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私の読書●小説家志望の読書日記③芥川龍之介「文芸鑑賞」
芥川龍之介の「文芸鑑賞」なるものを読んでたら、ごく素直な形で私に言われているような文章が……。
面白かったので引用しておきます。
「素直に作品に面すると言うのはその作品を前にした心全体の保ちかたであります。が、心の動かしかたから言えば、今度は出来るだけ丹念に目を配ってゆかなければなりません。もし小説だったとすれば、筋の発展のしかたとか人物の描写のしかたとかは勿論、一行の文字の使いかたにも注意していかなければなりません。これは創作に志す青年諸君には殊に必要かと思います。古来の名作と言われる作品を細心に読んで御覧なさい。一篇の感銘を醸し出す源は到る所に潜んでいます。……」
そして、トルストイの『戦争と平和』を例に引きながら、「こういう細部の美しさをも鑑賞することが出来なければ、あの手堅い壮大の感銘は到底はっきりとは捉えられません。只何か漠然とした感銘を受けるのに了るだけであります。この丹念に目を配ることは一篇の大局を忘れない以上、微細に亘れば亘るほどよろしい」(ちくま文庫・芥川龍之介全集8・498-499ページ)
とても耳が痛いのと同時に、小説の鍛錬というのは、結局はこういう作業に尽きるのではないかとも思わされました。
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