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【新刊情報】ストロング・スタイル(2)
■内容紹介
新刊「ストロング・スタイル」が、いよいよ発売になります!早いところですと、本日9日から取り扱っていただける書店さんもあるかと。
いやあ、やっと刊行だなあ。苦労が報われるなあ。皆さんのお手元に早く届いたらいいなあ!
なんて思ってたら、発売日に台風(13号)直撃です。しょっぱなから、文字通り嵐の門出となりました。おい、ちょっと勘弁してはくれまいか。ただでさえ初週売り上げとか厳しいのに。
プロレスラーの「どん底からの挑戦」を描いた青春人情小説。
「強さとは何か」父母や友人らの言葉を得て、二人のレスラーが、たどりついた「答え」とは。
『2011年の棚橋弘至と中邑真輔』の著者
柳澤 健 氏、絶賛の人間ドラマ!
「憎しみも弱さも欲望も嫉妬も、そして虚構も、すべてをさらけ出してなお、プロレスは強い。だからこそ、プロレス小説を書くのは勇気が必要なのだ。この作者は果敢に挑み、白熱した試合と想像を超えるフィニッシュを作りあげた」(柳澤 氏)
父の影響でプロレスファンになった御子柴大河は、少年の頃からの夢を叶え、日本最大のプロレス団体・JPFのトップレスラーへの道を駆け上がる。しかし、プロレス人気は凋落の一途をたどっていて……。
一方、大河の同級生、小林虎太郎は、抜群の運動神経を持ちながら、体が小さいことを理由にイジメを受け、心に傷を抱えていた。その後、「イジメ撲滅」を標榜するインディープロレス団体に入団するが、ある理由から悪役レスラーに転向することに。
天性のスターと、不遇の天才。
境遇は違えども、「強さとは何か」を求め続ける二人。
団体経営に大きな影響力を持つマッチメイカーたちの思惑が交差する中、大河と虎太郎は、マットの上で、答えを見つけることができるのか――。
コメントは、ノンフィクションライターの柳澤健さんに頂きました。僕が書きたかったこと、言いたかったことが間違いなく伝わった!と思えるコメントで、なんかもう感動しちゃって。
■題材は「プロレス」
まあ、タイトルからしてわかる方にはお察し、という感じですが、本作の題材は「プロレス」。己の肉体を鍛え上げた男たち(女子も)が、リングの上でくんずほぐれつ繰り広げるアレであります。
ここ数年、プロレスというのはエンタメ業界の中でも一大ムーヴメントになっておりまして、かつて「プロレス暗黒期」とさえ言われた低迷期を脱し、新しい時代へと移行しようとしております。僕も、プロレスを観始めて早26、7年になりますけれども、今のプロレス界は面白いよなあとつくづく思います。
これまでにも、プロレスをモデルとした小説・漫画は死ぬほどたくさん刊行されておりますが、多くは「アントニオ猪木」「ジャイアント馬場」という二大プロレスラーを中心とした昭和プロレスの影響を受けたものであったように思います。なので、今回の作品ではあえて昭和臭を低減して、平成以降のプロレスをモデルにすることにしました。
■プロレスを伝えるのは難しい①
プロレス小説を書くにあたって、作り手がまずぶつかるのは「虚実の壁」じゃないでしょうか。これはもう、ぶっちゃけて言ってしまいますけど、プロレスというものには、台本、取り決め、といった裏があるわけです。そこに触れるのか、触れないのか、が、まず最初の分かれ道になります。
プロレスの「虚構」の部分のみにスポットを当てて、プロレスはすべて真剣勝負、というスタンスで書かれた作品は数多くあります。逆に、「真実」の部分にスポットを当てて、プロレスの裏を描いた作品もあります。今回、僕が「プロレス」を書くにあたって編集さんと前提においたのは、「プロレスを通して人間を描く」ということでした。
プロレスラーを人間として描く時、どうしてもリング上の「レスラーとしての一面」と、リングを降りた後の「人間としての一面」を描かなければいけませんでした。それはつまり、表と裏、プロレスの虚実をすべて書かなければならないということです。
