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老いても忘れられない母のひと言はありますか?(小原信治)
「あんただけは何を考えているのかわからない」
「あんただけは何を考えているのかわからない」
『老いても忘れられない母のひと言はありますか?』という藤村くんの問い掛けに対して真っ先に浮かんだのがこのひと言だった。
母にそう言われたとき、ぼくは17歳だった。当時は「あ、そう」くらいにしか思っていなかったが、時間が経つにつれて雨水を含んでいく土嚢みたいに重さを増していった。だから今でも人生の傷跡のひとつとして胸に刻まれているのだろう。言われたときは軽く肩を叩かれたくらいにしか感じていなかったけれど、実際にはナイフで腸を抉られたような血が流れていたのではないだろうか。
「産むんじゃなかった」
血が流れる母の言葉といえば、やはり最強なのは「産むんじゃなかった」だと思う。「それを言っちゃぁ、おしまいよ」と寅さんも嘆くように母と子の関係性をひと言で破壊する。母親にこの台詞を言われた子どもは自分の存在を全否定されたも同然な気持ちになる。また「殺してやる」と同義語とも言えるこの台詞を口にできるのは世界中で生みの母だけというのも重い。しかも産んだ母親自身の後悔のみならず、世間に対する罪悪感も伴っていた場合、その言葉は裁判長の「死刑判決」よりも重いものになる。
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