「タツノオトシゴ」津山民藝社の竹細工
いつの頃からか、旅や出張に出ると、訪れた地で民芸品を何かひとつ自分へのお土産として買って帰るようになった。
これは母の影響だと思う。母はいつも私にそうしてくれていた。そのお土産は子供の私には渋く感じるものもたくさんあって、その頃は正直ちょっとつまらないなと思っていた。今になって、選んだ時の母の気持ちも分かるようになり、なんて素敵なお土産を選んでくれたんだろうと心から感謝している。
写真の竹細工は、岡山県津山市にある「津山民藝社」で求めたもの。去年の秋、アメリカ留学時代の親友からの依頼で津山へ撮影に赴いた。次の年の干支が辰なのにちなんで、写真のタツノオトシゴをいただいて帰った。
帰りの便まで時間があったので、レンタサイクルして城下町の名所を色々見物した際に、地図に載っていた気になる場所の一つがここだった。(もう一つの気になる場所はB’z稲葉さんのご実家稲葉化粧品さんでもちろん前まで伺いました。)
民芸を民藝と書いているあたり、ホンモノな気がすると何かピンときた。
店構えが素朴で素晴らしくてテンションが上がった。が、スマホでは地図情報しか見ずに着いてしまったので、直前になりお店なのかな…?と不安になりドキドキして扉を開けると、同世代くらいの女性が現れて接客して下さった。
挨拶した後に私が「これは地元の方がお作りになってるのですか?」と尋ねると、その女性が「お父さーーん!」と呼びに裏へ行ってしまった。暫くして「私が作ってますよ」と柔らかい声のおじさんが出てきてくださった。
わぁ、ご本人直々にご説明をしてくださるなんて…!何の予備知識も無し来たことを伝えたら、昔竹細工が盛んだったことや、おじさんは2代目で、玩具作りを得意とし、牛の置物が有名なことなど教えて下さった。(牛の名前を失念したので後ほど調べると「作州牛」だった。)
お話しの途中、知ったお名前、フィリップ・ワイズベッカーさんが話題に出てきてテンションがまた一つ上がった。彼が尋ねてきて、龍の置物の絵を描いたそうだ。その龍の置物は、まるで「アニメ日本昔ばなし」のオープニングが立体になったような形だった。ワイズベッカーさんの龍の置物の絵が世に出てから、その竹細工も全国的に有名になったそうだ。さすがの影響力。こんな風に外国の方の目を通して、日本の小さな工房の手仕事が日本人に再認知されるのは素晴らしい。(後に調べると中川政七商店さんの取材だったと思われる。)
「来年は辰年だからね」と、おじさん。年末までにたくさん龍を作ると仰っていた。そういえば辰年か〜、と、すっかり抜けていた私は、それまで作州牛の置物を見ていた目を龍の置物の方へ移した。
最初に目に入ったのが、写真のタツノオトシゴ。ワイズベッカーさんのお話を聞いたから、日本昔ばなし風の黒い龍も気になってしまったけど、初志貫徹することにした。タツノオトシゴのかわいい目と目が合ってしまい、離せなくなったからだった。(でも今になって、黒い龍も連れて帰れば良かったなぁ…と。友人に頼んでみよう)
輪切りにした竹の組み合わせで、タツノオトシゴになってるのがオシャレ。輪切の断面の柄が鱗のようにも見えるし。
軽く頭をトンとすると、フルフル小さく揺れるのもかわいい。やり過ぎると壊れそうなので注意。ヒゲや鱗?の色は、白、金、銀あって、私は金の子にした。
商品を入れてくれたビニール袋がまた素晴らしいの!お店周辺の地図になっている!手書きの地図にコメントが入ってるのが最高すぎる。
こういうの、捨てられなくてつい取っておいてしまうタイプなので困る…。幸せな悩みなんだけど。ということで、いつ捨てることになってもいいように写真に撮って残しておく。
おじさんのあたたかい空気感と、竹細工の可愛らしさがリンクしていた。愛情込めて作っていらっしゃるんだろうな。玩具がみんな凛としてキラキラしていた。
archival post from instagram @kaorumemo, JUL/1/2024
https://www.instagram.com/p/C82KK-9PYwt/?img_index=1