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私の読書●小説家志望の読書日記⑦伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』
プロローグが伊藤氏の絶筆で、あとを円城氏が書き継いで完成させたという作品。
結論。あえて先を書く必要などなかったのではないか。売れることを見越した出版界の思惑の産物かと思ってしまう。文体のみならず、感性も思索、あるいは思想もまったく異なるものになってしまった。登場人物の造形もあやふやで個性がない。エピローグだけでも十分に期待させたそれがまったくない。毒を吐くなら「エピローグ」を「屍者」化してしまった作品だ。やはり、今やかなわぬこととはいえ伊藤氏自身の作品を読みたかったと思う。
未完の大作といえば、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』があるが、しかし第一部は完結しており、テーマの問いかけはすでに十分になされている。多分、自らの発した問いかけへの回答は、ドストエフスキー自身にもできなかったのではないかとさえ、思われる。第二部を読みたかったという気もするが、でもあれだけでも十分に我々にインスピレーションを残してくれている。
ちなみに、『屍者の帝国』には、主人公のアレクセイ・カラマーゾフをはじめ幾人かの『カラマーゾフの兄弟』の登場人物があらわれ、大いに期待したのだが、まったく面白くはなかった。さらに『風と共に去りぬ』のレット・バトラーが登場するあたり、著者は「遊び」のつもりかもしれないが、悪い冗談にしか思えなかった。
私自身は『風と共に去りぬ』も好きですけどね。でも、同居させる作品ではないでしょ?
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