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死ぬまで働きたいですか、働きたくないですか(小原信治)

夕日と夕陽の違い

 毎日のように、海に沈んでいく夕陽を見ている。
海岸に突き出た立石の巨岩から漁港まで海岸線に沿って1㎞ほど弓形に続く秋谷海岸。僕はその浜辺に腰掛けている。海は凪いでいる。水平線に連なる伊豆半島と富士山。その向こうに夕日が音もなく吸い込まれていく。

 ところで、夕日と夕陽の違いってわかりますか? 夕日は太陽そのものを指し、夕陽は太陽が染める空や海、あるいは町まで含んだ光景を言うそうです。カメラワークで言えば寄り画が「夕日」で引き画が「夕陽」ってことですね。

 なんて雑学を挟んで、再び夕陽の話。その光彩には春夏秋冬の異なりがあって、まるで一枚の絵画のような、無声映画のエピローグのような情感がある。DNAに刻まれた太古の記憶とともに原始的な感情が込み上げてくる。寂寞と旅情。夢幻泡影。ノスタルジア———。そんな瞬間を心のフィルムに焼き付けているとき、オレンジ色に染まる砂浜に潰れたペットボトルが映り込んでいたらどうでしょう。興醒めですよね? 画として美しくない。監督がカットをかけて「わらえよそれ!」と怒鳴るところです。だけど、夕日は沈むのを待ってくれない。撮影は明日以降にリスケとなります。

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