僕なんかは、たとえプロレスの裏側を見たとしても、それはそれで面白くプロレスというものをとらえられるのですが、全員が全員そういうわけではないと思います。プロレスの内幕を知りつつ試合を楽しむファンを「スマート(smart)」、プロレスはすべて真実だと思って楽しむファンを「マーク(mark)」と呼ぶこともありますが、どちらもプロレスの楽しみ方であって、スマートでなければいけない、ということはない。だとすると、裏側まで書いてしまうことで、マークの人の楽しみを奪ってしまうのでは、、、という懸念があったのです。
また、プロレスラー自身は、どんなに「そんなわけねえだろ」という設定でも、それが真実であるという前提のもとにリングに立ちます。プロレスラーだって、ファンの人がなにも知らないと思っているわけはないのですが、それでも「真実だ」と言い切ることで、プロレスというものにひとつの真実性を持たせています。虚実すべてを書ききるというのは、そういったレスラーの努力を無に帰するものではないか?ということも心配でした。
オール讀物で本作の連載を開始するにあたって、現役のレスラーさんとか、レフェリーさんなど、いろいろな方々から聞いた話を元に自分なりのプロレス世界を構築することにしました。すべてが真実なわけではなく、僕の創作も多く含んでいるのが、今回の「ストロング・スタイル」の世界です。どこまでが本当なの?ということには、あえてお答えしないようにしています。それがプロレスというものなので。
でも、虚も実も知った先に見えてくるものは、やっぱりレスラーってすごいな、という思いです。正直、ここまで書くという決断をしたことがよかったのかどうか未だに迷っているのですが、最終的には「プロレスって面白いんだ」という思いが読者さまの胸に残るようであればいいなと思っています。
オールの掲載号が発売された後、プロレス好きの作家さんから、面白かったよ、と言って貰えたときは、ほんとにほっとしましたね、、、。これ書いちゃまずいでしょ、って言われてたら、きっと刊行まで辿り着けなかったのではないかなと思います。
■プロレスを伝えることは難しい②
本作に登場するプロレスラーの得意技・必殺技は、かなり地味な技が多いと思います。主人公・御子柴の必殺技はラリアット、バックドロップ、そして変型のフライングボディアタック。わりとこうオールドスクールといいますか、古いプロレス技を主に使っています。
というのも、プロレス技って、文章で伝えるのがめっちゃ難しいんですよね、、、、。
プロレスファンであれば、「相手のバックを取ってハーフネルソンの体勢」と言えば、その前後の動きまで流れるようにイメージすることができると思いますし、なんなら次に来る技もある程度想像できるのですが、プロレスに関する知識がゼロの方が読んだら、なんのこっちゃらさっぱりわからない。
某レスラーの必殺技を言葉で説明すると「ファイヤーマンズキャリーからの変型バックブリーカー」となりますが、小説で語ろうとすると、まずファイヤーマンズキャリーの説明をしなければなりませんし、そもそも変型でないバックブリーカーはどういうものなのかも説明しないといけない。技術的には説明もできるのですけど、テンポが悪くなるし、本筋と関係ないところで字数を食うのもいかがなものかという感じ。最近の複雑な技を小説中に登場させるのは至難の業であります。
なので、登場する技はどうしても、プロレスを知らない人でもイメージしやすい単純な技、もしくは名前くらいは聞いたことのある技にしなければなりませんでした。
いや、ほんとのことを言えば、登場人物たちにド派手な投げ技・飛び技をばんばん使ってほしかったのですが、そんなこんなな事情がありまして、現状に落ち着いております。プロレスファンの方ですと、その苦労の跡を理解していただけるかもしれませんね、、、、w
ということで、「ストロング・スタイル」は、プロレスの知識のない方にも読んでいただけるように考えて書いております。プロレスファンの方も、「プロレスとか全然わからないし」という方も、ぜひご一読いただければと思います。
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![行成薫(小説家)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58719595/profile_a83c7ab446752df7af0505f2f936c776.jpg?width=600&crop=1:1,smart)