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草の根広告社/父子手帖(ニコニコチャンネル復旧までの臨時更新)

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「パパ、これやって」

 床で転がっていただけの娘が初めて寝返りを打って7年。身の回りの大抵のことはひとりでできるようになったと思う。あれこれ世話を焼いていた日々を思うと、少しだけ淋しくもあった。

 娘と旅をしていたときのことだ。
「パパ、これやって」と渡されたのがペットボトルだった。普段あまり飲む機会がないので知らなかった。7歳の娘はどうやらペットボトルのキャップを自分ひとりでは開けられないようなのだ。

「どれどれ」と麦茶のペットボトルを左手で受け取り、右手でキャップを掴んで回す。握り締める握力が必要だ。と同時に回す時の一瞬に込める瞬発力が必要だ。

「パパの指を力いっぱい握ってみて」と人差し指を差し出す。娘が小さな右手で握る。うん、確かにペットボトルを開栓するには少々力が足りないかもしれない。

「学校の掃除の時にぞうきんって絞ったりする?」
「うん、絞ってる」
 彼女の握力では水滴が落ちないくらい固く絞るのは無理だろう。びしょびしょのぞうきんで拭き掃除をしている娘の姿が浮かんだ。
「ぞうきんをしっかり絞れるようになったらペットボトルの蓋も自分で開けられるようになると思うよ」

「わかった」と娘からいつものような言葉が返ってくる。素直だなといつも思う。いつもこうやってぼくや妻の言葉を吸収している。毎日本をたくさん読んで世界を吸収し続けている。いつか彼女が吸収したたくさんのものを力いっぱい絞り出して自分自身を表現する日のことを想像した。

 その頃にはぼくが娘にペットボトルのキャップを開けて貰っているのかもしれない。

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