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私の読書●小説家志望の読書日記⑤柳美里『JR上野駅公園口』

 胸が痛くなるけれど、読むべき本だ。

 光には影がある。月並みな言葉。でもそう思わずにいられない。

 1933年、天皇(当時)と同じ日に生まれた福島県相馬郡(現・南相馬市)出身の男が主人公。今は上野駅公園口でホームレスをしている。そんな男の一生の物語。

 昭和30年代の頃を私のような世代のものは、直接にではなく間接に(親を通じて)《知っている》ところがある。どこか地続きなのだ。
 あまり見ないように心の奥底に押し隠している悲しさとやるせなさ。

 悲しさ・哀しさ・哀れさ・憐れさ……。

 2014年3月単行本初版。

 主人公は東京オリンピックの土方工事のために東京に出稼ぎにでる。

 今、東京オリンピックは延期され開催否定論が叫ばれる中での2021年7月。

 昨年だったか、国立西洋美術館の展覧会を見るために上野駅公園口を出てとても驚いた。以前のごちゃついた感じは全くなく、上野公園内の東京文化会館(音楽ホール)と国立西洋美術館の間を通る道のすぐ真ん前に出るのだ。
 いつの間に改装されたのか、オリンピックのため? と思った。今回調べてみると、2020年の春、改装された公園口が使用されはじめたということだった。
 以前の公園口よりやや向かって左に移動している。

 いろいろな感情が湧きおこる小説だった。近いうちに稿を改めて考察してみたい。


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仁矢田美弥|つなぐ、結ぶ、創る ミモザとビオラ
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