでもわたしたちの動きは変わり、楽になるように思います。

キッチンは家の中で人が最も働く場所ですが、考えるときはずぼら精神を思いっきり発揮していったほうが、より合理的でいい結果が生まれるんじゃないでしょうか。理想の動線はひとふでがきです。動線がシンプルであるほど、おいしさに直線距離で届くはずだから。

【動線すくなめ、きのこのチャーハン】
材料(2人分):ごはん2膳、しめじ1/3パック、
市販のチャーシュー30g、青ネギ3~4本、酒、塩、胡椒、醤油、サラダ油
1 きのこと青ネギは細かく刻む。チャーシューも小さめに刻む。
2 フライパンにサラダ油大さじ1を入れ、しめじを炒める。しんなりしたらチャーシュー、あたたかいごはんも加えてよく炒める。酒小さじ1をふってさらに炒め、塩、胡椒をパラパラふって薄めに味をつける。
3 青ネギを加えて混ぜ、鍋肌に醤油をたらして全体を混ぜてできあがり。

※ミングルは2019年に私が作った、小さなダイニングテーブルに、流し、IHコンロ、引き出しなどのキッチン機能と、食洗器のついたごはん装置です。詳しくはこちらのnoteでどうぞ。



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有賀 薫
読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。