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草の根広告社/父子手帖(ニコニコチャンネル復旧までの臨時更新)

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「夏の午後」

 ランドセルを背負った生徒達が慌ただしく廊下に出ていく。下校を促す放送委員の声が響き渡る教室に担任の先生と二人きりで向き合って坐っていた。夏の陽射しに照らされた窓辺のカーテンが潮風に揺れる。夢か現か。自分がドラマの登場人物になったような気分だった。

 娘の小学校の個人面談。父親として初めての経験だった。正直こんなに緊張するものだと思わなかった。

 自分が知らない娘の学校での様子をエピソードとともに聞かされるたびに何度も目頭が熱くなる。「まだ低学年なのでみんなそういうところがあるにはあるんですけど」と先生が慎重な言葉選びで懸念していることを聞かせてくれた時には先々のことが心配になったりする。正味二十分。ただ話を聞いているだけど、めまぐるしく感情を動かされている自分がいた。

 最後に親として心配していたことを伝える。心配性が過ぎるがゆえの、重箱の隅をつつくような問題だと自分でも思う。たとえるなら、大海原に赤いインクをひと瓶溢してしまったぐらいの。でも、学校というところはそんな重箱の隅をつつくようなことで揶揄われたり、いじめられたりすることがままある。だから伝えた。知っておいて欲しいという思いで。すると先生は「私も気づいています」と言った。でも、そして「大丈夫ですよ」と言ってくれた。ちゃんと見てくれているんだなと、安心した。

「娘が先生のことを好きだと言っていました」と帰り際に伝えた。
「100点満点で99点だそうです」
「ちなみにマイナス1点はなんですか?」
「忘れっぽいところだそうです」
 先生は「そうなんですよ」と笑っていた。

 階段を降りて昇降口に出る。校庭で友達と遊んでいる娘の姿が見える。親の知らないところで少しずつ成長しているんだな。自分の世界を広げているんだなとうれしくなる。他にもいろんな話をしたけれど、つまるところ娘に対しては「生まれてきてくれてありがとう」という感謝しかないんだと再確認した。

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